Vertical SaaS だからこそ実現できるプロダクト開発の醍醐味

こんにちは。estie PMの冨田です。第5回 estie PM Blog Weekの4日目の記事をお届けします!

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皆さんは、PMのどこに一番面白さを感じますか?

プロダクトマネジメントトライアングル

僕は「顧客とがっぷり組み合う面白さ」と「製品に差別化要素を作り込む面白さ」にワクワクする派です。そして、この2つの醍醐味を最大限に味わえるのが、Vertical SaaSの世界なんです。

今回は、なぜVertical SaaSでのプロダクト開発がこんなにも面白いのか、estieでの体験談を交えながらお話ししたいと思います。

そもそもVertical SaaSの特徴とは?

特定業界に特化した深い専門性

Vertical SaaSの最大の特徴は、特定業界への徹底的な特化です。estieなら商業用不動産、ANDPADなら建設業界といった具合に、それぞれが「その道のプロ御用達」として存在しています。

汎用的なSaaSが「80%の要求を満たす」ことを目指すのに対し、Vertical SaaSは「業界特有の20%の要求を120%満たす」ことが勝負どころ。業界特有のワークフローや規制要件を熟知し、まさに「かゆいところに手が届く」機能性を提供できるのです。

高単価・少ボリュームのビジネスモデル

専門性への対価として、Vertical SaaSは高単価での販売が可能です。顧客数こそ限定的ですが、一社あたりの契約単価を高く設定でき、お客様と長期的に深い関係を築けます。

この「質重視」の特徴こそが、PMの仕事を格段に面白くしてくれるんです。

Vertical SaaSならではの顧客とがっぷり組み合う面白さとは?

特化だからこそ実現できる密接な顧客関係

Vertical SaaSでは、顧客との関係性が根本的に異なります。Horizontal SaaSのように数万社の顧客を抱えるのではなく、数百社から数千社の顧客と深い関係を築くことになります。

僕もあるお客様のオフィスで、実際の業務処理を観察させていただいたことがあります。PCでの作業の様子を4Kカメラで録画させていただき、後からその映像を一緒に見返しながら「この場面では何を考えていたんですか?」「なぜこの順序で操作されたんですか?」「この値を選んだ判断基準は?」といった、ユーザーの頭の中で起きていることを根掘り葉掘り質問させていただきました。

すると、会議室での打ち合わせでは絶対に見えてこなかった真のペインポイントがどんどん浮かび上がってきたんです。ここまで深くご協力いただけるのも、業界特化によって築いてきた密接な顧客関係があってこそだと実感しています。

業界課題とじっくり向き合える贅沢

少数のお客様と深い関係を築けるからこそ、一つ一つの課題にたっぷり時間をかけてじっくり取り組める。これって本当に贅沢なことなんです。お客様から「こんな機能があったらいいな」とご相談いただいた時、表面的な要望で終わらせず、その背景にある本当の課題まで掘り下げることができます。

例えば、登記簿謄本を取得する機能について議論していた時のこと。「データの更新頻度をもっと上げてほしい」というご要望をいただきました。でも僕たちは「なぜリアルタイム性が必要なんですか?」「どんなタイミングで情報を確認されるんですか?」「その情報が意思決定にどう影響するんですか?」と、とことん深掘りしました。

すると見えてきたのが、想像以上に奥が深い世界でした。売り出し物件の調査をするのか、有望な用地候補を探すのか、企業の保有不動産を洗い出すのか——目的によって、求められるデータの鮮度も取得の仕方も全然異なりました。単なる機能改善を超えた、お客様の業務フロー全体の最適化でした。この「Why」から入れる贅沢さは、Vertical SaaSならではですね。

Vertical SaaSならではの製品に差別化要素を作り込む面白さとは?

