Corporate部門でのAI活用:「社内規程教えるくん」の話

はじめまして。estieの技術ブログに初参加します、Corporate本部 労務・総務ユニット マネージャーの長谷川です。

今回は、私たちのチームで実際に運用している社内向けChatbot「社内規程教えるくん」について、背景から開発プロセス、運用で工夫している点までを紹介します。

背景

estieは「産業の真価を、さらに拓く。」というPurposeのもと急成長しています。社員数や取引数・契約数など会社の活動量増加に伴い、バックオフィス業務が非連続的に増大し、問い合わせ対応などで大きな工数が発生していました。

そこで、労務・総務ユニットでは、作業の自動化・サービス向上のため、AI Chat Bot・RPAを導入しています。今回はAIブログWEEKということで、AIを活用したChatbot導入についてお話したいと思います。

Chatbot構想と狙い

日常的な「問い合わせ対応」にかかる工数を削減すると同時に、社内のルール確認を簡便にしてサービス品質を上げることが目的です。

当初は労務・総務全般をカバーするボットを検討しましたが、範囲とデータ整備の観点から段階的に進める判断をしました。まずは「社内規程に限定して正確に回答する」ことに集中しました。

コーポレートとエンジニアの近さ — 非エンジニアでもできた理由

本プロジェクトで特に効果的だったのは、コーポレート部門とCTOをはじめとするエンジニアリングチームが非常に近い距離感で協働できたことです。CTOの岩成がノーコードツールを紹介してくれたことに始まり、以下の点が非エンジニア主導での素早い立ち上げを可能にしました:

  • ノーコード/GUIでの設定:DifyのようにPDFやWordをそのまま取り込め、プロンプトや出力フォーマットをGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)で調整できるため、ノーコードでプロトタイプを組み立てられました。
  • 技術的サポートは短時間のレビュー中心:エンジニア(岩成・kenkoooo)にサポートをお願いしましたが、立ち上がり、Slack連携などの初期設計のガイドで、実装の大半は短いハンズオンやレビューで済みました。日常の細かい微調整は現場(労務・総務チーム)がGUI上で実行しています。
  • 迅速なフィードバックループ:コーポレート側が実際に問い合わせを投げ、エンジニアが必要に応じて迅速に改善を反映する体制を作れたため、試行錯誤が高速に回りました。
  • 現場の当事者性:非エンジニアが自分たちの業務に必要な箇所を直接データ化・検証できることで、要件定義の手戻りが減り、導入スピードと現場定着が高まりました。

結果として「エンジニアに全て頼らなくても現場で実装・運用が回る」構造になり、技術チームは安全性や拡張ポイントに集中できました。これにより、小さく早く作って改善するというリーンなアプローチが実践できました。

ツール選定とプロトタイプ作成

岩成に紹介されたノーコードAIツール「Dify」を使ってプロトタイプを構築しました。選定理由は大きく次の3点です。

  1. ノーコードで設定でき、非エンジニアでも扱いやすい点。
  2. PDFやWordをそのままデータソースとして取り込める点(社内規程の整備が容易)。
  3. 回答ロジックの微修正がGUIで簡単に行える点。

【Dify上でのワークフロー】

  • レゴブロックのように、フローをグラフィカルに繋ぎ合わせることができ、非エンジニアでも分かりやすいです。

【プロンプト】

プロトタイプは社内で確認を重ね、順次改善していきました。日本語のプロンプトで調整できるため、非エンジニアでも微修正できます。

-- どの資料・条文を参照して回答したか追記してください。
-- 最後に規程の格納先(https://XXX)のリンクも記載してください。

なお、Dify制作にあたり、参考になった本を紹介しておきます。

コーディング不要で毎日の仕事が5倍速くなる!Difyで作る生成AIアプリ完全入門 | 吉田真吾, 清水宏太 |本 | 通販 | Amazon

ハルシネーション(虚偽情報)への対策

AI利用で最も気を付けるべき課題は、モデルが外部知見や生成推測を混ぜてしまい、社内規程と異なる(=誤った)回答を出すことです。本プロジェクトでは、次の対策を組み合わせています。

1) 回答ソースを社内規程のみに限定する

ボットは社内規程ファイルを唯一のソースとして扱うよう指示プロンプトを設定しました。外部Web情報や一般的な知識で補完することを許さない設計にすることで、estieの規程と乖離した回答を避けます。

2) 出典・該当条文の明示表示

回答には必ず参照した規程名・条文・(可能なら)URLを付けて表示します。ユーザーが元の規程にすぐアクセスできるようにしており、回答の検証性を高めています。

3) 人間のチェック(Human-in-the-loop)とエスカレーション運用

AIが生成したすべての回答は長谷川(私)が目視で確認し、不足点があれば補足します。

運用面の質問(例:「経費精算システムの使い方は?」のような操作手順)は規程の範囲外と判断して回答しない設計にしており、その場合は私から担当チームにエスカレーションするようにしています。これにより「誤った手続き手順を案内してしまう」リスクを低減しています。

Slackでの展開とユーザー体験工夫

  • Slackから利用可能にしたことで、他人のやり取りを見て「自分も聞いてみよう」と気軽に使い始める効果がありました。
  • 回答を公開チャンネルで行うことでナレッジの可視化を促し、同じ質問の重複をさらに減らします。
  • ボット名・アイコンも工夫しました。親しみやすさを重視して「中学生の少年」をモチーフにしたアイコンと「社内規程教えるくん」という名前に。愛着を持って使ってもらえることを狙ったデザインです(親しみと「多少間違えることがあるかもしれない」という許容のメッセージ性も込めています)。

【ボットのアイコン】

実は私(長谷川)のSlackアイコン写真を元に、中学生時代の姿をChatGPTでイラスト作成しました笑

【Slackイメージ】

今後の展開

社内規程で得た知見を踏まえ、他のコーポレート領域にも同様のボットを展開しています。

実際に経理チームでは同じ仕組みで「ケリにゃん」(かわいい名前・・・!)を、8/22にリリースしました。

終わりに

AIは万能ではありませんが、正しい設計と運用ルールを組み合わせることで、バックオフィス業務の負荷低減と社内の利便性向上に大きく貢献できます。

estieの成長を支える一翼として、Corporate部門でも貪欲に改善を続けていきます。ご意見や質問があればぜひお寄せください。

また、バックオフィスメンバーの採用も順次行っておりますので、もし興味がありましたら、連絡いただけると幸いです。

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