経験を組織の資産に変える~山陰合同銀行が進める不動産ファイナンスの高度化~
株式会社山陰合同銀行は、不動産ノンリコースローンをはじめとする専門性の高い融資業務に取り組んできました。同行のスペシャライズドファイナンスグループは2020年4月の設立から融資残高を積み上げ、現在では不動産ファイナンス領域を拡大しています。 限られた人員体制の中で、複数不動産をまとめて審査する大型案件の増加やそれに伴うモニタリング業務にどう向き合ってきたのか。同行は、「estie レジリサーチ」「estie J-REIT」に加え、「estie 案件管理」「estie 金融モニタリング」も導入し、審査の精度向上と業務効率化を進めています。 本記事では、同行の法人ソリューション部 スペシャライズドファイナンスグループのご担当者に、導入前の課題、導入後の変化、そして今後の展望について伺いました。

導入前の課題/不動産ファイナンスの位置づけ
不動産ファイナンス、ストラクチャードファイナンスという領域は、貴行の中でどのように成長してきたのでしょうか。
スペシャライズドファイナンスグループは2020年4月に設立しました。設立当初は小規模な組織体制でしたが、現在は東京に20名、そのうち6名を不動産担当として専任で置いており、成長を続けています。最初は他行や他社からのご紹介や引継ぎ案件から取り組み、知見を高めながら取り扱いを増やしていきました。そこからアセットマネジメント会社様へのソーシングにも広げ、直接ご相談いただくケースが増えました。今ではアレンジ案件や単独案件が中心になっています。
アセットの種類やエリアにも変化はありましたか。
当初は首都圏の賃貸住宅やオフィスを中心に取り組んでおり、少しずつホテル案件も取り扱うようになりました。2026年3月時点では、賃貸住宅、オフィス、ホテル、その他とバランスよくポートフォリオを組んでいます。エリアも首都圏だけでなく関西圏のご相談が増え、地方案件も地元の地銀様と協調融資をするケースが増えているので、エリアは絞らず全国で取り組んでいきたいと考えています。
成長・拡大をしていく過程で、特に苦労した点はありましたか。
公開情報からの情報取得には苦戦しました。最初は仲介事業者やエージェントの方を経由してコンプス(評価の比較対象となる類似物件の事例)などを開示していただきながらアドバイスを吸収し、自分たちでも情報を仕入れて評価できるようにしていきました。当時はJ-REITの情報を取得できるサービスしか導入しておらず、借り手側のレポートやコンプスをそのまま稟議に落とすと鵜呑みにする形になってしまい、公開情報からマクロとミクロの情報をどれだけ集められるかが課題でした。加えて、複数物件をまとめて審査する1案件で複数物件を取り扱う「バルク案件」も増え、1棟ごとの審査の質を落とさずに対応する工数の確保も課題でした。 行内の稟議はデータとしてシステムに残り、お客様との交渉履歴も債務者様単位で蓄積されています。ただ、不動産ノンリコースローンの過去案件一覧のようなものはなく、Excelで管理している程度でした。見送りのポイントなどを細かく記載しているわけではないので、可視化できるものが必要だと感じていました。
導入による審査の精度向上
estieのサービス導入によって、案件検討の進め方やスピード感はどう変わりましたか。
導入まではJ-REITの情報しか取れておらず、賃貸住宅のマーケット情報は賃貸情報サイトなどを個別に確認する必要があり時間がかかっていました。「estie レジリサーチ」は周辺の住環境や公共施設のデータも含めて瞬時に集められる点が非常に魅力的で、情報収集の時間はかなり削減されました。稟議の説明資料も、加工や出力形式を柔軟に選べるので工数削減につながりました。
情報の量と質という点では、どのような変化がありましたか。
情報量と質はかなり上がりました。以前は公開されている物件の中からエリアが多少ずれていてもコンプスとして選ばざるを得ず、駅から遠い物件を駅前のREIT物件と比較することもありました。今はエリアを絞って同じエリアの物件を選べるようになったので、物件の目利きの精度が上がりました。
取り扱う案件に変化は生まれましたか。
「estie レジリサーチ」を導入したきっかけの一つが、賃貸住宅のバルク案件のご相談が多かったことです。物件数が増えても審査の濃度を薄めたくないと考えていましたが、「estie レジリサーチ」を活用することで物件数が多い案件でもすぐに審査に必要な情報が集められるため自信を持って進められています。 現在我々は最大で10棟規模のバルク案件にも取り組んでおり、導入効果を最も感じるシーンです。利回りがタイトになるほど案件は大口化する傾向にあり、複数物件で構成されることで、特定の物件にリスクが集中することを抑えやすいと考えています。 「estie 案件管理」では、資料を読み込ませると物件の位置が自動で地図上にプロットされるので、稟議資料の作成工数はかなり減っています。しかしながら、ポートフォリオ管理は今もExcelで行っているので、マップ上での可視化は今後活用したいと考えています。 人が増えたり入れ替わったりする中で、「このエリアの物件は以前検討した」といった経験が属人的になっている部分が多いため、「estie 案件管理」の中に検討案件が蓄積されていけば今までの経験が生きていくと思います。

