プロダクトマネジメントの本質は戦略マネジメントである


こんにちは、プロダクトマネージャーの齋藤 @shisaito です。

この記事は、estieのプロダクトマネージャーによるブログシリーズ「PM Blog Week」第2弾3日目の記事です。<< 前回の記事はこちら>>

今回は、プロダクトマネジメントの本質について考察します。

プロダクトマネジメントの重要性

ここ数年で、プロダクトマネジメントの重要性は高まり、プロダクトマネージャーの役割も正しく認識されるようになってきました。背景として、ユーザニーズの多様化やテクノロジーの進化、そして多様なサービスが登場したことにより、細分化や専門化して発展してきたなどがあげられます。このような環境では、単にプロダクトや機能を作ってユーザに届けるだけでは、差別化につながらず、競合に勝つことが困難になりつつあります。(例えば生成AI、モバイルオーダー、人事SaaSなど競争激化している市場は簡単に思いつきます)

また、プロダクトマネージャーは、プロダクトを通じて、どのように戦い、価値を提供し、事業を成長させていくかという要素も強く求められるようになってきたとも思います。

私自身が「プロダクトマネジメントは戦略マネジメントではないか?」と考えるようになったきっかけは、プロダクトマネージャーが担う役割が、プロジェクトをマネジメントする活動から始まり、プロダクト全体にスコープが広がり、やがてビジネス、データ分析、マーケティングといった領域までスキルセットが求められるようになった結果、なんでも屋のような位置づけになっており、最近では、プロダクトマネージャーは「あらゆる手段を用いてプロダクト/事業の成功を目指す」という一言に、すべてが包含されつつある状況に違和感を覚えることが増えてきたからです。

プロダクトマネージャーは、文字通り、プロダクトをマネジメント(=管理)することが第一目的です。

プロダクトマネジメントトライアングルを参考にしても、プロダクトマネジメントに関連する領域は多岐にわたっており、考えを深めていくにつれて、結局、プロダクトマネジメントの本質は、戦略をマネジメントすることが重要ではないか?と考えるようになりました。

参考

プロダクトマネジメントの本質は何か?

ここで改めて、プロダクトマネジメントとプロダクトマネージャーの定義を確認しておきます。

プロダクトマネジメントは、製品のライフサイクル全体を戦略的に管理するプロセスです。市場調査や顧客ニーズの把握を通じて製品戦略を策定し、要件定義や優先順位の設定を行い、開発チームと協力して製品を形にします。また、製品ローンチ後は、その評価と改善を繰り返し、製品の成功を支援します。

プロダクトマネージャーは、プロダクトマネジメントを実行する担当者で、製品のビジョンやロードマップを策定し、開発、マーケティング、営業などと連携してプロジェクトを推進します。製品の方向性を決め、チームの調整や進行管理を行い、最終的には製品の成功に責任を持ちます。プロダクトマネージャーは企業の競争力を高め、マーケットでの成功を実現するために重要な役割を果たします。

(生成AIより)

これまでのプロダクトマネジメントは、狭義の意味ではプロダクトライフサイクルを含めた機能開発やデリバリーマネジメントを行うことが多いと思いますが、広義に捉えるとフレームワーク(3C/4P/SWOT/ビジネスモデルキャンバスなど)を活用しながら、結局、自社のプロダクトが「どの市場で勝負し、どのように競合と戦い、どのように勝つか」をきちんと定義することが重要で、つまり、プロダクトマネジメントは本質(コア)は戦略をマネジメントすることではないかと考えています。

例えば、新規市場へ参入を目指す場合は、対象となる市場で、必要となる機能や価格を戦略的に決定し、開発計画やセールス計画を作っていきます。既存プロダクトであれば、競合との機能比較表やフィードバック情報をもとに、どのように戦っていくか、具体的な戦略を考え、ロードマップを作っていくことになります。

戦略を作るのは誰か?戦略の構成要素

当たり前ですが、戦略は、プロダクトマネージャーだけが考えて、マネジメントしていくものではありません。事業に関わる人たちがそれぞれの得意領域で適切な役割を持っています。

個人的に、事業を構成する要素として、プロダクトマネジメントを含め4つの領域があり、事業フェーズによって、中心となる戦略テーマが変わるものだと思っています。図で表現すると以下のようなイメージです。


  • プロダクトマネジメント

    • 提供するプロダクトや機能の価値を最大化するための活動です。顧客ニーズや市場動向を踏まえたプロダクト戦略を起点に、製品の企画、開発、改善を通じてビジネス成果を追求します。プロダクト戦略とも言われます。
  • レベニューマネジメント

    • 売上拡大やビジネス成長を目的とし、営業活動やマーケティング施策を最適化する取り組みです。顧客との接点を強化し、収益性の高いビジネス価値を創出します。
  • テクノロジーマネジメント

