元不動産屋が第一回TOPSIC SQL CONTESTに参加してみた話

初めに

こんにちは、estieの田中(@rikutanak)と申します。 この8月に8名の大変心強い方が入社して凄いなぁ(小並感)と思っていたのですが、自分もこの8月でestieに入って3年を迎えていたことに気づいた今日この頃です。社内的には結構初期からいるにも関わらず実はこのinside blogに投稿するのは今回が初めてとなります。(ごめんなさい、以前のadvent calendarにはたまにしょうもない記事を書いているので許してください) 今回この記事では満を持して私の3年分の軌跡をかいつまんでお伝えするので、ぜひご一読ください!!!

3行でわかる自己紹介

  • 新卒で住友不動産に就職。5年強身を置き、国内の営業活動や海外の不動産投資活動に従事
  • estieに1人目ビジネス社員としてジョイン。2人目ビジネスメンバーが参画するまで、初期の事業開発〜営業〜CSを幅広く経験。IT業界っぽさを出したくて伊達眼鏡と髭を欠かさない
  • 今年からプロダクトマネージャーに転向。主力プロダクトである不動産データ基盤「estie pro」のグロースに従事

今回お話しすること

  • 不動産業界出身・ビジネス畑だった私がSQLコンテストに参加した戦績
  • 参加するまでに至った経緯やestieのカルチャーについて

幸いビジネス側・プロダクト開発側両サイドに足を突っ込んできましたので、どちらの方にもお楽しみいただければ幸いでございます。

第1回TOPSIC SQL CONTESTに参加してみた話

社内では最近Rustをゴリゴリ書けるツヨツヨエンジニアが参画したり、競技プログラミング勢が増えAtCoderで盛り上がったりしていますが、業務で書ける言語はSQLしかない私は指を咥えて眺めるしかありませんでした。

Indeedで働き納め、余生はestieで始める - estie inside blog

そんな中、先月7月20日に記念すべき第1回TOPSIC SQL CONTESTが開催されました。これは参加するしかない!ということで、満を持してエントリーしました。

結果

結論から申し上げると、388人中59位でした。

無事全問AC(Acceptedの略、正しいプログラムであるという判定)でしたが、普段業務で主に使うMySQLとSQLiteの挙動の違いに手間取ってしまい、時間を結構ロスしてしまったのが心残りです。次回はもう少し頑張れる気がします(するだけ)。 社内でもSQL好きが参加しておりまして、9位、13位、35位とみんなすごい….

こうやって身近な人と盛り上がれると、とても楽しいですね。このようなコンテストに参加するのは初だったので、新鮮な経験でした。

なんで、私がSQLに!?

ということでコンテストではまずまずの結果を出すことができたのですが、ここからは本題であるそこまでに至る私の道のり(自分語り)や、estieのカルチャーについてお話しさせていただければと思います!

estieに入るまでの私

大学は経済学部を修了し、新卒では不動産会社にしっかり文系就職しました。伝統産業はDXが遅れているなどと言われていますが、御多分に漏れず紙と電卓が基本、打ち合わせにPCを持っていくなどなかなかない(そもそも気軽に持ち歩ける代物ではない)業界で過ごしてきました。そんな私から見るとIT業界は時代の最先端をいく華々しい世界であり、また遠い世界でもありました。プログラミングの知識も疎く、なんかやたらプラスがつくCみたいなやつがある、Rubyとかいうのが最近流行っているらしい(そもそも言語ってなんやねん)くらいの感覚でした。もちろんSQLなんて聞いたこともありません。excelこそ全てでした。

そんなことより足を使って泥臭くやってなんぼ、という考えだったのですが、社会人3年目から海外事業部に配属となり、世界中で東京以外で不動産投資を行うべき国/都市を探す、というのが私のミッションとなります。最終的に北米に1年半、ヨーロッパに半年、南アジアに1年半ほど滞在し、マーケットの調査から投資の実行までを行うことになるのですが、どこの国でも既存のオペレーション・知見がない中から始まり、最終的にはその国に行ったことのない国内の経営陣を説得しなければなりません。そんな中、私を助けてくれたのは現地の文化・環境から不動産市場までを端的に表すデータであり、そしてそのデータを提供する不動産テック系のサービスでした。(海外では不動産データのデジタル化が進んでおり、例えば欧米で不動産データサービスを提供するCoStar社は2022年8月現在、約2,600億円の売上を誇る会社となっています。)

2019年、インド・ムンバイでの不動産投資検討を行なっていた最中、代表の平井から日本の不動産市場のデジタル化に挑戦するスタートアップを起業したと誘いを受け、それを日本で自分で作る側に回るのはとてもチャレンジングだと感じ、estieに入ることになります。(ちなみに東京の不動産市場は世界的に見ても圧倒的巨大さを誇っています。かのNYやロンドンよりもオフィスの集積が進んでおり、世界的なプレゼンスはまだまだ高まる余地があると確信しています)

estieに入ってからの私

1人目ビジネス系社員かつドメイン出身者として参画した私は、ビジネスに関わること幅広く全てやることになります。企業のオフィス探しを支援するweb プラットフォーム「estie」では企業の移転の要望に合った物件を提案いただける仲介会社様と提携をしたり、今の「estie pro」のデータベースを構築するための事業開発から初期の顧客獲得などなど。 そんな中で、様々なやりたいけどできないことに遭遇します。例えば、仲介事業者が一堂に集まるプラットフォームだからこそ、提案スピードや提案内容がテナントの反応にどう繋がるかを比較して分析ができます。でもそのためには、提案した日時とuserのログを見てみたりする必要があります。最初は社内のエンジニアに依頼して、SQLを叩いてもらいそれをexcelで加工したりする形だったのですが、そのリードタイムを短くしてより顧客価値を爆速で開発していくために自らSQLに手を出すことになります。 また、個人的なターニングポイントとなったのは、様々なメディアに不動産市況に関する記事を寄稿したこともあるかなと思います。

