「伝統産業に挑む2社が語る!マルチプロダクト戦略とプロダクトマネジメント」イベントレポート

estie HRの藤田です。
先日、estie×Shippio3本連続イベント企画の第1弾として「伝統産業に挑む2社が語る!マルチプロダクト戦略とプロダクトマネジメント」を開催いたしました。

今回は株式会社ShippioのCPO森さん・Senior PdM柳沼さんにご登壇いただき、estieからはVPoPの久保が登壇しました。
その内容についてまとめてみました!

当日のアジェンダ

マルチプロダクト展開に関するLT

estie

コアデータを起点にした商業用不動産の未来を導くマルチプロダクト戦略

speakerdeck.com

estieは、世界最大級の市場規模を誇る日本の不動産市場において、産業基盤となるプロダクトを生み出そうとしています。
アメリカでは40年前から商業用不動産テックのプレーヤーが存在しており、時価総額で4兆円となる企業がいる一方、日本の商業用不動産テック領域はまだ黎明期です。

そんな日本の商業用不動産市場の一番の課題は、「データ分断による取引コストの大きさ」です。

例えば、estieの向き合っているオフィス領域には、住宅領域に存在するようなデータ基盤がなく、各社がそれぞれデータベースを保持し管理している状態です。
そのため、オフィス領域では情報更新の速度や網羅性において課題があり、空室期間の長期化が見られています。本来売上をさらに上げられる環境の中、機会損失が生まれている状況です。

こういったデータ流通の課題に対し、複数のプロダクトでその課題を解決しようとしているのがestieです。
estieがシングルプロダクトではなくマルチプロダクトでマーケットに挑戦している背景は、その価値が多層化していることに依拠しています。

  • データそのものの価値
  • データ流通とトランザクション価値
  • データ×業務効率化価値

上記3つの価値が存在しており、それぞれ異なる特性を持つプロダクトをユーザーに提供していくことが想定されます。
一方、価値は異なるものの、すべてのプロダクトに共通するのは「データ」です。
商業用不動産のビジネスを行うにあたって必要不可欠な「土地と建物のデータ」 を起点にプロダクト開発をしています。
実際、この半年~1年で4つのプロダクトが開発され、実際に顧客に使っていただいており、マルチプロダクト戦略は非常に良いテンポで進んでいます。

Shippio

伝統産業「貿易」の変革のためにマルチプロダクト展開は必然だった

speakerdeck.com

Shippioは、島国である日本にとって必要不可欠な基幹産業「貿易」の非合理を解消し、アップデートすることに取り組んでいるスタートアップです。労働人口が減少する中で、貿易の仕組みを維持し続けるためには、あらゆる課題解決を通してサプライチェーン全体の生産性改善が急務となっています。

中でも

  • アナログ業務が山積み
  • 非効率なコミュニケーション
  • 不確実性

といった貿易特有の課題が多くあります。

例えば、電話、FAXや紙の原本管理といったアナログな業務。そして、国を跨ぐ取引であるがゆえに膨大な数のやりとりを無数のステークホルダーと同時進行しなければいけません。また、海上輸送は悪天候、港混雑など回避しづらい事象に遭遇することが多々ある為、貿易担当者は不確実な輸送スケジュールに日々悩まされています。

こうした伝統産業ゆえの課題を解決すべく、Shippioでは2つの事業とマルチプロダクトの展開を推進しています。
1つ目の事業「デジタルフォワーディング」では、荷主企業向けに輸出入にまつわるオペレーションとクラウドサービスをセットで提供しています。一方SaaS事業の「Any Cargo」では、クラウドサービスのみを提供しています。
これら2つの事業を推進するために、以下3種類のプロダクトを開発・提供しています。

  • 荷主向けプロダクト
  • 社内オペレーション向けプロダクト
  • 物流事業者(倉庫業者など)向けプロダクト

では何故マルチプロダクト展開に至ったかを端的に言うと「貿易という伝統産業の変革のためには、そうせざるを得なかったから」です。
先述の通り、貿易には無数のステークホルダーが関わります。荷主、フォワーダー、船会社、通関業者、倉庫業者、運送業者などなど。そのため、産業全体を変えていくためには、各プレイヤーが抱える課題解決と各者間のコミュニケーションを円滑化する必要があります。 よって、必然的にマルチプロダクト展開が必要であった、という経緯です。

今後は、既に提供している荷主向けプロダクトや社内Ops向けプロダクトの更なる磨き込みをしつつ、各物流事業者向けプロダクトへの展開を構想しています。
手前味噌ながら、こういった多数の事業者に対するプロダクト展開を推進していくのは、とても難易度が高く、面白いチャレンジになるんじゃないかと考えています。

パネルディスカッション①マルチプロダクト展開について

同じマルチプロダクト展開をしている企業でも、アプローチ・登り方が違います。
それぞれのメリットと乗り越えるべきチャレンジとは、どのようなものなのでしょうか?

estie

メリット

オフィスに関する「土地」と「建物」というコアデータがあり、このデータに新しいなにかを掛け合わせると、新しい価値を生み出すことができます。
estieが新規プロダクトを投入する際のポイントは2つになっています。