    • 技術基盤やAPI連携などを通じて、プロダクトの機能性やパフォーマンスを最大化することです。効率的なシステム設計や技術的イノベーションにより、競争力のある製品開発を支えます。
    • 技術スタックやプラットフォーム、技術負債の管理も含まれます。
  • ピープルマネジメント

    • チームメンバーの採用・育成・管理を通じて組織力を強化する活動です。働く人々が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整え、チーム全体の成長と成功を促進します。
    • チームを強くするため、EMやTLなど組織的制度を作ります。

この4つの領域は、共通の戦略やテーマに基づき、相互に補完しあい、事業の成功に向けて連携していきます。事業規模が拡大するにつれて、一つでも歯車が噛み合わなくなっていくと、組織が壊れたり、思い描くスピードでの成長が難しくなっていきます。そのため全体を横断的に見ていく、事業マネジメントの観点が増えていきます。

プロダクトマネージャーは、どのように戦略をマネジメントするか?

繰り返しになりますが、プロダクトマネージャーの本質的な仕事は「プロダクトを中心に戦略をマネジメントしていくこと」です。では、プロダクトマネージャーは、どのように戦略をマネジメントしていくべきでしょうか?

一般的なプロダクトマネジメント手法は「市場構造や課題を把握し、機能を作り、リリースし、効果測定と改善を繰り返す」という流れが基本です。しかし、戦略を中心に考えた場合は、無駄なものを作らないために、課題の整理と打ち手の検討により多く時間を使う必要があります。まずは、戦略と戦術を理解したうえで、ツールやフレームワークを活用しながら、課題を整理し、打ち手を見極めていくのが戦略マネジメントの第一歩です。

戦略マネジメントの流れ

  • 戦略とはなにかを理解する
    • 戦略とは、どこで競争し、どのように勝つかを定義すること。目的達成のためにリソース配分や優先順位を行い、方向性を提示する
  • 課題を整理する
    • 対象を明確化し、ユーザニーズやペインを深堀りし、本質的な課題を絞り込む
  • 打ち手を考える
    • 勝ち筋(戦い方)を決めて、優先度、やること、やらないことを明確にする
    • リスクやトレードオフを考慮して、実行可能性を評価する
  • 効果測定して改善を繰り返す
    • KPIやノーススターメトリクス(NSM)などで指標を測定する
    • データから戦術(アクション)の有効性を評価して、改善サイクルを回す

代表的なフレームワークの例

  • 現状分析、業界整理:3C、4P、SWOT分析、PEST、価値マップ、KPIツリー、PPM
  • 戦略策定:STP、ASIS/TOBE、ノーススター、4P、PPM
  • 効果測定:指標モニタリング(KPI、OKR)、AARRR、ファネル

※フレームワークは情報整理や意思決定支援のツールで、場面にあわせて必要なものを活用します。

多くの場合、プロダクトマネージャーは、目の前にある具体的なユーザニーズやペインから課題整理してアプローチしていくことが多いと思いますが、問題の本質を深堀りしていくと、プロダクト単体ではなく、事業全体や業界構造の課題が見えてきます。理想的には業界構造や社会全体に影響を与えられるような、大きなインパクトある戦略が描ければよいのですが、実際は課題をクリアにして、正しい打ち手を見極めて実行していくこと自体がとても難しいものです。(課題に優先順位があり、明確になっていれば、すでに誰かが解決しているはずでしょう)

そんな中で、課題の整理や打ち手の検討に時間を掛けていても、正しい答えはいつまでも見えず、トライしなければ間違いだったことにも気付けません。現場では、ある程度の不完全情報の中で、意思決定しながら、実行フェーズに入っていくことが多いはずです。やってみなければ分からないことも多い中で、覚悟を決めて試行錯誤することにも価値はあります。その際、プロダクトマネージャーは、思いつきで実行するのではなく、データやファクト、十分な考察に基づいて判断し、なぜやるのか、なぜ作るのか、どんな価値があるのかを説明できる状態が求められます。

つまり「戦略をマネジメントすること」とは何か?を定義するならば、「問題の本質を解決するために、全体像を把握し、良い打ち手(勝ち筋)が実行できている状態にあること。そして変わっていく局面に、柔軟に変化し、対応できている状態にすること」ではないでしょうか。

戦略については、以下の投稿が参考になります。

おわりに

今回は、プロダクトマネジメントの本質について考察してみました。

プロダクトマネージャーとして重要なことは、戦略をマネジメントしながら、プロダクトの価値を追求し続けることです。また、プロダクトマネジメントは、ビジネス、テクノロジー、ピープルマネジメントと密接に関わっており、一緒に戦略を考えながら、事業を大きくしていくことも重要です。プロダクトだけにとどまらず、事業、会社、業界、さらには社会全体へと、視野と影響力を広げて、戦略的にマネジメントしていきましょう。

今一度、プロダクトマネジメントの本質や戦略のあり方について、この機会に考えてみるのはいかがでしょうか。

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