賃料20%アップを実現。双日ライフワンが語る「今、セットアップオフィスを仕掛ける理由」

はじめに
東京都心部のオフィスマーケットは、かつてない活況を見せ、2026年2月、都心5区の空室率は1%台に突入した(※)。
こうした状況の中、「市況が上昇局面に入った今こそ、賃料のアップサイドを追求できるかがPMとして運営力の見せどころになる」と語るのが、双日ライフワンでオフィスを中心にPM業務を担う杉山氏だ。
本インタビューでは、賃料上昇局面におけるセットアップオフィス化の事例に着目し、同社が市況変化に合わせてどのようにリーシング戦略を組み立て、実行まで落とし込んだのかを聞いた。
※ estie オフィスリサーチを元に編集部にて調査
目まぐるしく動くオフィス市況
足元のオフィス市況をどう見ていますか?
長くオフィスビル管理に従事している私の目から見ても、市況は近年では例を見ないほど好調です。体感としてはファンドバブル以来の勢いだと感じており、当時は物件によって坪10万円に達するケースもありましたが、実際に今またその水準に近づきつつあると感じています。
今回の局面においては、特に工事費高騰の影響もあり新築ビルが建ちづらく、需給が極めてタイトになっています。加えて、ハイグレードだけでなく、グレードBまで含めて動きが堅調なのが特徴です。100坪規模の移転支援をしていても、選択肢が非常に限られていると感じます。
既存テナントの更新においても、少し前までは賃料交渉に対してゼロ回答という企業担当者様も多かったが、最近は徐々に市況の具合がテナント様にも伝わり、「まずは話を聞きましょう」という担当者様が増えてきたように思います。

ローコストのセットアップ化で実現した賃料20%アップ
この市況下、双日ライフワンではどのような取り組みが行われていますか?
空室率や賃料の上下だけでは語れないほど、足元テナントがオフィスに求める条件はこの数年で急速に変わりました。一例ではありますが当社でもそれを実感したケースとして、『クロスシー新宿御苑前ビル』(2023年竣工)のリーシングがあります。
この物件は2023年の竣工から順調に成約しておりましたが、最後の区画である10階については建築基準法・消防法における31m規制のもと間仕切り工事を行うにあたりスラブtoスラブにしなくてはならないという制限があり、昨今の内装工事費の高騰と加えてテナントのイニシャルコストの負担が重く、複数の案件にて具体的に検討をいただくも、イニシャルコストの点で見送りとなるケースが散見されてました。
このため、ビル側にてハーフセットアップオフィスとして貸し出すことをオーナー様にご提案させて頂きました。但し本物件のオーナー様は資金が潤沢な大手企業様やAM会社ではなく個人であるため、コスト面にその課題がありました。
セットアップオフィスのトレンドは天井部分をスケルトンにしたり、ラウンジスペースを設けたりファサード部分も機能美を付与するなどが一般的なセットアップオフィスであり、リーシング戦略上はそういった提案が有効である上UPサイドが狙いやすいことも認識はしておりました。但し前述したとおり潤沢な予算もあるわけではない為、いかにオーナー様のコストを抑えつつテナント満足の得られるセットアップオフィス化を構築するかが本物件におけるポイントとなりました。
どのようにしてコストを抑えたのですか?
