一物三価? 不動産業界に身をおく楽しさ

これは estieのカレンダー | Advent Calendar 2021 - Qiita 2日目の記事です。

estieで事業開発を担当している齋藤です!

私はこの9月にestieにjoinしましたが、社会人になってからというもの、この不動産業界が大好きで(いろいろと立ち位置は変えてきましたが、、、)業界一筋で今までやってきました。

estieの現在の主な事業フィールドは事業用不動産業界であり、簡単に言うと法人間の大型の不動産取引(ビルを借りたり、買ったり)を対象としているので、多くの方からすると馴染みのない(目立たない)話かと思いますし、併せて他の業界の方々からすると???な商慣習がきっと多いのだろうと思っています。

この記事では出来るだけ不動産業界のことがわからなくてもその魅力が伝わるよう、自分自身がどんなところに不動産という業界(商材?)に魅力を感じているのか?をまとめてみました。

不動産価格:一物三価?四価?五価? なんでそうなるの?

経済学には「一物一価の法則」という、同一時点・同一市場では、同質の商品には一つの価格しか成立しないという有名な原則があります。(※現実世界には多くの反証材料がありますが、ここでは説明は割愛します。気になる方は当社CEOの平井に聞いてください)

一方で、不動産業界においては「一物三価」という有名な業界用語があります。 これは同じ対象不動産における評価額は、公的指標においてすら下記の三種類(基準地価、固定資産税評価額、相続税評価額)が存在するということを示すもので、要するに「不動産の評価は一つの指標では判断できないのだ」という理解を私はしています。 (調べたところ「一物四価」、「一物五価」という言葉もあるようで、この時点でかなりの揺れを感じます)

この世に一つしかないから?不動産取引を巡っておこること

なぜこのような価格形成がなされるのか?それは「この世に同じ不動産は2つないから」という事情が一番大きいのではないでしょうか。

例えば、皆さんが家(例:マンションの4階一室の403号室)を借りたり買ったりするときを想像していただければと思うのですが、自分が403号室の内見をして「ちょっと高いけど気に入ったな」と思ったその日に、別のお客さんも403号室を検討していたら皆さんはどう考えるでしょうか?

  • お客である自分の方が偉いから価格交渉しよう(←他にもお客さんがいる場合、売り手はそういう人を相手にしません)

  • 同じマンション内に別の部屋ないかな・・(←部屋の位置が変われば採光・間取り等、厳密にいえば差異があるけど本当に満足できますか?)

  • 近くで似たような物件が市場に出てくるのを待とう(←そう都合よく物件は出てきません)

  • 高いから値段が下がるのを待とう(←本当に下がるのかは誰もわかりません。もしかしたら上がるかも、、、)

不動産取引は「売り物(賃貸物件)はこの世に一つだが、買い手(借り手)は複数」という状況が常にあり、売り側の力関係が相対的に強くなるケースが間々あります。 それに加え、多くの買い手は例えば個人が家を住み替えたり、企業が本社を移転したりする一世一代のイベントの中で速やかに意思決定をせざるを得ないというケースが頻出するため、成約価格はその時々の状況下で大きくバラツキが発生することになります。(相場より大分高く売れたり・売れなかったりする)

プロはどうやって不動産取引しているのか

これはプロとプロとの間における取引でも変わりません。もっというとより複雑怪奇になります。オフィスビルを購入する際の例で見てみましょう。

  • 価格が非常に大きい(最低数億円くらいからの取引)

  • 価格のベンチマークとなる指標が不在(または非常に限定的)

  • 市場・取引情報にアクセスすることが困難(売り情報・成約情報・需給情報など)

  • 取引にかかるコミュニケーションコストが非常に高く、契約交渉も長期にわたるので契約締結までの間に契約が決裂するリスクを常に孕んでいる

上記のような状況の中で(他に買いたい人を差し置いて)情報をキャッチして(他に買いたい人を出し抜いて)意思決定していくことが必要となります。 そのようなマーケットの中で不動産パーソンはどのような行動をするのでしょうか?一般化するつもりは全くありませんが、今まで私が経験・見聞きした事例をいくつか挙げると、、、(脚色した話で、フィクションです)

特定のエリアにどのような物件が集積しているのか等、マーケットを調べるため、ゼンリンの住宅地図を片手に1日3万歩超歩き、すべてのビルの1Fのテナント看板を撮影する(不動産屋にとっては大変貴重な情報です)

平日・休日問わず街中の建築お知らせ看板や空き地をチェックして、空き地の前で「誰がこの土地持ってるんだろう、、、」と思いを馳せる

オンの場では引き出せない物件情報・マーケット情報をもらうため、あの手この手で飲み会をセットする(皆飲み会好きというのもありますが、、)

対象物件周辺の人の流れを確認するため、現地に一日中張り付いて観察する。近隣で働いている方に話しかけて聞きまくる(ガードマンさんとかホテルのフロントの方とか飲み屋であった近所の方とか)

コミュニケーションは基本電話で電子記録は残したくない(基本、交渉等の証跡を残したくない)

買付け申込書は必ず紙で先方オフィスに持参する(交渉相手の反応を見て最後の交渉をしたいから)

※その他、書けない話も多いので気になる方は直接お話ししましょう

業界のプレーヤーが感じている(であろう)漠然とした課題感とestieで実現したいこと

不動産取引で一番大事なのは「情報」に尽きると私は思っていますし、情報を巡るカオスな状況が不動産業に身を置く楽しみと個人的には感じています。そしてこれからも情報を取っていくための人間臭いやり取りは業界の魅力であり、競合企業との差別化要素であり続けるとも思っています。

他方で、多大なる労力をかけて取得している情報について、テクノロジーの力でより簡単に情報にアクセスできたり分析したりすることのできる領域が無数にあると不動産業界のプレーヤー時代に強く感じたのも事実です。 情報へのアクセス性が上がることで、これまで業界全体で情報取得・集計に費やしていた膨大な時間は、より付加価値の高い業務にシフトし、創造する価値(例えば、街づくり)は更に増大するのではないか?と個人的には思っており、そのような未来の実現にかかわっていきたいと思いのもと、私は日々熱く働いています!

おわりに

estieにはこのような混沌とした、しかし愛すべき業界の情報流通を滑らかにしていくべく、様々なバックグランドの方がコラボしながら仕事をしています。興味持っていただいた方はぜひお話しましょう!

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