出典:週刊エコノミスト「コロナ激変 不動産」

不動産データを豊富に持つestieだからこそ、このような依頼を受けることがよくありますが、不動産データの分析は簡単なようで実はとても複雑です。例えば、オフィス市場を把握するための指標として「空室率」というものがあります。概念自体はシンプルで、「今世の中に存在するオフィスの床面積のうち、どれだけの割合が企業の入居していない空室となっているか」という内容で、空室率が上がるということはオフィスを借りたい需要よりもオフィスの供給が上回っており、マーケットとして軟化していることを表します。

複雑になる要因はいくつかありますが、まず分析にそのまま使えるデータセットが存在していない、ということが挙げられます。空室率の例で言うと、「今世の中に存在するオフィスの床面積」を算出しなければなりませんが、不動産業界には「廊下や駐車場も含む建物全体の面積(通称延床面積)」しかないことが多いです。ですので、そのような場合は延床面積からオフィスとして使える部分(いわゆる専有部)の床面積の量を推定しなければなりません。そして、その建物全体に占めるオフィス床面積の割合も物件の規模によって異なる(大きい物件ほどエントランスや店舗、共用設備などを豊富に作るなど)ので、規模帯によって違う係数を設定しないといけません。

また、細かい除外条件が実は存在していたりします。例えば新築の物件は空室が多いまま世に出ることが多いので、新築が多いタイミングだと個別性に左右されて空室率の推移を把握しづらくなります。そのようなノイズを排除するために新築の物件は排除したりします。

さらに、不動産は個別性が強いのが特徴です。規模が大きい/小さい、渋谷区/千代田区、新築/築古、などその物件や立地の特性によってそれぞれ市況に対して違う動きをします。そのような際に適切なセグメンテーションを行わないと、頓珍漢なアウトプットになってしまうこともあります。

空室率の計算についてはエンジニア目線でも解説の記事があるのでぜひこちらもご覧ください。

現役エンジニアが空室率と潜在空室率を解説 - estie inside blog

そのような中で社内のデータ分析系のタスクを色々こなしているうちに、いつの間にか社内でトップクラスにSQLを書いている人になってしまいました。かのLayerXの福島さんも「SQL叩けないやつはBizdev名乗るな」と言っていますが、それを地で行ってた感じとなってました。

estieは不動産関連データはもちろんですが、それに限らずその不動産にどのような企業が入居しているかという情報や、その会社の業績情報等も保持しています。それらを組み合わせて、今まで可能ではなかった分析を行い、新しい価値を提供しています。今後はそのようなデータがよりestieに蓄積されていくのでよりヒストリカルな分析なども可能になっていくでしょう。ワクワクが止まりませんね。

その後のestie

事業も会社も成長し、2021年頃から続々強いビジネスメンバーが入社を決めてくれ、田中ビジネス1人体制は終わりを迎えます。しかし、ビジネス系でもSQLを書くのが当たり前感を醸成してしまったがために、その後のビジネスメンバーはもちろん、インターン生でもSQLを習得する文化が出来上がりました。顧客のプロダクト利用状況をログで解析して顧客の活用支援を行なったり、顧客の業務課題に合わせたデータ分析を提案したり。 もちろんチームとしてそのようなビジネスメンバーのSQL力向上をサポートすべく、エンジニア主導でSQL勉強会を開催していたりします。なぜか、私は講師側でした。

SQL勉強会の様子。実践的な内容になるよう心がけてました

結果、社内slackではエンジニアに限らずSQLの会話がそこら中でなされています。

データベースを理解して指示を出すビジネスメンバーとダッシュボードを量産するインターンの日常会話

まとめ

estieの特徴として、学習意欲/知的好奇心が高く既存の経験にとらわれずに新しいことに挑戦する人が多いなと感じています。不動産業界、引いては社会の価値創造を支えるために、ビジネス<>エンジニアといった垣根なく事業に愚直に取り組んでいます。

inside.estie.co.jp

社内では毎週ペースで勉強会が開催されたり、ハッカソンを行なって今までにないソリューションを作ってみたり、日々新しいチャレンジに絶えない環境です。

そんなこんなしているうちに、estieに入るまでエンジニアと会話したこともなかった私も、今年からプロダクトマネージャーとして新たな領域に挑戦しつつ、estieのPurposeである「産業の真価を、さらに拓く。」ために日々奮闘しています。

最後に

estieは今まで網羅的なデジタルな情報が存在していなかった巨大な商業用不動産業界において、そのデータ構造から業務プロセスまで、デジタルな基盤においてモデリングすることに挑戦している会社です。それは途方もない挑戦でありまだまだ道半ばである一方、その目標を達成した先の社会的意義もまた計り知れないものとなっています。そして、その世界を実現するために様々なバックグラウンドのメンバーが続々増え、チームとして一丸となって取り組んでいます。 少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひカジュアル面談にてお話ししましょう!

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