多くの企業がデータ活用の推進を目指す中で、estieでは「全社員がデータにアクセスし、自らの業務に活かす」という、一歩踏み込んだ環境づくりに本気で取り組んでいます。自らSQLを書くなど積極的にデータ基盤へアクセスし、データへの高い関心を持つメンバーと共に、建設的な対話を通して「本当に必要なもの」を追求する文化があります。
今回は、estieのデータマネジメントプラットフォーム (DMP) ユニットで活躍する渡邊さんにインタビューします。技術的な挑戦だけではない、estieならではの「データ基盤エンジニアとしての働きやすさ」はどこから生まれるのか? 全社員でデータ活用に挑む現場と、そのやりがいについて、詳しく聞きました。
(聞き手: 人事 佐藤)
【渡邊さんのプロフィール】
AIスタートアップ企業にてクライアント企業の社内データ基盤を構築するプロジェクトを担当し、プロジェクトマネジメント、データエンジニアリング、プリセールスなどを経験。 その後、FinTech企業にて社内データ基盤の開発、運用を経験し、2024年1月にestieに入社。
「全社員がデータを活用する」が理想にとどまらない環境
――まず、渡邊さんが所属するデータマネジメントプラットフォーム(DMP)ユニットの業務について教えていただけますか?
渡邊: データ変換や加工を行うデータパイプラインの構築や、データマート、BIダッシュボードの実装と運用、そのためのデータ変換・加工……といったデータ基盤開発の業務、全社的なデータ活用に向けたデータマネジメント業務に加えて、estieならではの特徴があります。
データ基盤エンジニアとしての大きな挑戦でもあるのが、単に技術的に優れた基盤を作るだけでなく、それを「全社員が容易にデータを活用できる状態」にすることもユニットのミッションの一つです。データ基盤の利用方法としては、データ基盤エンジニアが開発したBIダッシュボードなどをユーザーに閲覧してもらうことが多いと思いますが、estieでは、ビジネスサイドのメンバーが用意されたダッシュボードを見るだけでなく、全社員が自分でSQLを利用してデータを取得することも可能ですし、実際にそうしている人もたくさんいます。ここまでオープンにしている環境というのは、私の これまでのキャリアの中でも珍しいです。
――「全社員がデータ活用する」というのは耳にしたことはありつつも、なかなか難易度の高いテーマのように思います。estieではシステム以外にも人や文化などのハードルはないのでしょうか?
渡邊: estieは商業用不動産データ分析基盤を事業の中核に据えている会社ですから、社員は皆、多かれ少なかれデータへの関心を持って入社してきています。
そういう意味でデータ活用が根付く土壌があると感じています。実際に、多くのメンバーがBIツールなどのデータ基盤にログインしてデータを閲覧していますし、データに対するハードルみたいなものは、すごく小さいと感じていますね。中にはエンジニア経験のないビジネスサイドのメンバーでもSQLを自分で書いてデータ分析をしている人もいます。
――なるほど、データ活用への素地があるのですね。では、実際にビジネスサイドのメンバーも含めてデータにアクセスするとなると、それを支えるデータエンジニアにはどのようなスキルや動きが求められますか?
渡邊: ダッシュボードやデータパイプラインの構築はもちろんのこと、estieではSQLを自分で実行したり書いたりするメンバーがいるので、そういった部分での対応も必要になります。例えば、データカタログの整備はやはり重要になりますね。エンジニア同士であれば暗黙知でカバーできる部分もありますが、普段データを扱わないメンバーにとっては必須の情報です。正直、まだ完璧に整備できているとは言えませんが、今後より一層重要になってくると考えています。
――SQLを書けないメンバーもいると思いますが、そういった方々に対しては、どのようにサポートしているのですか?
渡邊: 定型的な分析、例えば毎月見るようなレポートであれば、こちらでSQLを用意して、あとは好きなタイミングで実行してもらう、という形をとることがあります。パラメータを一部変更できるようにしておけば、ある程度の自由度も担保できます。
これだけでも依頼のたびにデータエンジニアが個別対応する必要が減ります。そして何より、自分たちがどういうデータが欲しいかを考えて依頼してくれているので、ビジネスサイドのメンバーがこうして自らデータに触れようとしてくれるのは、本当にありがたいと感じています。
議論して本当に必要なデータを作っていく
――ビジネスサイドのメンバーがデータ利用を自律的に行ってくれるという姿勢は、データ基盤チームへの依頼の質や、作られたものが実際に活用される度合いにも、良い影響を与えているのでしょうか?
