プロダクト開発における営業との向き合い方

はじめに

こんにちは。estieで事業開発とPMを担当している中村(ゆーぶん)です。

estie PM Blog Weekということで、三日目の記事を担当しております。(前回のブログはこちら→ PMとデザイナーが協働してプロダクトを最速で立ち上げるための一つのメソッド - estie inside blog

かれこれPMになってから5年近くたち、さすがに「ジュニアなので」という言い訳もできなくなってきたキャリアとなってきました。

まだまだPMとして未熟ではありますが、自分が脱ジュニアPMできたなと思う瞬間を振り返ったとき、営業チームの要望をうまくプロダクト価値に昇華できた瞬間が浮かびました。

そこで今回はジュニアPMの一つの壁であるプロダクト開発における営業メンバーとの協業についてつらつらとブログを書いていきたいと思います。

そもそも営業メンバーと付き合うことはどこが難しいのか

プロダクトマネージャーをしていると、毎週のように営業から「こういう機能がほしい」「顧客商談/定例でこういう機能の要望があった」という声を受けると思います。

プロダクトマネージャーのキャリアを歩み始めたばかりだと、営業の声をそのまま実装する期間もあるかと思いますが、一定の経験を積むとプロダクトのコア価値を理解し始め、営業・顧客の声をそのまま鵜呑みにするわけではなく、噛み砕いたうえでプロダクトロードマップに従った優先度を決めていくこととなるかと思います。

プロダクトロードマップ自体は各期毎に経営者もしくは事業責任者と議論の上決定されたものですので、プロダクトロードマップと比較すると各顧客の要望をすぐに叶えることは困難になり、どんどん対応されない顧客の声だけが積まれていく状態になる姿をよく見ます。

顧客の声が全てではないので、優先度を考慮してすぐに対応できないものがあったり、時にはプロダクト価値を考えて対応しないという意思決定がなされることはあり得ると思います。

しかしながら顧客の声が積まれるだけ積まれて優先度がずっと上がらない状態は、顧客の声が反映されないプロダクトという状態とも言えるため、決していいプロダクトマネジメントができているとは言えないと個人的には考えています。

例えば顧客の声が積まれるだけで解決されない状態を営業メンバーの目線で考えるとどう見えるでしょうか。

プロダクトマネージャーももちろんプロダクトや顧客と向き合っていますが、face to faceで各顧客と一番向き合っているのは営業であることは間違いないです。営業メンバーは売上を立てるためにも目の前の顧客だけに向き合い、その顧客の声を拾いそこに自身が「こうすれば価値を理解してもらえる」と考えたうえでフィードバックをくれるのです。そういったプロセスを経て得た声が無視されるということは、営業としては面白くはないはずです。

プロダクトロードマップに従った開発がされているとはいえ、営業の声を無視することは営業からの信頼を失いますし、結果的には顧客の信頼を失いかねません。

顧客価値だけを考えてしまうと意外にも顧客・営業の信頼というポイントが漏れてしまうことがあり、極端な話をするとコアな価値が未熟なプロダクトでも、すぐにその顧客の声を反映する姿勢を見せていると契約してもらえたり増額で契約更新してくれるケースも間々あるのです。

プロダクトロードマップに顧客の信頼を得る(希望に応える)というエッセンスを加えられるかどうかは脱ジュニアPM要素の一つと言えるのではないかというのが私の意見です。

PMの考えた機能/施策ってそんなに当たらない

どのプロダクトも基本的には顧客のフィードバックを見ながらPRDを整理してPMが要件を整理、開発ディレクションを行うことが多いと思います。

しかしながら、そうして整理した上で実装した機能ってすべてがすべて成功するでしょうか?

私は天才PMではないので、正直に言うと失敗することが多いですし、もしすべての機能を当てられるPMが世の中にたくさんいるなら、テクノロジーやデータの活用が様々な産業にもっと根付いているはずです。

つまりはどんなに著名なPMでも打ち出す施策はそこそこの打率なのです(多分)。

一人あたりの打率に限界がある場合、どうすれば成功する機能を打ち出せるにかというと、シンプルに打席数を増やすことのみとなります。

打席を増やすにはどうすればいいかというと、PMの打席を増やすにも時間も脳みそも有限なので、打席に立つ人を増やすことが最も効率的なのです。

では誰に打席に立ってもらうのが良いのかというと、顧客の声を聞くことができ、プロダクト価値を高めるために頭を使える人、つまりは営業メンバーが最も適任なのです。

営業メンバーはすでに打席に立ってくれていますので、PMは打席にどんどん立つというより、彼らが打率を上げたり打席に立てる数を増やせるようなサポートすることが、全体としての打席数を増やすことに繋がります。

もちろん営業の重視するポイントと、プロダクト開発において重視するポイントは若干異なります。その差分を埋めるような共通認識を持つことが事業運営においては重要となり、そここそがプロダクトマネージャーの腕がなるところです。