  1. 既存のデータアセットが活用可能である 
  2. プロダクトから新たなデータアセットを獲得できる

データアセットからプロダクトが生まれると同時に、新たなプロダクト投入で新たなデータアセットを獲得することが出来るため、データ獲得とプロダクト投入が正のループで回っていき、早いスピードでプロダクトを提供することが可能になります。
プロダクト単体だけではなくデータ領域も育っていくので、新しいプロダクト・価値を生み出しやすい点がメリットかと思います。

乗り越えないといけないチャレンジ

取り組むべきバリューチェーンが広大であることも含め、どの課題を解決すべきかの優先順位の付け方は非常に難しくなっています。

結果的に、同時並行で複数のプロダクトを投入するという意志決定をしているのが現在です。
この広大なマーケットの課題を解決するうえで、今のやり方が正しいかはわかりません。1本足打法にしたときにそれが転ぶとすべて終わるということになりかねないので、敢えて複数の登り方を用意することにより「もっとも速く・高く登れるのはどれか?」ということを競い合い検証しています。
特に23年度はプロダクト間のカニバリゼーションが発生することも許容するとして1月から走り始めたのですが、結果的に、すごい速度で複数のプロダクトが誕生し、ユーザーに着々と利用されています。

Shippio

メリット

フォワーディング業務を自分達が担っていること、つまりリアルオペレーションを持っているのが強みです。
toBプロダクトにおいては「業界・顧客への解像度」が生命線であると考えており、リアルオペレーションに入り込むことで、「業界・顧客への解像度」が深く得られます。

乗り越えないといけないチャレンジ

複数プロダクト開発を進めることで、必然的にリソースの問題が生じます。
前提であるミッションや事業戦略に立ち返って、深く議論し優先度の高いものから対応するようにしていますが、その意思決定は非常に難しいことも多く、試行錯誤している段階です。

パネルディスカッション②伝統産業でのプロダクトマネジメント

伝統産業でのプロダクトマネジメントは、他の産業やtoCプロダクトと比べてどのような点が違うのか?

estie

とにかく顧客の熱量がすごいというのが特徴でしょうか。
自分たちが培ってきた不動産ビジネスをどう良くしようかと本気で考えている人達に対し、顧客の売上を直接伸ばし、ビジネスのステージを変えることのできるプロダクトを開発するのは非常に面白いです。

また、僕が前職でtoC領域のプロダクトに向き合っていた時に思っていたのは、はっきりと言い表せないアートな部分もあるなと思っていました。ログを見て検証することは出来るのですが、投入前から「この企画は当たる!」と言い切れないこともありました。
そういった意味で、ユーザーが目の前にいてフィードバックを貰える手触り感・手応えはtoB・Verticalならではではないかと思います。

Shippio

私(Shippio柳沼さん)はHRやFintechといったtoCのプロダクト出身なのですが、やはり顧客アウトカムの計測が難しい点が大きな違いだと感じます。
toBだと、顧客の売上や業務効率が上がる・業務工数が下がるというのが価値につながります。
が、「プロダクト起因で価値が出せたか」を計測するのは難しく、toCと違い工夫しないといけない点が多いです。
あとは、業界全体的にきれいなデータが整備されていないことも難しさの1つです。顧客が積み重ねてきたデータがデータとして扱える形式になっていなかったり、そもそも紙媒体であることも多いので、これについても工夫や泥臭い解決策を推進することが必要です。

パネルディスカッション③プロダクトマネジメント組織について

estie

estieのプロダクトマネジメント組織で重視しているポイントは「スピード」と「データ」です。

  • スピード 取締役やCxOがすべてを管掌・意思決定することにより速度が落ちてしまうことを防ぐため、事業部制を敷いています。事業部内には、事業責任者・事業部CPO・事業部CTOがタッグを組み、事業部の意思決定を自分たちで行える仕組みになっています。
    プロダクトマネジメントの観点では、事業部CPOが最終意思決定権者となり、事業責任者と議論して方向性を決めています。

  • データ

事業部制を敷きつつもestieのコアとなるデータについては、きちんと学習を回せる仕組みを作っています。ドメインモデル学習や新たに事業部で取り込んだデータの利活用について、データ専門組織と絶えず連携することで、共通データ基盤を構築しています。

Shippio

顧客アウトカムに向き合うために最適化した組織構成にしています。
各スクラムに担うミッション・向き合う顧客アウトカムがあり、「それを達成するためにどのプロダクトも触る」というスタイルを取っています。
また、貿易業界はデジタルだけで解決できない課題が多いです。
そのため、デジタル×オペレーション両面を駆使したアウトカムを創出するために、CPOがカスタマーサクセス部門・プロタクト部門を管掌していることも特徴かと思います。

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました!
estieの事業にご興味のある方はconnpassページをフォローして告知を受け取れるようにしてみてください。
また、採用も大募集中ですので、ぜひエントリーお待ちしております!

hrmos.co

© 2019- estie, inc.