渡邊:そこがestieで働いていて私が良いなと思うところの一つです。estieには本当に必要なものをスピーディに作るという文化が深く根付いています。しっかりと議論を通して作られているため、「作ったものが業務の中で活用されている」と実感することができ、データ基盤エンジニアが高いモチベーションで業務に取り組める環境が整っています。
依頼する側のデータ活用の解像度も高いと感じています。「データを使って何をしたいか」が具体的な状態で相談をしてくれますし、我々エンジニアも言われた通りに作るだけではなく、目的達成のために最適な形を提案する。お互いへの理解と建設的な対話があるから、メンバーの時間という貴重なリソースを最大限に有効活用でき、本当に意味のある、使い続けてもらえるアウトプットを生み出すことに集中できるんだと思います。
ビジネスサイドの定例会の中でデータやダッシュボードに基づいてレポートや議論が行われますが、その場に我々も同席しています。自分たちが作ったダッシュボードが事業推進に活用されている場面を直に見れて、使ってもらっていることを実感できるというのは、すごく大事というか……。こうして言語化してみると、私自身のモチベーションを支える土台になっているなあと、あらためて思いました。
それに、お互い褒める文化もあり、そのミーティングの場で「めっちゃ良い!」とフィードバックをしてくれることもあって、純粋に嬉しいです。
経営の意思決定にも関わる:「間違ったデータで判断させない」こだわり
――幅広いユーザーがデータを利用するとなると、データの品質も非常に重要になりますね。
渡邊: まさにその通りです。estieのデータ基盤チームは、運用、特にデータのQA(品質保証)にはかなり力を入れています。「間違ったデータに基づいて意思決定がなされること」は、何としても避けなければなりませんから。
――具体的には、どのような取り組みをされているのでしょうか?
渡邊: まず、新しく作成したデータマートやBIダッシュボードについては、Ad-hocなテストをしっかり行います。手元のデータや他の情報ソースと突き合わせ、数値が正確かどうかを地道に確認します。特に経営判断に関わるような重要なデータ、例えば売上に関する数値などは、1円単位で整合性をチェックすることもあります。
さらに、継続的な品質担保の仕組みも重要です。データの欠損や異常値を検知するテストをパイプラインに組み込み、定期的に実行することで、問題が発生した場合にすぐに気づけるようにしています。地味な作業ですが、こうした積み重ねがデータの信頼性を支えています。
――経営層から、グラフの形式など細かい要望が来ることもありますか?
渡邊: 見せ方について細かい指定が入ることは少ないですね。むしろ、「何が見たいのか」「それを見て何を判断したいのか」という目的の部分について深く議論することを省略せずにしっかり行います。具体的なアウトプットの形は、その目的を踏まえてこちらでデザインし、提案することが多いです。多くの場合、そもそもの修正が入ることは少なく、使い始めてもらえることが多いです。
これは、経営層も含めたビジネスサイドのやりたいことに踏み込んで議論しながら作っているからこそできることなのかもしれません。データに関する困りごとがあれば、まずデータ基盤チームに相談するという流れができており、お互いの専門性を尊重しながら、建設的にプロジェクトを進められる環境です。
――現在のチームの注力領域はどのあたりでしょうか?
渡邊: ここ数ヶ月ほどは、経営層や事業責任者からデータの可視化の要望が非常に多く、ダッシュボード作成に少なくないリソースを割いています。estieのデータ活用が本格化してきた証拠でもあり、非常にホットな領域です。 ただ、これはあくまで足元の状況です。ビジネスのフェーズやニーズに応じて、注力するテーマは変わっていきますし、裏ではデータ基盤の改善や新しい技術の導入といったテクニカルな取り組みも継続的に行っています。例えば、最近ではSnowflakeへのシングルサインオン対応や、仮想ウェアハウスの最適化といったことにも取り組んでいます。後者については、最近ブログを公開しましたのでよければ見てみてください。
――DMPチームの状況や視野がよくわかりました!渡邊さん、ありがとうございました。
estieのデータマネジメントプラットフォームチームではデータエンジニアの方々の採用を行っています!