大事なのは役割が違えどプロダクトを一緒に作っているという意識

前章でも記載しましたが、営業も目の前の顧客に重きを置き、プロダクト価値を高めることを考えてくれています。なのでプロダクトマネージャーとして重要なのは一緒にプロダクト開発をしているという意識を持てるような環境づくりに徹することなのです。

例えば具体的な施策として、私は下記の施策を徹底して行いました。

  • 営業にもプロダクトビジョンやプロダクトロードマップを説明し意見を求める
  • プロダクトメンバーに事業計画(売上計画)を説明し、いつまでにいくらでどんな顧客に導入してもらう必要があるのかを理解してもらう
  • 営業とエンジニアのセットで商談に出てもらい、二人でカバーしながら商談を進めてもらう(PMは介入しない)
  • 定期的に営業<>エンジニアで1on1をしてもらう(PMは同席しない)
  • 営業やエンジニアがその顧客を思って出した施策は否定しない

最初のうちはPMを介さず機能が出ていくことに焦りが出たり、止めたくなる気持ちが湧くこともあるかと思いますが、PMの使命はプロダクト価値を上げることなので、PMがすべての機能に介入することはHowであり必ずしも重要なわけではないのです。

そして皆様のいらっしゃる会社には優秀な営業やエンジニアがいると思いますので、PMが考えるよりも結果的にプロダクト価値を上げる機能が打ち出されることが間々あるでしょう。(私の担当プロダクトはほとんどがこれでした)

ただし打席が増えることはもちろん結果的に全体のプロダクト価値を下げてしまう機能となってしまう確率も上がります。(本件はPMがすべての機能に介入しても発生はし得ますが)

その時に持つべき意識は「間違ったら機能を消せばいい」という少し楽観的な意識です。

当たらなかった機能は消せばいいだけの話

上記の意識を持つことは簡単そうに見えて結構難しいと思います(私は結構難しかったです)。

というのもリリースした機能を消すということは、PMとして立案した仮説が外れたことを意味し、消すことを認めることはなんだか自分のミスを認めるようで少し悔しいという気持ちがあります。

そしてなによりも一生懸命実装してくれたエンジニアに申し訳ないという気持ちが湧くというのも大きな要因の一つです。

かくいう私もそんな気持ちを持っており、なかなか当たらなかった機能を放置していたり、それが続くと次の打ち手を考えるだけで実行できない時期がありました。

しかしとある立ち上げフェーズのプロダクトを開発している弊社の一人目スタッフエンジニアのkenkoooo氏にこんなことを言われました。

「僕らエンジニアは顧客の価値になる機能を作りたいだけで、きれいな機能を作りたいわけではないんですよ。あと僕はすぐ作れちゃうのでとりあえず作ってだめだったら消して次の機能を作ればいいだけじゃないですか」

細かな表現は異なるかもしれませんが、上記の意味で理解した私は目からウロコというか視界が開かれた感覚に陥りました。

これはスーパーエンジニアだから言える言葉だとは思いますが、一生懸命つくっても使われないで負債になる機能が残っている方がエンジニア的には嫌だとのことで、そりゃそうかという気持ちになり、気持ちが非常にポジティブになったことをずっと覚えています。

上記により私は積極的に打席に立つ機会が増え、結果的にはより多く顧客価値につながる機能を導く事ができたかなと自負しています。

そして上記の思考は営業メンバーにも適用できるのです。

営業メンバーはPM以上にエンジニアや開発事情から遠いため、結果使われない機能になったときは申し訳ないという気持ちを持つ傾向がより強いです。でもその中には想定を超える宝が眠っている可能性があり、優れたPMならそれをしっかり見つけるために「だめだったら消して次やればいいだけです」という声をかけ、どんどんプロダクト開発を盛んにする雰囲気を作ることが重要だと私は考えます。

大事なのは失敗しないことではなく、打席数が増えることです。

どんな場所からもプロダクト価値を高めるための意見が湧いてくる環境を作ることこそが、プロダクトマネージャーしかできない仕事だと私は考えています。

最後に

大事なのはプロダクトマネージャーとして施策の精度を高めるというよりも、自分より優秀ないろんな人の脳みそをつかって施策をどんどん出すことだと私は考えます。(精度を高めることももちろん大事です)

営業のフィードバックと向き合うには、プロダクトのコアに関わる施策に目を光らせ、それ以外は仲間を信じ、皆が積極的な気持ちになれるようにサポートすること。当たらなくても次の打ち手を止めないように彼らのモチベーションの下がることは決してしないことなんじゃないかというお話でした。

今回も気持ちによったブログとなってしまいましたが、プロダクトマネジメントに向き合っていくと、本質的な部分は気持ちというか願いみたいな部分なのかなと思っています。

私もまだまだ悩んで試行錯誤しながらプロダクトマネジメントをしていますので、ご意見とか一緒に話してみたいという方、是非よろしくお願いいたします!

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