こんにちは!estieでアカウントマネージャーをしている橋本です。
弊社のビジネス部門の責任者である束原が「コンパウンドスタートアップに潜む矛盾と困難、その先に広がる世界」の中で顧客組織の持ち方について触れていたので、コンパウンドスタートアップにおける顧客組織として実際に活動しているアカウントマネージャーの立場で記事にしてみました。
この記事の内容
- estieのアカウントマネージャーって何?
- estieのアカウントマネージャーはどういう組織形態になっている?
- コンパウンドスタートアップにおけるアカウントマネージャーのあり方とは?
estieにおけるAM体制の変遷
アカウントマネージャーについて
まず、「アカウントマネージャー」というあまり聞きなれない役割から説明します。
束原の記事にもありますが、「アカウントマネージャー」(Account Manager:通称「AM」)は、一般的なSaaS企業では「カスタマーサクセス(CS)」と呼ばれる役割に近いポジションです。
一方で、estieにおける「AM」は、「CS」とは完全に別物として定義しています。
単一プロダクトの時
このAMが集う組織は、当たり前ですが最初から今の体制になったわけでなく、estieの成長と合わせていろんな姿に形を変えて、今の形に至っています。
まず、創業間もない頃で、プロダクトが単一の時は、「アカウントマネージャー」という役割の人は存在せず、事業開発、salesのメンバーが、サービス導入後の活用支援も兼務で行なっていました。
そこから(思い返すと今気づきましたが)自分が入社して(たぶん)初めて「アカウントマネージャー」という肩書きが名刺に書かれ、AMのポジションが生まれました。
しかしながら、その時もビジネス部門のメンバーは10人に満たない組織で、AMという肩書きを持ちながらもsalesも担い、プロダクトを新しい顧客に売り込みながら、導入いただいた顧客の活用支援もおこなうという二足の草鞋を履く状態がしばらく続きました。
ちなみにこの時は、顧客の業務領域(ディベロッパー、資産運用会社、管理会社等)に合わせてsales兼AM担当者を分ける体制をとり、各々で業務領域に特化した知見を貯めて、同じ業務領域を持つ他の会社に横展開していくことを重視しました。
コンパウンドスタートアップを志向しはじめた時
コンパウンドスタートアップとして新しいプロダクトが生まれ、ビジネス部門のメンバーも10人を超えたあたりから、salesとAMを分けるという選択肢が生まれました。
これは裏を返すと、salesとAMを同じメンバーが同時にやることでのデメリットが表面化してきたことでもあります。
そのデメリットとは、メンバーの得意領域の違いに伴う重心の掛け方の違いにより、チーム成果が最大化できない中途半端な状態が発生したことです。
salesとAMは、そもそも頭と力の使い方が異なります。
salesは、ある意味瞬発力と行動力が求められ、案件を創出するために時には能動的に架電をしたり、案件が進めば自分のメンタルもフィジカルも全集中させて突破しにいくように、短距離走のような力が必要です。
一方でAMは、顧客と長期に関係性を築くためのコミュニケーション力と、顧客の課題を発見して解決するための戦略的思考力が必要で、長距離走のような長い目線が重要になります。
短距離走と長距離走を両方得意にする人がいないように、salesとAMを両立させることはかなり困難で、メンバーの得意領域によって重心の掛け方に差分が生まれるようになりました。
具体的には、salesが得意なメンバーは新規商談に時間をかけて既存顧客のフォローが薄くなり、estieのプロダクト本来の価値を顧客に届けきれなくなる。AMが得意なメンバーは既存顧客のフォローが手厚くなる分、新規商談の歩留まりが悪化して新規目標の達成が困難になる、というような事態が起こりました。
一方で、会社としては当然「どちらも全集中しろおおお!!!」となるため、各メンバーが得意能力を十分に発揮できず、チームとして成果を最大化できない状態になりました。
そこで、salesとAMを別々のチームとして、それぞれ別の目標を設定することで、上記のデメリットを解消する試みを行いました。
現在のAM体制の概要
コンパウンドスタートアップを思考するestieでは、現在はAM専属のメンバーでチームを作り、当初の顧客の業務領域で担当を分ける形から、顧客の事業規模で大きく2つに分ける形にしています。一般的にいう、エンタープライズ領域とSMB領域という形に近いチーム分けです。
AMチームのKGIは、もちろん「顧客の収益最大化」であり、そこから生まれる「1顧客あたりの顧客生涯価値の最大化(=LTV最大化)」です。
そのゴールを達成するために、KPIとして4つの目標を設定しました。
- 契約更新したMRR額
- アップセルしたMRR額
- トスアップ(クロスセル)件数
- ヘルススコアの改善
一般的な「カスタマーサクセス(CS)」であればチャーンレート(解約率)をKPIに置くケースが多いかと思いますが、あえて解約の金額でもレートでもなく、新規に生み出した「MRR額」にこだわりました。理由としては、AMメンバーもsalesと同じように「売上」に意識を持ってもらいたかったためです。
AMチームだけでもARR換算で億単位の契約を背負っているので、契約更新=「チャーンを防ぐ」ではなく、「売上を生み出す」という認識を持ちたいと考えました。そもそも顧客が既存のプロダクトに満足していなければ、アカウントを追加していただくことも、新しいサービスを契約していただくことも困難であり、コンパウンドスタートアップのAMとしてより高いKPIを置いています。
