estie取締役の束原です。
この度estieはシリーズBラウンドで28億円の資金調達を発表させて頂きました。
これにより、当社がEquityおよびDebtでお預かりした資金は累計60億円を超え、改めて身を引き締める思いでおります。
スタートアップという激変する空間に身を置いているとあまり意識することのない一つの節目なので、私も文章をしたためることに致しました。
estieを応援して下さっているお客様へ
estieは今年の12月に創業から丸6年を迎えます。
私が入社したのは今から4年半前ですが、今でも記憶に残っている当時の情景は、20代の若干9名が「業界/社会を良くしたい」という熱量だけを武器に、ホワイトボードの前で議論し、一心不乱にコードを書いている部室のような空間でした。当時は一部のお客様にお約束していたプロダクトリリースの納期に間に合わず、叱咤激励を頂いたこともありました。
私自身、estieに入社後は営業およびサービス導入企業様のご支援を担う部門の責任者として、半分以上の時間を最前線で過ごして参りましたが、今のestieがあるのはひとえに応援してくださるお客様のおかげだと感じています。
ともすると「業界のディスラプターになるのではないか」と見られてしまうシーンもあった中、各企業の先駆的な推進者様とは「この業界のポテンシャルや実現したい未来像」について議論をさせて頂き、煩雑な決裁プロセスを乗り越えてサービス活用や協業の意思決定をして頂きました。
中には、サービスのご紹介はそこそこに「君達はどのような未来を作りたいのか。なぜそのように考えるに至ったのか」を商談で問われ、半分以上の時間をその議論に費やさせて頂いたこともありました。
そのような貴重な機会を通じて、estieのサービスは勿論、会社そのものを育てて頂き、本当に少しずつの進捗ではありますが、今もestieは前を向いて事業を続けることができております。
パンデミックが落ち着いた今年4月、「不動産DXカンファレンス」を完全オフラインで開催させて頂きました。
私が前職で経験させて頂いたアメリカ駐在時に感じた日・米の差分として、①不動産の流動性 ➁人材の流動性 ③知恵と情報の流動性に関する大きなギャップがあります。
それぞれ相互に関連があり、いずれにおいてもアメリカが大きく上回るわけですが、特に3点目は日本でも最初に変化を生み出せるところだと考えていたため、このカンファレンスは何とか成功させたいという思いで挑みました。
正直に申し上げれば、当社として初の試みであったにも関わらず1,000名以上の方にご来場頂くことを目標としたことにより、当日も東京ミッドタウンのスタッフ控え室は不安に包まれていました。
しかしながら、業界をリードする豪華な登壇者の方々にご協力を頂いたおかげで、最終的に合計1,200名超の方にお越し頂き、この業界のDXへの関心の高まりと、変革の予兆を強く感じました。
このカンファレンス自体も、未だ大した実績を持たないestieを信じてスポンサーおよび登壇して下さった方々のおかげで実現することができたものです。
改めて、ここまでのestieを応援して下さった業界関係者の皆様に、この場を借りて心より感謝申し上げます。
DXの先へ
一転して話は変わりますが、ここから日本の不動産業界は大きな転換期を迎えることになると私は確信しています。
言わずもがなですが、AIの大きな波が押し寄せています。遅かれ早かれ巻き込まれることになるこの波にどれだけ上手に乗ることができるかが、5年~10年後の成否を占うと考えています。
まことに個人的な感覚ではありますが、アメリカを中心に直近起きたAI技術の著しい進展が無ければ、国内不動産業のDXは10年以上の年月をかけて、漸次的な進歩をしていたことと思います。
実際この重厚長大な産業にはそれだけの余白と取組意義があり、5年前に私がestieに入社する時に持っていたプランは、その長く困難な道のりをいかにスピーディに歩むことができるか、というものでした。
しかしながら、漸次的だと見込んでいた予想を大幅に上回る変化が、想定よりも10年早く目の前に現れており、我々は大きく意識および行動の変容を求められています。
過去10年間で行われてきたDXの営みを第1期とすれば、LLMの登場により確実に次のフェーズに差し掛かっていると感じます。そしてこの第2期は、第1期の何倍ものスピードで進捗し、何倍あるいは何十倍ものインパクトを与えることになると予想しています。
不動産ビジネスは、AIとの親和性が著しく高い領域だと日々感じます。
人材事業よりも定量で物事を判断することができ、企業経営よりも変数が少なく、CFに影響を与える事象やデータはチューニングを重ねることで、ある程度まで完成したものとして、整理・表現することができます。
これまで人間が独力では成しえなかった意思決定、生産性の向上が実現できる可能性がある中、その未来に大きくBetすることで、世界に後れを取り戻し、日本経済を底上げする千載一遇のチャンスが来ていると考えています。
アメリカと比較しても仕方が無い、という見方もあるかもしれませんが、彼らが過去30年間で築き上げてきた確固たる礎が日本には無いからこそ、前向きな変化を勢いよく起こせる可能性があります。
特に若い世代が中心となって、この変化を追求していくことが求められていると思います。
おわりに
estieは、曲がりなりにも過去6年間不動産テックの前線を走ってきた企業として、これまで以上に難しい課題に、一層果敢にチャレンジにして参ります。
この記事を書いている本日時点において当社はまだ利益を出していない企業ですから、社会に対して新たな価値を創出しているとは自信を持って言えません。ですが、これまで業界の皆様に頂いた支援を元に、必ずestieにしか作りえないサービスをご提供し、皆様に還元して参ります。
至らぬ点もあろうかと思いますが、引き続きestieの挑戦にご期待を頂けると大変嬉しいです。