一つ目は単純ではありますが、様々な内装工事会社様との人脈となります。
当職のミッションの一つに新規受託を増やすという業務があります。本業務の一環としてUPサイド戦略を図る上で重要なセットアップオフィスにおける様々な提携先を増やしていくことが肝要であるため、その一環で社内BIDを行いつつ昨今の主流なセットアップオフィスとは異なり最低限の会議室を設えコストの圧縮化を行いました。
全体的なコストは開示できませんが昨今主流のセットアップオフィスコストは一般的に坪50万程度かかりますが、本工事では30%前後のコストカットに成功をしました。その上で賃料単価は他のフロアと比較して20%弱のUPに成功しております。
オーナーには多種多様な考えがある中で、どのように意思決定を行っていくのでしょう
これも月並みですがオーナー様の属性・状況に応じた密なコミュニケーションに尽きると思います。
セットアップオフィス化は基本的に1テナントで回収する前提では収支を組むことが難しい。そうすると次のテナントの、更にその次まで見据えて内装を考える必要があります。汎用性と他の競合物件にはないオンリーワンとのバランス調整を行う必要があると考えております。
本物件は竣工時から当職にて担当をしておりましたので他のテナント様がどのようにレイアウトをしたいのかを把握していたことも本件成功に寄与した起因であると思います。
セットアップオフィスの推進に際して重要なケイパビリティについて教えて下さい
大きく2点あります。一つは各マーケットで賃料のアップサイドをしっかり見立てることができるか。つまりデータに基づいてその市場のポテンシャルを精査し、それに対していくらまでの投資を実行するべきかというROIの観点です。
もう一つは意匠のトレンドを把握できているか。ここも見落とされがちですが非常に重要だと考えています。当社も内装設計を専門とする事業者様と多くのお付き合いがありますが、シーンによってどのような会社様にお願いをするのか、慎重に判断しています。特定の1社に頼り切りになっていないかという点は、オーナー様が意思決定をされる際にぜひ確認していただきたいポイントです。
杉山様が考えるセットアップオフィスに向かないエリア、物件特性などあればお聞かせ下さい
様々なオーナー様からご相談を頂きますが、セットアップオフィス化が向かないと考えているケースは、マーケット賃料相場が低いエリアです。当然ですが同じ内装コストをかけた時にどれだけ賃料に跳ね返りがあるか、ここが重要です。逆にセットアップ化しなくても十分な賃料水準が見込めるエリアでは、投資に対するアップサイドが限定的でコスト倒れのリスクがあります。従い、やはりミドルゾーンが基本になると考えます。
物件スペックについてはそこまで拘らないと考えており、当社も案件単位で幅広く選択肢を持ち、検討を行っています。
将来に向けて
最後に、今後の市況見通しも踏まえ、双日ライフワン様の展望について教えてください
先行きの見通しづらいマーケットが続きますが、当社ではオフィス・住宅領域だけでなく足元では商業施設やホテルの管理受託も進めており、事業領域を拡張しています。当社の強みは双日グループの総合力がありつつも、機動力の高さを兼ね揃えている点だと考えています。また、個人からJ-REIT運用会社まで、多様なオーナー様から物件をお預かりしておりますので、それぞれの状況・期待に柔軟にお応えしていける自負があります。
是非セットアップオフィスの観点に限らず、お困りごとがあればご相談頂ければと思います。
双日ライフワン様について
- 名称:双日ライフワン株式会社
- 設立:1993年10月(2022年に現商号へ変更)
- 従業員数:349人
- 管理実績(2026年7月時点):PM受託97棟・BM受託229棟(ビル事業本部)
杉山様プロフィール
- 氏名:杉山 真
- 役職:ビル事業本部 PM事業部 エキスパート
- プロフィール
- 2002年 ビルディング企画グループ入社。同社にてオーナー向け業務(今日でいうLM業務)を実施。
- 2007年 PM専業会社であるユーネックス㈱に入社し、PM物件のリーシングを担当。(※主要クライアント:ダヴィンチ・アドバイザーズ)同社にてファンド案件におけるリーシング戦略の構築を学び以降に生かす。
- 2012年 M&Aにて㈱ベストプロパティに吸収され、転籍。同社でも私募ファンド・リート案件のLMを担う。また、LM業務の傍らダイレクトリーシングとして仲介業務も行う。
- 2016年 当社へ入社。当社入社後はこれまでと同様にLM業務も担いながら 前職と同様に賃貸仲介業務(主に双日グループ関連)に加えて期中のPM業務や、新規管理受託営業や売買仲介業務も担う。