新規事業開発において重要なのは PM と Bizdev どっちなのかで言うと…

こんにちは。estie PM の勝田です。このブログは、6月の estie PM Meetup に向けたブログシリーズとなっており「PM Blog Week」第 4弾 1日目のブログです。

今回はログラス社主催の「新規事業 PdM vs Bizdev どっちが重要?ガチンコ対決」に登壇するにあたってこのテーマで書いてみようと思います。

このイベントは、私の前職の後輩であり、現在はログラス社で VP of Product を担っている須加さんと一緒にイベントをやろうというところから始まったものなので非常に楽しみにしています。

前提整理

PM と Bizdev のどっちが重要かというテーマは可燃性がやや高そうですががんばって書いてみたいと思います。

とはいえ一定の前提条件は整理した方が良さそうなので、以下の通り設定します。

  • スタートアップや未上場企業における新規事業立ち上げ時、特に B2B 領域を想定
  • ベテランや高いレベルの人は 1人で複数の役割を担えるケースがあるので一般的な水準の人を想定
  • 常に会社を何倍にも成長させるために事業の急成長を求められる一方で、新規事業に割く人員は足りずに兼務が増えがちなシチュエーションを想定

ChatGPT に聞いたまとめ

最近は皆さん同じだと思いますが、まずは ChatGPT に聞いてみました。

ChatGPT への質問

以下がもろもろやり取りを経た後の最終的な結論です。

  • PM は顧客課題を起点に製品ビジョンと MVP 検証を主導し、市場ニーズを的確に捉えてゼロイチの壁を突破する“価値創出”の要。
  • BizDev はローンチ準備から提携・営業を加速し、PMF 後の 10 → 100 成長を牽引して収益モデルと拡販体制を築く“事業拡大”の要。
  • 成功率を高める鍵はフェーズごとに両者がリーダーシップを柔軟に受け渡すこと。PM が価値を創り、BizDev が市場で爆発させる。

めちゃくちゃ納得感がありますし直感的にも正しそうです。PM vs Bizdev なんて議論をせずに両者は棲み分けしあう存在だよねという結論も無為な争いを生まず美しいです。

一方で現実はそうもいきません。我々は常にリソース不足です。どうしても PM か Bizdev の片方しかアサインができないというケースは普通にありそうなので、どちらか一方に絞らなければならない場合はどっちなのかを決めましょう!

新規事業の立ち上げにおいて ”本当に価値を生む” のは誰か?

本当の価値とは、のちに会社を支える基幹事業となるような事業において提供されているコアな価値だと定義しましょう。

議論を前に進めるために estie はよく「サイドを取る」という言葉を使い、あえて極端にポジションを取ることを重視しています。今回の問いに対して私のサイドは「本当に価値を生むのは PM だ」です。

その理由を書いていきます。

本当に価値を生むのは PM だと思う理由

本当に価値を生むのは PM だと思う理由は 2つあります。

  1. 新しい価値の源泉は顧客の課題特定にあり、それを早く正しく見つけることができるのは PM だから
  2. 高い不確実性を減らすのはスピード ( ≒ 試行回数) であり、それをコントロールするのは PM だから

つまり、新規事業を立ち上げるにあたって最も重要なことはユーザの課題特定とその解消であり、それを担うのは PM だからという理由です。

ここがズレてしまうと、あったらいいけどないと困る ( = お金を払う価値がある) ソリューションを提供できず新規事業が立ち上がりません。初期検証にお付き合いいただいた顧客の一部には満足してもらったが、それ以外の顧客群にはスケールしないということも起きるかもしれません。

そうすると開発したものは無駄になってしまいます。リソースの無駄はまだしも、なによりも新規事業で最も貴重な時間を失うことになりかねません。

顧客の声を鵜呑みにしすぎずに本質的な課題を見極めるまでモックの開発には着手しない、 その一方でモックを見ることで初めて顧客がイメージでき課題特定が進む、 そんな絶妙なバランスを見極めながら課題特定と不確実性の排除を担う PM の重要性は非常に高いのではないでしょうか。

自分の経験

ChatGPT にだけ聞いていてはありがたみがないので、私の経験談も踏まえてより具体的に説明します。

私は PM も Bizdev も両方を経験したことがありますし、現在もどちらの人格かをあまり区別することなく仕事をしています。その上で、私自身の過去の経験を踏まえて PM or Bizdev について話してみます。

現在進行中のため詳細なテーマはお話しできないのですが、とある新規事業を CTO とソフトウェアエンジニアと私 ( PM ) の 3名で進めています。まだ探索フェーズを抜けきっていないものの顧客からは「部署全員から軒並み反応が良い、早く使いたい」というお声をいただいているものです。 ※ CTO が入っていますが、CTO ロールが必須な PJ というわけではないです

この PJ で私が PM として果たした役割は、

  1. 顧客自身は認識・言語化できていなかった課題設定を行ったこと
  2. 先行している他社類似プロダクトでは実現していないが、MVP として必要不可欠だと判断した機能 (価値) を発見したこと

