estieが追い求める「Whole Product構想」-マルチプロダクト戦略から1年後の今-

自己紹介と概要パート

 約半年ぶりの投稿。takuya__kuboです。 

入社してから半年間激動でした。私久保はというと、昨年の11月14日にVP of Productsに就任し、「Whole Product構想」を掲げ、estie全体のプロダクト戦略をカタチにしていくミッションを担わせていただいております。

本日は、昨年1月に全社として掲げた「マルチプロダクト戦略のその後の進捗」と「Whole Product構想の実態」について共有したいと思います。

マルチプロダクト戦略のおさらい

 estieの掲げるマルチプロダクト戦略は、

1. 課題を解決するバリューチェーンの拡大
2. オフィス以外のアセットタイプの拡大
3. 海外市場をはじめとしたエリアの拡大

という3軸でプロダクト群を積み上げていくものです。

代表の平井のブログでは下記のように書かれています。

estieが目指しているのは巨大な商業用不動産市場全体のDX/IXであり、そのためのイシューはてんこ盛りです。お客様の業務プロセス全体をestieのプロダクトで10倍効果的に実施できるようにしていく。そして最後にはオフィスを探すエンドユーザーを含めて、供給と需要の両面から不動産市場のデジタル化を推進していきます。

オフィス以外のアセット、例えば物流施設やデータセンターについても同様に需要と供給のデータ、業務システムを顧客起点で作り込んでいく。そして日本だけではなくアジアをはじめとした海外市場への拡張も含めて、3軸でプロダクト群を積み上げていくことがマルチプロダクト戦略の骨子です。

※詳しくは下記のブログを是非お読みください www.estie.jp

これは我々の一つの学習でもありますが、「商業用不動産市場における課題は非常に深く複雑であり、シングルプロダクトの提供では解決しきれない」ということからスタートしています。


現にベンチマークをしているアメリカでは、各々のバリューチェーンごとに別のプロダクトが勃興しており、それぞれがユニコーンやそれ以上の企業になっています。

そういった意味でも商業用不動産領域を解決していくうえで、「マルチプロダクト戦略」という方針は極めて合理的な意思決定だと考えています。

「マルチプロダクト戦略」から「Whole Product構想」へ

 上記のマルチプロダクト戦略は、「estieはこういった方針でマーケットをより良くする」という言わば「経営戦略」です。

私自身がestieへの入社を検討する際にもこのマルチプロダクト戦略に関する話を聴き、その展開は非常に魅力的に映りました。 商業用不動産というそもそものマーケットがとてつもなく大きい領域で、プロダクトによる取り組む余地がこれほどまでに広がっているという事実に非常にわくわくしたことを覚えています。


一方、可能性の広さは不確実性の大きさの裏返しでもあります。

僕が入社した8月時点では、「目指す戦略のスコープが広く、優先順位やロードマップが描きにくい」という状況でした。この課題感は何より経営陣が認識しており、ブレークダウンしていくことの必要性を合意し、その具体化を進めていくことになりました。


その具体化の過程で、「プロダクトとしてどのように成長していくべきか」という「プロダクト戦略」のレイヤーを設定し、打ち出したのが「Whole Product*構想」です。


*ここでいうWhole Productは下記の考え方でいう、「理想プロダクト」を指します。

概念意味
Core Productコアプロダクトコアになる製品・サービスであり、一番最初に市場に出すシンプルな初期のプロダクト
Expected Product期待プロダクト顧客が初めて製品・サービスを購入したときにイメージしていたもの。少なくともあれができる、これができる、最低限これはついているだろうと期待するプロダクト
Augmented Product拡張プロダクト各顧客が製品・サービスを購入する目的を実現するために、提供されるさまざまな機能・サービスを含むプロダクト
Potential Product理想プロダクト自社の付属品や関連サ―ビスだけでなく、サードパーティの連携サービスなどが増え、製品・サービスを活用することで、顧客が望んでいた目的を果たせるだけでなく素晴らしい顧客体験を得ることができるプロダクト

これは、マルチプロダクト戦略の3つの軸のうち、特に「バリューチェーン拡大」に特化*したものです。

「最も解像度の高いオフィス領域においてバリューチェーンを横断したWhole Product」を作り上げ、それらをアセットタイプ・海外市場と展開していくことを想定しています。


*一方、「アセットタイプ拡大」と「海外展開」について全く進捗させないというわけではありません。特に「アセットタイプ拡大」については、オフィス領域のプロダクトで培ったノウハウや顧客基盤を活用しやすい分野でもあるため、オフィス領域のWhole product構想と並行してプロジェクトを進める予定です。

estieのWhole Product構想とサービスラインナップ

 今回、Whole Product構想を通じて整理した内容が下記のスライドになります。 パッと見ていただくだけでもその提供すべきプロダクトの多様性がご理解いただけるのではないでしょうか。

 「正直色々ありすぎてちょっとわからん」という方、その言葉お待ちしておりました。


 少し分類すると、これは「3つの業務領域」とそれを支える「プラットフォーム領域」に分類することが可能です。各領域の中でも「プロダクト」と呼べるサイズのものが存在しており、規模は非常に大きいのですが、事業とプロダクト群の展開はこの領域ごとに行われると想定しています。

このように業務領域ごとに顧客に価値を提供していく一方で、マルチプロダクトを展開する企業は「シングルプロダクトを提供する企業との差異は何か?」という問いに答えていく必要があります。


それはつまり「1社が複数プロダクトをバンドルで提供することの価値」を明確にするということであり、最近話題に上がっている「コンパウンドスタートアップ」的な考え方です。

