“仮説力”が競争力を生む時代へ──リサ・パートナーズがestieと共に挑む、投資判断の質を高めるDX

株式会社リサ・パートナーズは、「投融資」と「アドバイザリー」の2つの機能を両軸に、金融・不動産マーケットにおいて独自の投資戦略と高度な専門性をもとにしたソリューションを提供する企業です。1998年の創業以来、不動産分野では幅広いアセットへの投資を手がけ、約2,000億円超の不動産ファンドの運営を含め、これまで累計約4,000億円の運用実績を有しています。 そんな同社では、情報収集や社内会議にかかる時間を短縮し、投資判断の質を高めるために「estie マーケット調査」「estie 案件管理」「estie レジリサーチ」の3サービスを導入しました。導入を推進した常務執行役員 松本様とシニア・ヴァイス・プレジデント 能田様に、導入背景や活用状況、そして不動産DXへの期待についてお話を伺いました。
導入前の課題/導入を決定した背景
導入以前は、どのような課題がありましたか?
当社では最初に「estie マーケット調査」を導入しました。当社は特定のアセットタイプに限定せず様々なアセットタイプを扱っていますが、特にオフィスは検討機会が多く、マーケットの相場とトレンドを正しく掴むことが重要です。導入前は、担当者が直接リーシング会社に電話したり訪問していたりしたため、情報収集だけで数営業日かかる状況でした。さらに、社内用の報告資料をまとめる作業を含めると1週間近く要していたのが実情です。 こうした作業負担は、スピードが求められる投資判断において大きな課題と認識していました。estieの担当者をご紹介いただく機会があり、「数時間かかっていた調査が3クリックでできる」という点に非常に魅力を感じ、導入を決めました。
当時、情報収集や意思決定の現場では、どのようなやり方が一般的でしたか?
オフィス物件の検討が多いリサ・パートナーズにおいては、案件が入ってくるたびに毎回、3〜4社のリーシング会社に連絡を取り、電話や訪問で賃料相場を確認するという方法が主流でした。対面でのヒアリングには時間がかかる上、事前に十分な情報を集められず、コンプスの抜け漏れがあるまま判断を進めざるを得ないことも少なくありませんでした。 さらに、情報収集に時間がかかることで、案件会議の前に初期評価を行う余裕が十分になく、案件の是非を判断するまでにリードタイムが必要でした。このような構造的な課題が重なり、意思決定の初動が遅れることも少なくありませんでした。 estieのサービス導入により、こうした「情報収集における属人性」「初期判断の遅さ」「社内外のリソースへの依存」など、多面的な課題に一気に解決の糸口が見えたことが、私たちにとって非常に大きな転換点となりました。
選定理由/導入後の変化・効果
「estie マーケット調査」を導入した際、どのような点が決め手になりましたか?
導入の決め手は、やはり情報取得のスピードと網羅性でした。 これまで1週間かかっていた初期調査が、「estie マーケット調査」を導入したことで、今では10分程度で完了するようになった感覚があります。クリック操作で周辺の取引情報や相場観が簡単に得られるため、「深掘りすべき案件か」「リソースを割くべきではない案件か」といった判断を即座に行うことができます。 また、会議中にすぐに調査できる点も効果が大きく、仮説を持った上でリーシング会社と面談できるようになったことでマーケティングの精度も上がりました。結果として、初期判断のスピードと精度が大きく向上し、導入以降にオフィスの取得件数も増加しました。
「estie レジリサーチ」は、どのような背景で導入されたのでしょうか?
当社ではそれまでレジデンスへの投資は余り行ってきておらず、ノウハウの蓄積やネットワークも不十分でした。しかし、人口増加や賃金上昇等のファンダメンタルズの面で東京を中心とした住宅市場には成長性があると見ており、レジデンス領域にも本格的に取り組んでいく必要があると考えていました。 新たにレジデンス領域に投資する体制を構築するにあたり、スピーディにエリアの賃料相場やトレンド、さらには対象物件やコンプスの詳細情報を入手できる環境を整える必要があり、「estie レジリサーチ」はまさにそのニーズに合致したサービスでした。導入後、都心部の優良物件を中心とした大型のポートフォリオの取得につながり、現在ではレジデンス案件を積極的に検討する体制が整ってきています。
「estie 案件管理」の導入効果はいかがでしょうか?
従来は案件情報をExcelで管理しており、ソーシング会議のたびに各担当者から情報を収集・更新し、一覧化・優先順位付けするという非効率なプロセスがありました。 「estie 案件管理」を導入したことで、これらの作業をすべて一つのインターフェース上で完結できるようになり、週次の案件会議では大型モニターに画面を映しながら、リアルタイムで検討・判断できる体制が整いました。類似事例の参照やREITの事例を含む相場情報も同じ画面上で確認できるため、会議の進行もスムーズになりました。 また、案件ごとの検討結果や追加情報もインターフェース上に記録できるため、将来的に再び検討する際にも有益です。入力された情報はチーム全体で共有され、組織的なナレッジとして蓄積されつつあります。
3つのサービスを導入して得られた全体的な変化について教えてください。
estieの3サービス導入により、「情報収集における属人性」「初期判断の遅さ」「社内外のリソースへの依存」など、多面的な課題に一気に解決の糸口が見えたことが、私たちにとって非常に大きな転換点となりました。 オフィスに加え、レジデンスへの投資領域を拡大できたのは、まさにこうした環境整備と意思決定の迅速化が後押ししてくれた結果だと感じています。 さらに、当社からのフィードバックに対するサービス改善スピードも非常に早く、実務上の使いやすさが日々アップデートされていく点も、estieを継続して利用する大きな理由の一つです。
ソーシング・期中運用での活用方法
estieサービスの活用方法について、ソーシングや期中運用の観点から教えていただけますでしょうか?
