PjMとPMの両輪を回す

はじめに

この記事は、estieのプロダクトマネージャーによるブログシリーズ「PM Blog Week」第4週6日目の記事です。<<前回の記事 スタートアップにおけるPMのバランス感覚~スピードと深さの両立~ - estie inside blog>>

こんにちは。estie PMの冨田です。6月のestie PM Meetupに向けたBlogシリーズをやっていきます!(昨年書いた記事「コンサルタントがシニアPMになるまでに感じた壁 - estie inside blog」も是非ご覧ください)

さて、今回はPMが日々悩みがちなテーマ「プロダクト(以下、PRD)とプロジェクト(以下、PJ)の関係性」について深掘りしていきます。一見似ているようで実は大きく異なるこの2つの概念を理解することは、効果的なプロダクト開発の鍵となります。

大前提:プロダクトとプロジェクトの本質的な違い

PRDとPJの話をする前に、まず大前提を整理しましょう。PRDは「継続的な価値創造の仕組み」である一方、PJは「特定の目標を達成するための一時的な取り組み」として定義されます。

観点 プロダクト(PRD) プロジェクト(PJ)
期間 無期限(継続的) 有期限(明確な開始・終了)
ゴール設定 顧客価値の最大化など定性的・長期的目標 具体的・測定可能な短期目標
資源配分 時期によって柔軟に変動 プロジェクト開始前に計画・固定
成功指標 市場シェア、顧客満足度、収益性 スコープ、スケジュール、予算の達成
変化への対応 市場変化に応じて戦略を調整 計画に沿った確実な実行

この根本的な違いを理解することが、両者を効果的に使い分ける第一歩となります。

プロダクト活動に内在するプロジェクト要素

実は、PRD活動を詳しく見ると、随所にPJ的な要素が現れます。

開発活動におけるプロジェクト性

例えば、あるPRDを継続的に開発している場合、各スプリントやイテレーションは以下の特徴を持ちます:

  • 有期性:2週間、1ヶ月などの明確な期間
  • 具体的ゴール:特定機能のリリース、バグ修正など
  • 固定リソース:参加メンバー、予算の事前決定

プロダクト活動の多様なプロジェクト要素

開発に限らず、以下のような活動もプロジェクト的性質を持ちます:

活動カテゴリ 具体例 期間 ゴール設定 資源配分 変化への対応
マーケティング施策 イベント出展 イベント出展日に合わせて固定 見込み客の獲得X件、等 事前見積に合わせて固定 イベント中に大きな変更を加えることは難しく、次のイベントで対応することが多い
ブランディング TV-CM制作 TV-CMの放映スケジュールに合わせて固定 純粋想起Xポイント改善、等 事前見積に合わせて固定 作成中に変更を加えることは難しい
技術基盤の強化 DBの乗せ替え コンフリクトを避けるために短期間に固定することが多い レスポンスX%改善、等 事前見積に合わせて固定 乗せ替え中に変更を加えることは難しい

つまり、プロダクト活動は本質的にプロジェクトの集合体として捉えることができるのです。

注)有期で予算資源の決まったプロジェクトをアジャイルなアプローチで行うといったプロダクトとプロジェクトのハイブリッドも世の中には存在します。ここで言うプロジェクトとは計画駆動型の伝統的なプロジェクトを指します

組織運営における根本的矛盾

ここでPMを悩ませる矛盾が浮かび上がります。

プロダクト組織の特徴

  • 自律性重視:チームの創造性と判断力を最大化
  • 柔軟性:市場変化への迅速な対応
  • 長期視点:持続可能な価値創造

プロジェクト組織の特徴

  • 統制重視:プロジェクトマネージャーによる詳細管理
  • 計画性:事前に定めた計画の確実な実行
  • 短期集中:明確な期限内での目標達成

PRDがPJの集合体であるにも関わらず、組織運営の方向性が真逆という矛盾が存在します。この矛盾をどう解決するかが、現代のプロダクト開発における重要な課題となっています。

PMとPjMの役割の違いと相補性

プロダクトマネージャー(PM)の本質

PMは統合の専門家です。プロダクトマネジメントトライアングル(ビジネス・技術・UX)に存在する幅広い知識領域を統合し、「声なきプロダクト」の意思決定を促進する存在です。

PMの主な活動:
  • 市場ニーズと技術可能性の統合
  • ステークホルダー間の利害調整
  • 戦略的優先順位の決定
  • 長期ビジョンの策定と浸透

プロジェクトマネージャー(PjM)の本質

PjMは分解の専門家です。複雑で巨大なタスクを管理可能な単位に細分化し、予測可能性と再現性を生み出す存在です。

PjMの主な活動:
  • 作業の詳細分解と依存関係の整理
  • リソース配分と進捗管理
  • リスクの特定と対策実行
  • 品質とスケジュールの担保

つまり、PMは統合、PjMは分解を生業とする、アプローチが真逆でありながら相補的な存在なのです。

PRDの文脈とPJの文脈が交差する時、その相補性をひとりで担保するとなると、その遂行難易度は極めて高くなります。なぜなら、PRDの文脈の時は自立的な組織運営を重んじ、PJの文脈の時は細部にまで拘ってタスクを分解して可視性・予見性を高める姿勢は真逆のものだからです。

では、この矛盾に私たちPMはどのように向き合っていけば良いのでしょうか? ここからは私が実践している工夫をご紹介します。

実践的な解決アプローチ

1. 役割の明確な分離

理想を言えば、PMとPjMは別の人が担当することが望ましいです。そうすることで

  • 各専門性を最大限発揮
  • 役割の混同による非効率を回避
  • チェック・アンド・バランスの機能を確保

が出来るからです。

2. 兼務する場合のモード切り替え

やむを得ず兼務する場合は、以下を意識してモードを明確に切り替えて仕事に臨んでいます。

PMモード時:
  • 市場視点での価値判断
  • 長期的な戦略思考
  • ステークホルダーとの対話重視

プロダクトマネジメントトライアングルの循環を最大化

PjMモード時:
  • 実行計画の詳細検討
  • 進捗とリスクの管理
  • チーム内の調整とコミュニケーション
  • プロジェクトスコープを極小化して予見性と再現性を最大化

まとめ:両輪を効果的に回すために

プロダクトとプロジェクトは、車の両輪のような関係性にあります。どちらか一方だけではプロダクト運営は成り立ちません。

成功のポイント:
  1. 本質的な違いの理解:PRDとPJの違いを理解する
  2. 相補関係を利用:PRDとPJの相補性を理解し、組み合わせる
  3. 適切な役割分担:PMとPjMの専門性を最大化(役割分担/モードチェンジ)

現代のプロダクト開発では、PRDとPJの矛盾を受け入れて、その両方を組み合わせて利用することが不可欠と感じています。PMとして、あるいはPjMとして、プロダクトトライアングルを回して行きましょう!

最後に

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