また、クロスセル(=新しいプロダクトの営業)については、salesとAMを分けた経緯を踏まえて、AMメンバーが商談機会を生み出して、salesにパスした件数をKPIにおきました。
これらのKPIは、salesチームと同様にAMチームでも毎週進捗確認をおこない、契約更新やアップセルに結びつけばslackや朝会で全社に共有したりと積極的にアピールをして盛り上げる工夫も取り入れました。
このような体制と目標設定により、現時点ではAMチームの半期の目標達成がほぼ確実になり、成果に結びついてくるようになりました。
現在のAM体制で見えてきたメリット・デメリット
当然、今の体制が100%正解ということはなく、新しい試みをおこなえば、新しい課題も見えてきます。
メリット
① 顧客のオンボーディングと、課題抽出・解決にしっかりと向き合える
② 顧客と長期目線で関係性を築ける
③ ある顧客における成功事例を他の顧客にも横展開できる
④ AMチームの運営・仕組みづくりに集中して対応できる
⑤ 開発チームとの連携を強化でき、プロダクトのディスカバリー・デリバリーをスピードをもっておこなうことができる
AMが目の前の顧客に全集中できる体制となったことで、①のように顧客の状態や経営課題をしっかりと把握できるようになり、課題に対する打ち手を顧客と一緒に考える時間が増えました。そうすることで②や③にもつながり、AMチームの中で様々なノウハウを横展開することで、①〜③のサイクルが回るようになりました。
また、これまでAMメンバーの知見やノウハウが属人的に蓄積されていたので、メンバーでチーム運営に関する課題を出し合い、解決策を実行していくことで、新しいメンバーが増えた時でもすぐに顧客に価値を届けられるよな仕組みづくりもおこないました。
そして、特に⑤については、開発チームとの連携を、実際にサービスを利用している顧客に最も近いAMチームが担うことにしました。コンパウンドスタートアップとして、今年になって複数のプロダクトがほぼ同時に立ち上がりましたが、これもAMが開発チームと顧客を繋ぐ重要なハブになったことも大きいと考えています。
デメリット
① AMメンバー全員が、全てのプロダクトを深く理解しなければならない
② AMメンバーが少ない中で、新規導入が爆増すると、一人当たりの業務負荷も爆増する(それはそう)
①については、コンパウンドスタートアップであるからこその悩みで、今まさに複数のプロダクトが立ち上がっている中で、一人のAMが全プロダクトを担当すべきか、もしくはプロダクトごとに担当を分けるか、まだ答えは出ていません。
理想を言えば、1顧客につき1AMで専属担当した方が、顧客を深く把握でき、顧客の状況に応じて適切なプロダクトをスピード感を持って提案することが可能になると考えています。
一方で、AM一人当たりで担当する顧客数は少ないに越したことはなく、人的リソースの割り当て方については、しばらくはその時の社員数や経営方針によって柔軟に変わっていくと考えています。
今はまだ100%の体制ではない中でも、一つ言えることは、コンパウンドスタートアップを志向するestieのAMは決して「受け身のAM」ではなく「攻めのAM」であり、今のメンバーもその心意気を高く持って、日々の業務に臨んでいます。
特にestieはverticalなサービスを展開しているので、顧客基盤は非常に重要で、その重要な顧客基盤を作り、支えているのがAMであると言えます。
AMがLv.100な状態ってなんだろう?
つい最近、AMチームのメンバーで「AM Lv.100について語る会」なるものを開催しました。
きっかけは、普段はどうしても目先の業務や改善に追われてしまうことが多いため、あえて長期の目線で考える機会をもちたかったことと、理想を言語化して現状とのギャップを見つけることで、コンパウンドスタートアップとして長期的にやるべきことを見つけたかったことです。
この語る会をおこなったことで、2つの効果がありました。
AMチームで共通の理想像を持てた
メンバーで理想のAM像を付箋に書いてあげていくことで、4つの観点での理想像を持つことができました。
- 顧客:顧客の収益を最大化できるのはどんなAMか
- 売上:会社の売上を最大化できるのはどんなAMか
- チーム:チームの成果を最大化できるのはどんなAMか
- パーソナリティ・知識:一人一人の成果を最大化できるのはどんなAMか
理想に向かって今やるべきことが見えた
そして、上記に挙げた理想像と現状を比較して、両者のギャップを認識することで、今やるべきことと、理想像への登り方を見つけることができました。
estieのslackに「TODAYからDO」というスタンプがありますが、理想に向けてまさに今日からできること、Lv.1からLv.2にレベルアップするためにやるべきことが見えました。
終わりに
AM Lv.100になるために、やるべきこと、やりたいことは無限にめちゃくちゃあります。
estieというverticalでコンパウンドなスタートアップだからこその、最高のAMチームを作っていきたい、自分たちなら作っていけると、心から思っています。
この記事を読んで、estieのAMって面白そうじゃん!って少しでも感じたら、カジュアル面談フォームからご連絡いただけましたら幸いです。
AM Lv.100を共に語り、共に作り上げていくメンバーを募集しています!