ソーシングにおいては、目的に応じて「estie マーケット調査」の検索条件で絞り込みを行っています。検討物件のポテンシャルを判断する際、エリア傾向やテナント構成、現況賃料とマーケット賃料のギャップといった情報を素早く把握することで、初期判断の精度とスピードが飛躍的に高まりました。 物件に出会った瞬間、「これはいけそうだ」と思っても、かつてはそのエリアの水準を知らない場合は一からリサーチをする必要がありました。今では、最初にestieで一通り確認し、「これは明らかに高い」「この単価なら可能性がある」といった判断が即座にできるようになっています。初動での「見送り判断」も非常に早くなりました。無駄なリソースを割かずに済むようになり、その結果として、扱える案件数が増加しました。
期中運用における「estie レジリサーチ」の使い方について教えてください。
「estie レジリサーチ」は、特にレジデンス物件における期中運用で力を発揮しています。競合物件を登録し、募集状況を時系列で追跡することで、自社物件のバリューアップ戦略を設計する際の材料になります。定点観測ができるという意味で、長期的な運用判断において非常に有効です。
決裁者が直接データに触れることのメリット
決裁者の立場として、データに自ら触れることの意義をどのように感じていますか?
リサ・パートナーズでは、投資戦略の立案から実行判断までを担う立場において、自らデータにアクセスできることの価値を非常に大きく感じています。かつては担当者に調査を依頼し、報告を受けて判断していましたが、今では自分自身で仮説を立てながらestieの情報にアクセスし、その場で必要なデータを取得して意思決定に活かしています。情報の解像度が高まり、検討案件の理解度が格段に深まりました。 例えば、東京のオフィスでどのエリアでどれくらいの賃料水準なのか、今どういったアセットタイプがどのような条件で取引されているのか、といった点を、自ら地図や数字を見ながら確認することで、投資戦略そのものの立案スピードと精度が大きく向上しました。
仮説の立て方や担当者との議論に、変化はありましたか?
どちらも明確に変化しました。たとえば東京のオフィスでどういった立地・アセットタイプが今どれくらいの賃料水準なのか、といった点について、地図や数字を見ながら仮説を構築し、それを即座に検証できるようになっています。これにより、投資戦略そのものの立案スピードと精度が向上しています。 また、担当者は、案件に深く入り込むあまり、時に良い面にフォーカスしすぎる傾向もありますが、決裁者として一歩引いた視点から、同じデータに基づいて確認・指摘ができることで、情報のバイアスを抑えた意思決定が可能になります。 加えて、属人化の防止にもつながっています。誰が見ても同じ情報が参照できるという状況は、組織的な判断精度の底上げにも貢献しています。
不動産業界DXへの思い、estieへの期待
今後、サービス開発面でestieへ期待することはありますでしょうか?
「初期的な物件査定」や「投資戦略立案における仮説提示機能」の強化を期待しています。例えば、賃料ギャップがなぜ生じているか、どうすればそれを解消してバリューアップできるか、といった示唆をデータから得られるようになると、初期段階での検討幅が広がります。 また、リサ・パートナーズに蓄積されている過去の案件データも活用できれば、より高度な意思決定が可能になるはずです。現在は「estie 案件管理」に基礎情報だけを入れていますが、テナントのレントロール情報なども含めて整理され、将来的に検索や比較に活用できるようになると理想的です。
DXにより不動産業界のあるべき姿も変化が必要でしょうか?
estieが標準化を進めることで、不動産業界全体の情報の透明性や意思決定の質が高まり、結果的に競争力のある市場が形成されていくと感じています。 そして私たち業界側も、単に“情報を持っているかどうか”ではなく、その情報をどう解釈し、価値に変えていけるかという創造性が求められるフェーズに入っていくべきです。情報アクセスが均質化される時代においては、その先にある“思考力”“洞察力”“仮説力”こそが競争優位の源泉になっていくはずです。 また、不動産会社や投資ファンドの社会的な使命は、新築や既存物件を問わず、その価値をどう引き上げていけるかにあると考えています。不動産業務は本来、極めて労働集約的な側面を持っており、現場のプレイヤーが煩雑な作業に追われがちです。本質的な取り組みに、もっと時間とリソースを割いていくためにも、estieが提供するようなツールが“本当にやるべきこと”に集中できる環境を支えてくれることを願っています。 リサ・パートナーズが進めるDXは、単なる業務効率化ではなく、投資判断の質を高め、不動産業界全体の価値向上に寄与する取り組みです。データを味方に、私たちはestieとともにその挑戦を続けていきます。