の 2つです。

特に 1点目については、顧客はよくある業務効率化という課題設定を想定していました。実際、顧客がベンチマークしていた他社の類似プロダクトではそれをうたっていました。

しかし、業務ヒアリングを通じて事実を定量的に整理していった結果、業務効率化ではなく機会損失の回避の方がより納得感があり対価を払う価値がある課題設定を行うことができました。

業務ヒアリング時は顧客自身が実態を正しく定量的に把握しきれていない部分があり、ヒアリングの過程で曖昧なまま流されてしまいそうなゴニョゴニョとうまく濁された部分があったのですが、それを逃さずに適切に顧客に対して宿題として事実整理を依頼し整理することができました。

2点目については、他社類似プロダクトを見ているだけでは絶対に気付けなかっただけでなく、ヒアリングだけでは見つけることができなかったものでした。顧客の業務ヒアリングの過程でヒアリングだけでなく実際に現状使っているツールや資料、顧客のステークホルダーとのやり取り (メールなど) を見せていただいたことで気づいたものでした。

我々が気づいたその事実は、顧客にとっては当たり前すぎて前提条件だと思い込んでいたものでした。

上記 2点のうちどちらか片方でも間違えているとプロダクトのつくる方向性が大きく変わってしまっていたと思うものだったので、良い貢献ができたと思います。

逆に Bizdev の方が価値があるケースとは?

Bizdev はマーケット/顧客の選定、アライアンス創出、顧客とのリレーション構築、契約交渉、オペレーション設計などを通じて事業価値の最大化を果たす役割です。

この中で特にアライアンスやリレーション構築といった、外部パートナーを巻き込むことで新しい価値を生むケースは PM よりも Bizdev の方が価値を出すケースは多いと思います。

アライアンスは大きな一手として一気に事業をスケールさせることができますし、トップレイヤとのリレーションは物事を大幅に前進させる力があります。そういった価値の出し方は Bizdev の方が優れていると思います。

ちょっと余談

ちょうどこのブログを書いている 5/19 に AIでソフト開発者に解雇の波、マイクロソフトの米大規模人員削減 という記事が出ました。スタートアップと外資テックジャイアントでは全く比較対象になりませんが、レイオフされた職種の上位 2つがソフトウェアエンジニアと PM でした。

逆に Bizdev や Sales っぽい職種は少ない・ないように見えます。これは AI によりソフトウェア開発の自動化が急速に進んだ結果ということです。

職種別レイオフ人数

出典: AIでソフト開発者に解雇の波、マイクロソフトの米大規模人員削減

たしかに AI は顧客の声を直接聞くことはできないだけでなく、顧客との関係値を構築することも (飲みにいくことも) できないので、AI の重要性が高まるほど営業や事業開発の相対価値・希少性が高まるというのは一定の納得感があります。

AI 発達 = 人材不要と簡単にはならないと思いますが、一方でそれぞれの役割を高いレベルで果たしていかないと代替されやすくなるというのはどの職種でも間違いなく起こりそうですね。

役割を超えて必要な素質

最後に… PM or Bizdev どっちが重要か?という問いに対する答えになっていませんが、役割論争よりも大事なことはそのテーマに "魂“ を持っているかどうかだと思います。

estie では「魂ドリブン」という Values がありますが、この文脈における魂を持っているかどうかは、

  1. やる気があるか : 単なるやる気は短期間で燃え尽きるかもしれないので使命感や信念を持てているかが近いイメージです
  2. 見立てがあるか : 課題解決できそうか、勝てそうか、少ない情報のなかでも複数の仮説を持ち最終的に勝てる絵が見えているかが重要です。

の 2つが重要だと思います。

なぜこれが重要かと言うと、新規事業の最初は不確実性が多く基本的にはうまくいかないことの方が多いです。そのため役割やケーパビリティがあったとしても強い気持ちを持っていないとすぐに挫折し、事業そのものが立ち上がらない恐れが高まります。

むしろケーパビリティがなくとも壁にぶつかりながら早く失敗をし修正しながら進む方がいいケースの方が多い印象です。それができるのは、この事業はやらねばならないという気持ちを持った人、つまり魂を持った人の方が適していると思います。

最後に

今回は「新規事業の立ち上げにおいて、“本当に価値を生む”のは誰か?」というテーマでブログを書きました。

このテーマに対する自分なりのサイドを示しましたが、当日はこのテーマについて estie に加えてログラス様、SmartHR様、BASE様から PM と Bizdev がそれぞれ集まりガチンコ対決、徹底議論を行います。

結局どっちも大事だよねといった八方美人ではなくガチで二者択一の結論をあえて出しに行くような議論をしたいと思っていますので、ぜひイベントにもお越しください!

オフレコトーク盛りだくさんでいければと思います。

https://loglass-tech.connpass.com/event/354646/loglass-tech.connpass.com

最後の最後に

estie では PM 未経験の方も積極的に募集しています! 直近ではソフトウェアエンジニアだった方が PM 未経験で estie にPM として入社し、わずか 3ヶ月で成長した人もいます。 成長したいと強く思っている方であれば経験は問いませんのでぜひカジュアル面談にご応募ください!

hrmos.co

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