
こんにちは。エンタープライズソリューション事業本部(以下、ESG)の齋藤です。
ESGでは、大手売買仲介・金融機関・総合不動産ディベロッパーなどのお客様に対し、estieがこれまで提供してきたSaaSプロダクトだけでは解決しきれない経営・事業課題の解決に向けて、個別企業向けのDXソリューションおよびコンサルティングサービスを提供しています。
本記事では、私がこれまでのキャリアを通じて感じてきた商業用不動産業界の構造的な課題と、その解決に向けたESGの取り組みをお伝えします。
【プロフィール】齋藤 文也(さいとう ふみや)
1987年東京都生まれ。総合不動産デベロッパー2社、デロイトトーマツコンサルティングを経て株式会社estieに入社。エンタープライズソリューション事業本部の事業責任者として、大手不動産事業者や金融機関等への各種DXソリューションの提供をリード。
なぜ本事業を立ち上げたのか ― 原体験としての現場経験
私はestieに入るまで、コンサルタントとして不動産会社の“経営課題”に向き合い、のちに不動産会社の現場の最前線で“現場の苦労”を体感してきました。立場は変われど、一貫して感じ続けてきたのは、この業界のDXは一筋縄ではいかないという現実です。
コンサルタント時代、私は大手不動産企業をコンサルタントとして支援する立場で、多くのDXニーズに触れてきました。 「物件データを統合し、経営判断やアセットマネジメントに活用したい」「マーケットデータをもとに投資シミュレーションを自動化したい」――そうしたニーズは各社に存在していましたが、その前提となる“現場のオペレーショナルデータ”が整っておらず、どこから手を付けてよいか分からない状況が続いていました。10年以上前の話ですが、今ようやく、不動産業界の各社がこの構造の改革に取り組み始めている状況です。
その後、コンサルタントから不動産会社に転職し、ホテルやオフィスの物件取得、空室営業などの現場に立ちました。そこで痛感したのは、情報の整理や分析以前に、「情報へのアクセス」そのものが大きな壁になっているということ。 不動産事業の要は価格判断であり、「その物件はいくらか?」を把握するために多くの情報を集め、つなぎ合わせる必要があります。私は担当者として現地に足を運び、競合や仲介エージェント、時には飲み友達にも声をかけて情報を集めましたが、時間の多くが「分析」よりも「収集」に割かれ、社内でも情報は人に依存していました。
他業界では、たとえば金融ならBloombergなど取引のベースとなるデータが存在する一方で、不動産にはそうした共通基盤がなく、情報が分断され、業務が属人的になっています。
経営と現場の両側からこの構造的な壁を感じた私は、既存のITソリューションでも、社内DX施策でも届かない“第三のアプローチ”として、業界を支える仕組みをつくりたいと思い2021年9月にestieに入社し、2024年4月にESGを立ち上げました。
なぜ今、本事業が必要なのか ― 商業用不動産業界の構造的な課題
商業用不動産業界は、産業規模こそ巨大ですが、他業界に比べて従事者が少ない資本集約型の業態です。
そのためDXによる効率化効果が限定的で、各社が投下できるIT投資も限られています。結果として、スクラッチ開発のような大規模投資は採算が取りにくく、DX化が進みにくい構造にあります。
私がコンサルタント時代に感じたのも、そのもどかしさでした。自動車や金融では大型DXプロジェクトが動く一方で、不動産業界では組成に至らない。それでも国内の不動産テック市場では、こうしたニーズを的確に捉えたソリューションがまだ少ないのが実情です。
米国ではCoStarやYardiといった業界・業務特化型ソリューションが業界標準として定着していますが、日本ではまだその基盤がなく、各社が限られたリソースで独自開発を重ねています。
「巨大な市場でありながら、仕組みが全体最適に至っていない」――。
私たちはこのギャップを受け止め、商業用不動産業界をリードする大手企業の皆さまと共に、この状況を変えていきたいと考えています。 「産業の真価を、さらに拓く。」ためにESGが挑むフィールドです。
どう取り組むのか ― 本事業のアプローチ
不動産業界のお客様が抱える課題は多様で、既存のSaaSをそのまま導入しても、本質的な解決にはつながらないことがあります。だからこそESGは、業務やシステム構成を深く理解し、基幹システムとの連携や新たな仕組みづくりまで踏み込む、テーラーメイドなアプローチを大切にしています。

たとえば、社内に分散していたデータを一元化し、情報登録や管理業務の90%以上を効率化した事例や、業務効率化にとどまらず収益向上につながるDX基盤を構築した事例など、支援の領域は多岐にわたります。
現場の改善にとどまらず、経営層の意思決定や中長期の事業戦略にまでデータ活用の視点を広げていく。
そのために、お客様の業務や現場の感覚をしっかりつかみ、課題の本質を共に見極めながら最適な形を設計する――。
こうした姿勢こそが、ESG立ち上げ当初から大切にしてきたものであり、唯一無二の「不動産DXパートナー」として伴走する私たちの強みです。
どこを目指すのか ― 企業経営を支えるデータインフラへ
ESGが目指すのは、「企業経営を支えるデータインフラ」の実現です。
その実現は一気に進むものではなく、現場での小さな改善の積み重ねから始まります。
たとえば、特定部門の業務(データ整備や、レポート資料作成自動化など)を効率化し、そこから部門・バリューチェーンを跨いで発展させ、最終的には全社員が日々活用いただける共通基盤へと広げていきたいと考えています。
共通基盤が整えば、現場のオペレーションから経営の意思決定まで、確かな情報に基づく判断が可能になります。 営業や管理といった部門の壁を越え、同じデータを見ながら議論できるようになれば、属人化を減らし生産性を高めるだけでなく、「早く・高く」取引が成立するなど、直接的な収益向上が可能になるはずであると考えています。

最後に
私たちESGは、新しい仲間を募集しています。
不動産DXは簡単な道ではありませんが、お客様とともにまだ存在しない仕組みをつくり、業界のあり方を変えていく挑戦には、大きな価値とやりがいがあります。一人ひとりの取り組みが、やがて産業全体を支える基盤になっていく手応えを得られる環境です。
役割の枠を越えて課題に向き合える方、最後までやり抜く意志を持つ方に、ぜひジョインしていただきたいと思っています。ここでは書ききれなかった話もたくさんあります。もし少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ気軽にお話しできたら嬉しいです。