
こんにちは、毎年かき氷を作って夏を凌いでいるCTOのNari (@tiwanari) です!
今年1月に不動産AI Labを立ち上げ、AI推進に没頭する日々を送っており、半年で大小問わず15以上のプロジェクトを回してきました。自分でも何をやっているか多すぎて追えなくなってしまった時期があるくらいお伝えしたい内容はたくさんあるのですが、今回はその中で「AI研究の学会発表活動」を取り上げてお話ししようと思います。
本記事では
- 事業会社が学会参加しているのはなんで?
- どうやったら論文発表活動を始められるの?
といった疑問にお答えします!
estieの学会発表の取り組み
上記の疑問に回答するために、まずはestieの学会発表への軌跡を簡単にご紹介します。
estieが最初に技術系の論文で学会発表をしたのは2024年の言語処理学会年次大会でした。当時の参加レポートを読むと、今年の新卒として入社してくれた @shinichi1729 が多くの聴衆に囲まれながらポスター発表をしている懐かしい写真を発見できます(X投稿)。
この時に発表したのは物件概要書からのデータ抽出・整備業務を生成AIを活用して行う手法の提案でした。

現在も不動産業界ではこのようなコンピュータにとって解釈が難しい情報を構造化してデータ化することを多くの人手によって賄っており、情報を活用する以前にデータ整備に骨を折る必要があります。
この課題に対して、当時インターン生であった @shinichi1729 や弊社データサイエンティストであるヤドン好きのJohnが「生成AIを使ってみたら楽になるかも」と自由研究を始めたのが発端でした。
そして、この2024年の言語処理学会年次大会を皮切りに、「J-REITのプレスリリースからの情報抽出」を題材にして情報抽出のハルシネーションを軽減する取り組みで今年の言語処理学会年次大会(NLP2025 参加レポート)に参加したり、今年の人工知能学会全国大会ではNLP2024の手法を発展させたものを発表したり(JSAI2025 論文ページ)と、継続的な学会発表につながっています。
また、不動産AI Labでは企業や大学との共同研究も開始しており、近いうちにまたいろいろとお披露目できると思います(お楽しみに!)。
事業会社が学会参加しているのはなんで?
さて、自由研究を始めたのは良いものの、なぜ学会に参加し始めたかについて説明していませんでした。
実を言うと、自由研究をやっていた二人も当初は論文にして投稿することは考えていなかったのですが、業務委託としてestieを手伝ってくれている NLPeanuts Inc. 叶内さん (@shin_kan0) に「今やっているもの、言語処理学会に出してみます?」と声をかけてもらい、二人とも「なんかすごそう」「やってみたい!」とトントン拍子で話が進みました(一応「論文を書くことにコストをかけて大丈夫か?」という話もあったのですが、「estie初の技術論文は意味がある」と推しました)。
estieは「魂ドリブン」というValueがあるのですが、まさに「やりたい」という魂のこもった取り組みだったことが最初の学会参加の理由です。その後もその思いが続き、継続して学会に出るようになっています。
ちなみに、学会に参加されたことがない方は知らないかもしれませんが、学会って結構楽しいんです。言語処理学会年次大会や人工知能学会全国大会はある種のお祭りで、その分野に興味がある人たちが集まって研究成果を発表します。
ある意味、コミケと一緒だと言えるでしょう。学会の会員登録を行えば誰でも参加でき、継続して参加していれば知り合いも増えますし、思いがけず懐かしい顔に出会うこともあります。特に最近はAI/LLMの流行でNLP2025もJSAI2025も凄まじい参加者数でした。

また、学会は様々な場所で行われるため、発表が終わったご褒美にご当地の美味しいものを食べられるなどの楽しみがあります(「あの場所にいきたい」を理由に学会を選ぶなんてことも学生時代にあったりなかったり)。

一度行ってみると最先端の研究に触れられるだけでなく、知り合いが増えたり、美味しいものが食べられたりと楽しいこともいっぱいあるのが学会発表というわけです。
どうやったら論文発表活動を始められるの?
ここまで読んで「自分も学会発表やりたい」と思われたでしょうか?
そう思われたあなたはぜひestieに入社を…という気持ちですが、前のめりな気持ちを抑えて我々がどのように準備して学会発表をしたか、自社で学会発表に取り組みたい方向けに簡単にご共有します。
一番最初に考えるのは時間の確保です。学会発表の準備にはやはり時間がかかります。叶内さんに言語処理学会への参加を誘ってもらったのが2023年11月末で、2024年1月12日の論文提出締め切りまでの1ヶ月半で本業をやりながらではありますが、実験や論文執筆に時間を割いてギリギリ間に合わせたといったところでした。また、我々の場合は、2023年11月末時点でPDFデータの構造化には自由研究として取り組んでいたため、0からのスタートではなかったことも補足しておきます。
ただ、時間の確保は重要なものの、論文執筆は腰が重くなりがちなので、まずは出したい学会を選び、締め切りドリブンで進めるのがなんだかんだおすすめです。自分の興味分野がどの学会に属しそうかは、いまならChatGPTがある程度教えてくれますし、テーマの壁打ちにも付き合ってくれるでしょう。
また最初の論文を書くのであれば、早めにやるべきことは一緒に論文を書き、レビューをしてくれる仲間探しです。論文投稿の前には、誰かに見てもらい客観的なフィードバックをもらうことが大事ですし、自分でテーマを決めて実験をして論文を書くというモチベーションを保つためにも、誰かを巻き込むのがおすすめです。
次は論文を書くステップです。「論文を書く」と言うと大仕事に思えますが、構成には一定の型があるので、先行研究を学ぶためにも投稿予定の学会の過去の論文集をチェックしてみてください。ここでもChatGPTが論文を読むのもかなり助けてくれますし、関連研究を探す時間も大きく短縮してくれます。
実際に書き始めると「これで良いのか?」と悩むこともあるとおもいますが、文量が少なくても早いうちに骨子となる内容を最初から最後まで書き切ってしまうと、論理が通らないところや考慮不足が見えてきます。加えて、論文も読み手が楽しめるものであることが大事です。例えば、どのような数値的な結果になったかだけでなく、どのような正答・誤答があったかの事例研究に力を入れてみると興味を持って見てくれる人が増えるでしょう。
これが大まかな論文執筆の道のりです。もっと詳しく知りたい?そういう方は、叶内さん (@shin_kan0) が論文執筆のサポートも受けていらっしゃるので連絡をとってみることをお勧めします。あるいはestieに入社を…とにもかくにも、まずは始めてみないとわからないのでやってみましょう!
最後に
AIを活用した自由研究に取り組みたい方、学会に参加して楽しみたい方、ぜひestieの不動産AI Labの話を聞きにきてください!論文や新しい取り組みについてお話しできます!
もっといえば、不動産AI Lab所属でなくても「やりたい」と思えば自由に学会発表に参加できる環境なので、「estieにどんなポジションがあるかわからない」という方もカジュアル面談しましょう!(まずは始めてみないとわからないのでやってみましょう!)