高単価だから実現できる作り込み

高単価のビジネスモデルだからこそ、製品に十分な開発リソースを投下できます。Horizontal SaaSでは価格競争に陥りやすく、機能開発にかけられるコストが制約されることが多いですが、Vertical SaaSでは専門性に対する対価として適正な価格を設定できます。

estieでは、商業用不動産業界特有の複雑なデータ処理に、惜しみなく開発工数を投下できています。例えば住宅の賃料査定では、築年数や面積といった基本要素に加え、建物階数やペット可否、駐車場の有無まで、地域ごとに異なる賃料決定要因を精緻に分析。これだけ細かく作り込めるのも、専門性への正当な対価をいただけるVertical SaaSだからこそです。(自分の仕事のインパクトを肌で感じ取れるエンタープライズSaaSとは? - estie inside blog

小ボリュームだから可能なセグメント特化

少ない顧客数だからこそ、業界内のセグメントにも深く刺さる機能開発ができます。同じ商業用不動産でも、仲介会社・投資家・デベロッパーでは求める機能が全然違う。仲介会社なら「成約スピード命」の物件検索、投資家なら「数字が全て」の収益性分析、デベロッパーなら「先を読む」市場動向予測。

こんな風に、セグメントごとの「本当に欲しい」機能に集中できる面白さがあります。

また、新機能の開発時も、特定の顧客のニーズを深く理解した上で設計できるため、「作ったけど使われない機能」のリスクを大幅に減らすことができます。実際の業務シーンを想定しながら機能設計ができる贅沢さは、Vertical SaaSならではの醍醐味だと感じています。

例えば、estieの「レジリサーチ」を見てください。世の中には無償でマンション・アパート賃料を検索できるサービスがたくさんありますよね。でも僕たちは、それをプロ向けに特化した検索システムと出力機能で武装することで、有償の商品として仕立て上げています。

何が違うかというと、目的が全く違うんです。一般の賃貸検索サイトは「これから借りる物件を探す」ためのもの。一方レジリサーチは、マンション賃料の値付けや一棟売買の提案書、投資計画書を作ることが目的。だから過去からの賃料推移、サブマーケットとの比較、競合物件との比較といった「プロが本当に欲しい機能」を数クリックで使えるようにしています。

高単価だから、そしてセグメントに特化したからこそ、ここまで作り込めるんですよね。

業界知識という参入障壁の構築

製品に業界固有の知識やベストプラクティスを深く組み込むことで、新規参入者には簡単に模倣できない参入障壁を構築できます。これは、機能の表面的なコピーでは実現できない、深いドメイン知識に基づく差別化要素です。

例えば、商業用不動産の賃料データでは、共益費と賃料が近い位置に記載されていることが多く、桁も1桁違いなので取り違え易かったり賃料のちょうど10%を設定されているケースでは一瞥しただけではどっちが賃料なのか分からなかったりします。また、業界慣習では面積を坪で示しますが法律上は平米で表現する規定があったり、住宅賃料には消費税が掛からないが事業用途だと掛かったりといった、業界人なら「あるある」な細かいノウハウが山ほどあります。こうした「業界の常識」を製品に深く組み込むことで、表面的な模倣では到達できない参入障壁を築けるのです。(募集賃料クレンジングとオッカムの剃刀 - estie inside blog

まとめ:Vertical SaaSだからこそ味わえるPMの醍醐味

Vertical SaaSには確かに市場規模の制約や業界知識習得の大変さもあります。でも、それを補って余りある魅力があります!

顧客とがっぷり組み合える面白さと製品に差別化要素を作り込める面白さ。この2つを存分に味わいながら、業界の真の課題を解決していく醍醐味は、PMとしての成長にとって何物にも代えがたい経験だと確信しています。

そして実は、これからの時代を考えると、こうした経験がますます重要になってくるのではないでしょうか。AIが急速に進化する中で、業界ドメイン知識をあまり必要としないHorizontal SaaSのPM業務は、AIに代替される可能性が高いと感じています。汎用的な市場分析や機能要件の整理、プロジェクト管理といった業務は、既にAIツールが得意とする領域です。

一方で、深いドメイン知識と現場での顧客との関係性が要求されるVertical SaaSのPMは、そう簡単には代替されません。業界特有の文脈を理解し、お客様の「言葉にならない課題」を汲み取り、それを技術的な解決策に翻訳する——この一連のプロセスにはまだまだ人間の感性と経験が不可欠だからです。

最後に

もし皆さんが「お客様ともっと深く向き合いたい」「誰にも真似できない製品を作りたい」と思うなら、Vertical SaaSの世界に飛び込んでみませんか?estieのような商業用不動産の世界でも、きっと想像以上の発見と成長が待っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!「Vertical SaaSって面白そう」「商業用不動産の課題解決に挑戦してみたい」と思った方は、ぜひ気軽にestieにお話を聞きに来てください。新しい世界の扉が開かれるかもしれません!

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