コンパウンドスタートアップについては様々な方がすでに記事にされておりますので詳細はここでは割愛しますが、コンパウンドスタートアップが提供するプロダクトの特徴は大きく3つあります。

  • 基盤データとアーキテクチャ
  • 基盤機能(ミドルウエア)
  • 共通UX-UIかつ業務に適した多様なFeature

SaaS新世代の野望〜コンパウンドスタートアップと戦略的ポジショニング〜|神前達哉(ALL STAR SAAS FUND)

これらが提供されることで、コンパウンドスタートアップではシングルプロダクトを複数導入するのと比較して、「ユーザー体験としての顧客価値」「スケールメリットとしての事業価値≒コスト削減という顧客価値」の双方が実現されます。


コンパウンドスタートアップは我々が目指す姿も近い形にあると考えていますが、estieの提供するWhole Productがユニークなのはバーティカル領域ゆえの「データ共通化の範囲の違い」があげられます。


ホリゾンタルな領域、例えばHRデータはあくまで自社データを自社で使うことを想定しています。一方、バーティカルな領域、我々でいえば商業用不動産領域のデータは特定の企業のみに絞るのではなく、業界全体の基盤となることを模索しようとしています。 すなわち一般的なコンパウンドスタートアップの次の水準を想定しています。

どういうことか、少しだけご紹介します。

商業用不動産のコアデータ:土地と建物

 コンパウンドスタートアップは共通基盤となるデータが必要不可欠になるというのが前提ですが、我々は、商業用不動産領域におけるコア・データを「土地と建物(それに紐づく様々なデータ)」と仮説づけています。

この「土地と建物」は、現実世界でオブジェクトとして存在しています。同時にそれらはユニークな存在であることから、どの不動産企業も「同じデータ」として扱うことが可能です。


しかしながら、現在の不動産業界のデータ管理はそのようなことが実現できる体制になっていません。

なぜなら、オフィス業界には基盤となるデータベースが存在しないためです。


コミュニケーションはFAXや電話などアナログコミュニケーションが中心なこともあり、各社バラバラのデータフォーマットを使いデータを管理/更新しています。結果、最新の情報を取得するためには基本的に人が介する必要が生まれています。

家を借りる時を想像いただけるとわかりやすいかと思いますが、常に入居者の需要状況と住宅の供給状況は揺れ動きます。

「ちょっと悩んでいたらあの家借りられちゃった….」ということはよくあることではないでしょうか。

同様のことが商業用不動産領域にも起きており、情報の更新は非常に活発に行われ、常に最新の情報が望まれます。


そういった状況にもかかわらずデータ基盤がないことは、非常に各社の業務を苦しめています。

そこで、我々が「業界全体で活用可能な共通データ基盤」を構築し、提供することで、「取引コストの最小化」を進め、不動産各社の収益機会の最大化を実現出来るのではないかと考えています。


また、その先に「土地と建物」がどのように活用され、どのように運用され、収益化されているかがデータを起点に明らかになることで、より高次元の価値提供が行えるのではないかと考えています。


これは「その企業でしか必要とされないデータ」を起点にする従来のコンパウンドスタートアップはまた違った世界を目指していると言えます

我々の現在地とこの先

 ここまで大言壮語を言い続けてきました。しかし、我々は本気でコンパウンドスタートアップを目指して向かっています。

その中で、我々の現在地と今後の展開についてお伝えし、本ブログを終えたいと思います。


現状、我々はコンパウンドスタートアップとして、既存プロダクトの強化に加え、マルチプロダクトの一歩目となる「リース業務支援」のプロダクトを立ち上げ、賃貸業務領域をより深く支援すべく展開しています。


そこに加え、今後のコンパウンドスタートアップとしてのマルチプロダクト展開速度の向上を見据え、プラットフォーム領域となる「データ基盤構築」、「共通ミドルウェア」の強化を進めていく予定です。

「色々話しているが、これからやる予定のことばかりじゃないか」って?

はい。その通りです。

ご覧の通り「余白」しかありません。

しかしながら、我々の現戦力で言うとこの3つの取り組みが最高出力であり、限界と言えます。

(しかも、上記はあくまでオフィス領域であり、このほかにも物流や住宅など様々なアセットタイプが存在し、その先にはエリア展開まで存在します)


実は最近、採用活動をしていると、estieは「いいチームだ」「戦略がしっかりしている」に続いて「正直、入社しても自分がやることがないのでは?」と言われることがあるのですが、上記の通り全然そんなことはありません。


僕らは、まだシリーズAのスタートアップですが、コンパウンドスタートアップとしての可能性を追っています。そして、目の前の商業用不動産領域はとてつもなく大きく、解くべき課題は山積みです。社内では時価総額1兆円を超えるぐらい産業を支える企業を目指そうと話しており、正直そこからすれば本当にまだまだです。


そんな途方もない道のりですが、「誰も解き明かしたことのない課題」への挑戦は非常に刺激的あり、我々も正解がない中、いろんな仲間の手を借りながら進んでいます。


そして、副業や正社員問わず、もっと多くの「志ある仲間」が必要です。 もしestieの創り上げるコンパウンドスタートアップに少しでも興味を持った方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけください!お待ちしております。


今回は、昨年1月に全社として掲げた「マルチプロダクト戦略のその後の進捗」と「コンパウンドスタートアップを目指し掲げたWhole Product構想」について共有させていただきました!

今後も本テーマに関して、定期的に発信していきたいと思っています。 まずは、上記にまつわる技術テーマに関してVPoEのShin Aokiから発信してもらう予定ですので、そちらもお楽しみに。


引き続きestieにご注目ください!よろしくお願いいたします!

www.estie.jp

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