モニタリング業務の負担と導入の背景
モニタリング機能の導入に至った背景を教えてください。
PMレポート(不動産管理会社が作成する運用状況の報告書)が届くと、それをExcelに転記する作業が発生していました。大量のデータのため、担当者の入力負担も大きく、業務拡大や案件増加を図っていく上での障壁になると感じていました。「金融モニタリング」では、PMレポートを読み込ませれば反映される仕組みが非常に魅力的でした。稼働率や単価の悪化といった予兆を、状態が悪くなってから知るのではなく、もっと手前で検知できるので、モニタリングは非常に有効な手段となっています。 これまでは、鑑定評価結果も他システムの中で個別物件毎にそれぞれのページまで見に行かないと結果が分からず、手間がかかっていました。鑑定評価結果とPMレポートが同じシステムの中で確認できるようになれば、入力や確認の手間が省略できる点もモニタリング機能のメリットだと感じています。物件数の増加に伴い、毎月数百件のPMレポートを全て転記するだけで本来の推進活動ができなくなってしまうという懸念もあり、効率化と必要な管理を両立できる方法を探していました。
今後の期待と展望
今後、estieに期待することはありますか。
案件数が増加する中で、審査期間や稟議資料の作成をどれだけ短縮できるかが課題です。審査基準と物件情報を照合し、確認すべきポイントが自動的に可視化されるような仕組みや、属人化せず精度の高い稟議が書けるようにしていきたいと感じており、estieはそれを支援してくれるサービスとして期待しています。
貴行は今後どのようなアセットや領域に取り組んでいかれるのでしょうか。
ホテルは借り手側のレポートが出てくるタイミングが遅く、稟議のスケジュールに間に合わないことがあるため、自分たちで早く情報を調べに行ける環境を作りたいと考えています。また、単独案件やアレンジ案件を増やしていきたいと考えています。一方で、コア資産の案件は今後絞られていく可能性もあるため、これまで取り組みが少なかった開発型案件やバリューアップ型案件に力を入れ、審査の高度化を進めていきたいと思っています。
エリアを問わず取り組む姿勢について、あらためて伺えますか。
支店のあるエリアはすべて地元として捉えています。東京や大阪という区別をせず、目の前のお客様にどう喜んでいただくかを考えて取り組んでおり、審査スピードへのこだわりが不動産以外の案件でのリピートにもつながると考えています。最初にご相談いただく「ファースト・コール・バンク」を目指しています。

導入事例のインタビューを終えて
日々ご一緒する中で、山陰合同銀行の皆様が、案件数が増える中でも一件一件に真摯に向き合い、審査の質を大切にされていることを強く感じています。 estieを通じて、情報収集や資料作成、期中管理の負担を減らし、その先で、より多くの案件や新しい領域への挑戦を支えられる存在でありたいと思っています。 これからも末長くご一緒できれば嬉しいです。(担当:株式会社estie 柳沢)
