こんにちは、estie(エスティ)VP of Productsのtakuya__kuboです。この記事は estie 真夏のアドベントカレンダー 最終日の記事でございます!
本日は「A or Bに逃げないプロダクト戦略」について書きたいと思います。
本ブログの想定読者は、スタートアップはじめ成長企業で戦略構想及び執行を担っている方です。ロールで言えば、所謂CxO・執行役員やVP、事業責任者、プロダクト責任者、プロダクトマネージャーを想定しています。
本日の内容のサマリ(お時間がない方はここだけお読みください)
Chat GPTパイセンによる要約を一部修正
この文章は、プロダクトマネジメントにおいて「A or B」の選択ではなく、「A and B」の両方を実現するアプローチについて述べています。著者は、プロダクトマネージャーが日々直面するトレードオフについて言及し、プロダクト価値と成功を最大化するために、セオリーを疑い、時には大胆に逸脱することの必要性を述べています。
文章は以下のポイントを取り上げています:
「A or B」から「A and B」への転換: 本文は、「A or B」の選択肢にとらわれるのではなく、複数の可能性や方法を同時に実現することを探求すべきだと主張しています。特に、目指すビジョンや目標に合わせて、複数のアイデアや戦略を同時に追求するアプローチが重要であると述べています。
検証とイテレーション: 著者は、「A and B」を実現するために、小さなチームでの小さな検証を重視し、迅速なイテレーションを行うことを提唱しています。短いサイクルでの検証を重ねることで、適切な方向性を見つけ出すことができると説明しています。
強力な個人とチームの重要性: 著者は、強力な個人を採用し、チーム全体で高いレベルの検証を行うことの重要性を強調しています。組織内で意志と能力を持つメンバーが、複数のアイデアを同時に推進することで効果的な実現が可能だと述べています。
ポートフォリオマネジメント: 著者は、複数の検証プロジェクトをポートフォリオとして管理し、短期・中期・長期の視点からアプローチを調整する必要があると説明しています。異なる期間やスケールでアプローチを取り入れることで、組織全体の目標に合致する戦略を進めることができると述べています。
目標の重要性と挑戦: 最後に、目標を明確にし、目指す方向性に従って取り組むことの重要性を強調しています。著者は、目標に向かって逸脱し、新たなアプローチやリスクを受け入れる覚悟が必要だと述べており、安易な選択ではなく大胆な意思決定が偉大な企業の実現に必要であると締めくくっています。
A or Bを選ばなければならないという呪縛
プロダクトマネジメントにおいて日々向き合うトレードオフ
プロダクトマネジメントを行う中で、スコープ・デリバリー・品質など日々発生するトレードオフ構造に向き合い、意思決定をしていくのは当然だと言えます。
特にプロダクトマネージャーはA or Bを問いたくなる生き物です。無限の時間と無限の資金があれば、優先順位をつけることなくすべてを同時並行で進めることが出来ますが、現実世界でそれらを得ることは不可能です。また、たとえ無限のリソースがあったとしてもアーキテクチャはじめ他の部分でリソース最適の限界を迎えます。
限られたリソースの中で、「プロダクトの価値と成功を最大にする」というミッションを実現するには取捨選択をしなければなりません。
つまり、A or Bというのは根本的に選ばなければならないものです。
果たして本当にそうか?
一般的に「YES」であることも、疑ってみることが重要です。ここであえて自問自答をしてみます。本当にそうでしょうか?
A or Bを問うべき瞬間は必ずあり、真に選ぶべき場面ではいずれかを選び抜くことが重要です。ただし、本当にそれは「真に選ぶべき場面」でしょうか?
実際は「取捨選択をしなければならない」「A or Bを選ばねばならない」といった固定観念から安易な二項対立に逃げ、同時実現できる可能性や方法を捨ててはいないでしょうか?
その可能性はぬぐい切れません。少し前置きが長くなりましたが、本ブログではestieが如何にA or Bではなく、A and B(なんならand C)が重要だと考えているか、また如何に実現しているかについて共有します。
前提:estieは「数年以内(※)に時価総額1兆円到達」を本気で目指している
estieが追い求めるPurposeを実現するには当然の通過点
estieは「産業の真価を、さらに拓く。」というPurposeを掲げ、経営を行っています。これは複雑な産業の未来を切り拓くという意志を表していると共に、その産業のプレーヤーの方々がこれまで築き上げてきた資産・文化・思想を尊重し、対話を重ねながら未来に向けた変革を促すエネイブラーであるという方針です。
そして我々が向き合う商業用不動産市場は非常に大きなマーケットであり、その産業の価値創造の担い手としては当然その規模に到達する必要があります。
スピードとスケール、エコノミクスのすべてを獲得しようとする野心的な目標
「数年以内(※)に時価総額1兆円到達」という目標は会社の広報的なメッセージでも何でもなく、実際的に社内で取締役から社員まで多くのメンバーが自然と追っている目標になっています。
※実際は詳しい年数を決めていますので、カジュアル面談等で是非聞きに来てください。
事あるごとに「行こうぜ一兆」と「行くよ一兆」というスタンプがいろんなところでつきます。
この目標は3つの指標と意味を伴うメッセージだと思っています。
①スケール :Purposeを実現する顧客価値と対価としての売上規模
②スピード :数年以内という速度での到達
③エコノミクス:十分なマルチプルが付くビジネスモデル
estieはこれらを同時実現させようとする企業です。その企業が常にA or Bなどと言っていたら、とてもではないですがその目標は達成できません。それ故にA and Bが常に各所で叫ばれています。
戦略やセオリーに関して疑うべき場所はたくさんある
そもそもプロダクト戦略において「A or B」の取捨選択をする理由は何でしょうか。言い方は様々あるかもしれませんが、この場では「issueを定め最短距離で目標地点に行くため」だと置きます。
下記のような言葉を皆さんもよく聴かれると思います。
「スタートアップは1プロダクトに集中すべき」
「フォーカスするポイントを決めよう」
こういったセオリーはいたるところに存在しており、そして先人たちが築いてきた以上、当てはまるケースは数多くあると思います。ただ、その一方でやや言葉がひとり歩きし、我々が過度に解釈をしてしまっている部分や、そもそもの大前提が異なり当てはまらないことも多くあるのではないかと思っています。
「フォーカスすること」と「複数の検証が走ること」は共存しうる
例えば「スタートアップは1プロダクトに集中すべき」というセオリーは多くのシーンで有効です。
ただし、それは「リソースが限られている」という点に依拠していると同時に、限られた期間で「検証をやり切る」ということを意図しているのであり、その言葉通り「”1プロダクト”に集中すべき」という意味ではありません。(このブログの読者にとっては当たり前のことかもしれませんが…)
つまり、「フォーカスすること」と「複数の検証が走ること」は理論上共存しえます。
どちらも最短で行えるのであれば、1つに絞る必要はありません。
「現在の登り方が最高」とは限らない。同じぐらいの確信度のBプランを実施することが最高
また、最短距離を決めるのは「目的地=戦略目標」です。
仮に会社全体の目的地が「1年後のPMF」なのであれば、そこに向けた最短距離は「1プロダクト(1つの検証)にフォーカスすること」が最善策かもしれません。
一方、仮に「2030年に時価総額1兆円到達」という戦略目標を掲げる企業だとどうでしょうか。
現在は2023年です。目の前には勝ち筋になりそうな道が見えています。少なくとも「今は」。
しかし、それは「今この瞬間」の話であり、現在には見えていない何かがあるかもしれません。本当にその目的地に到達しうるのはもしかしたら別の道である可能性もあります。
目標が高い位置にあるということは、登り方も様々存在しており、降りかかる困難もそのルートによって異なります。より遠くの目標を追うということは、途中で「このルートは違った」と判断され振り出しに戻る可能性も高まるため、初めから複数ルートを探索することが「最短距離」へとつながります。
estieは当にそういった企業です。目指す姿をとてつもなく高い位置に置いているが故に、最終到達点に行く道筋を1つではなく複数のラインで走らせています。
場合によっては将来的にカニバリゼーションを起こす可能性もありますが、それはあえて奨励し本当にベストな道を選び取れるように複数事業、複数プロダクトを先行させています。
そして、これは「どの道も全部やる」という話ではなく、「意志ある人間がとてつもなく自信度の高い道のみを複数歩む」ということであり、ある種組織作りとも関係があります。
(よろしければ参考に弊社取締役 束原の事業責任者に関する記事もご覧ください)
最上を目指すなら平凡なチーム、平凡な方法を基準に考えない
最後に、セオリー通りにやるのは「平凡なチーム、平凡な方法」だということです。
ルールブック、プレイブックは穴が開くほど読み、実行し、それを血肉にした上で、それらの手法を超えなければ過去の偉大な企業を到底超えられません。
本気でやるならばセオリーから逸脱し、痛みを伴うリスクに対する覚悟を持たねばならない。
我々は「平凡な方法で、本当に自社の掲げるPurposeを実現することができるのだろうか?セオリー通りにやることで、より安全な道を選んでいるだけではないのか?」そんな自問自答を繰り返しながら、偉大な企業になるための挑戦をしています。
要諦は組織とポートフォリオマネジメントにある
ここまで「A or B」ではなく「A and B」の可能性やestieがなぜそれを選ぶことが合理的だと考えているかについて話してきました。
最後の章では、「A and B」を実現するために実施しているプロダクトディスカバリーや検証手法について言及します。
考え方としてはいたってシンプルな下記の3つです。
①Small team, Small win
②検証ポートフォリオ
③強い個
Small team, Small win:プレイブックよりさらに細かい単位で検証する
小さなチームで小さく検証し、大きく育てるというのは鉄則だと思います。estieではそれを更に細かく、早く進め、検証することのできる体制を持っています。
Tipsは様々ありますが、「チームの最小化」、「検証ポイントの最小化」、「検証サイクルの最小化」といったところに注力しています。
ポイントは一般的に「最小単位」と思われがちなところをさらに細かい単位に砕いて実行することです。
チームの最小化:1-2名チームからスタート
プロダクトマネージャー&セールスのタッグ、エンジニア+CSタッグなどを1‐2名からスタートさせる。
プロダクトマネジメントトライアングルが十分そろわないチームからスタートさせます。
検証ポイントの最小化:TODAYからDO
「データ入力オペレーションは1分以内で出来るか?」など即実行できる範囲で検証する。
例えば、「ある顧客セグメントに現在10ある機能の内1つに絞り低単価で提供した場合意欲は購買意欲は生まれるか」というエピックを置き、「セールスメンバー1名に1か月で5社の顧客獲得(受注)をしてきてもらう」など是非がはっきりしていて、すぐに始められるものを設定します。
検証サイクルの最小化:検証に1weekかかるのは遅い
一般的に想像される検証サイクルよりさらに細かくイテレーションを回す。
例えば、こちらの記事では「スプリントを1週間で行い検証するのでは遅い」と判断しスプリントを2daysで実行しています。プロダクトや検証対象にも依りますが、プロセスを工夫すれば今よりも検証リードタイムを1/2や1/3にすることも可能です。
検証ポートフォリオ:短期・中期・長期のポートフォリオを持つ
プロダクトはそもそもAssetでありB/Sを大きくするものです。(詳しくは みんな大好きビジョナルの竹内さんのブログ を参照 )
アセットとは将来のキャッシュフローを生み出すものであり、種を植え、育て、収穫するというサイクルが必要になります。
プロダクトポートフォリオや事業ポートフォリオを作るのと同じく、検証ポートフォリオを描いていく必要があります。
検証ポイントを柔らかいものからより骨太なものと並べ、徐々に投下リソースやあてがう組織規模を拡大していきます。
個人的には、頭の中で常に複数の種が動いている状況になっていますが、estieは個の検証の種が本当にいたるところで動いており、もはや一人では追えないレベルに広がっているので、オーナーが持ち寄ってリソース分配をする形を取っています。
強い個:採用
最後の1つはこういうと元も子もないのですが、「強い個」を採用することです。
メンバーの誰もが「あるissueの検証をリードできる」という人材であれば無数の検証を同時実行することが可能です。estieでは各社でVPや執行役員を務めていた経営メンバーが普通にプロダクトマネージャーやBizDev、セールスを担っていたり、ICとして突出した力を持つエンジニアがいることもあり、当にそれが可能な環境が整っていると言えます。
例えば、この「A or BではなくA and Bにする」というテーマについても、よくある「ビジネスサイドからの要望」や「経営陣からのトップダウン」というものではなく、検証を共に行っているメンバーから「これA and B行けますよ?」や「これ先にやりません?」と声が上がったりします。
合理性がまるでない無理難題に埋もれていくというのではなく、一見同時実現が難しく見えてしまう事柄を合理性を持って乗り越えてしまう、そしてそれを楽しんでしまうという仲間がestieには揃っています。
そして、そういった仲間を集め続けることが「A and Bの実現」に最も必要なことかもしれません。
結びに
ここまで、私がVPoPとして日々考えている「安易なA or Bに逃げないプロダクト戦略の在り方」について共有させていただきました。
ここに書かれていることは、偉大な企業を目指していたり、そこに向かって当に手がかかっている企業の皆様からすると普通のことかもしれません。しかしながら、様々な検証を同時並行で最速で実行することは容易ではなく、それを曲がりなりにも出来ているestieというチームを非常に誇りに思っています。
そして今後、事業を進めれば進めるほど、組織が大きくなればなるほど、この安易な取捨選択の誘惑は様々な所で出くわすことになるのではないかと感じてもいます。
しかし、どんな時も「自分たちの企業の存在理由は何なのか」「我々はどこに向かっているのか」と問い続け、その目的地に向かって真っすぐで淀みない、大胆な意思決定をし続ける企業であり続けたいと思っています。
estieにはそれを実現してくれる素敵な仲間が多いと書きましたが、我々が目指す高みに行くにはまだまだ仲間が必要です。(何せ目指す山からすればまだ0.1合目ぐらい。)
もしこのブログを読んで、一緒に愉快で刺激的な「A and B」な毎日を送ってみたいと思った方がいらっしゃいましたら、是非お話させてください。
では、また次のブログの機会で!