渋谷のオフィス事情|賃料や今後の動きまで徹底解説!

田中 陸(Riku Tanaka)

目次

  1. やっぱり商業地? 渋谷のオフィス街としての歴史
  2. ビットバレー再興? 渋谷のオフィスの今後
  3. ノマドワーカー天国 !渋谷にはどのようなオフィスが多い?そこから見える渋谷にオフィスを構えるメリットとは?
  4. おわりに

︎最近、日本のオフィス街の平均賃料順位トップの座が、丸の内を要する千代田区から渋谷区へ取って代わったという話を耳にした方もいらっしゃるかもしれません。

昨年2018年夏に開業した東急電鉄の「渋谷ストリーム」を始め、 「渋谷ヒカリエ」や今年12月開業予定の「渋谷スクランブルスクエア」や、 今後も「渋谷ソラスタ」「宮下公園等整備事業」など巨大な再開発プロジェクトが目白押しのJR渋谷駅前エリア。 このエリアのオフィスは、募集賃料で坪当りの単価が5万円に登るものもあります。

今回はそんな不動産業界の話題をかっさらう渋谷のオフィス事情について、どのようなオフィスが多いか、どのような業種の企業が集まるのか、などといった視点から、今後の動向までを解説したいと思います。

やっぱり商業地? 渋谷のオフィス街としての歴史

オフィス新興地としての渋谷

渋谷のオフィス街としての歴史は、1894年に日本最初期のオフィスビルである「三菱一号館」が竣工した丸の内や、1869年の「日本銀行」の竣工に歴史を遡る日本橋と違い、そのポテンシャルの勃興は1950年代に始まります。

高度経済成長期真っ只中、1930年代に完成した駅直結の東急百貨店をはじめ、渋谷は当時道玄坂を中心とした商業地・繁華街として成熟しつつあったため、新たな街の付加価値追求のため「業務地区」と呼ばれるオフィス街の整備が一挙に始まりました。

時代と共に進化するオフィス街へ

その後も1964年の東京オリンピック開催を契機に駅前エリアは道路の新設や拡幅が相次ぎ、その利便性を更なるものへ飛躍させます。すると街そのものの利便性に惹かれた企業たちが次々に事務所を開設し、渋谷を商業地としてだけではなく、オフィス街としての需要も加速させていきました。 東京オリンピックの次年には渋谷区の総合庁舎や渋谷公会堂、福祉事務所などの公的機能も整備され、その利便性をさらに高めていったと言われています。

ビットバレー再興? 渋谷のオフィスの今後

ビットバレーに集まるギークな企業たち

今現在、渋谷にはどのような業種の企業が集まるのか?というと間違いなくIT企業ですが、この渋谷のオフィス街としてのカラーは現ユナイテッド社長の西川潔氏が提唱した「ビットバレー」と呼ばれる渋谷を米シリコンバレーのようなIT集積地として位置付けるムーブメントの提唱が発端となりました。2000年代はじめのことです。 インターネット黎明期とも呼ばれるこの時代に、サイバーエージェントやDeNAと言った著名なIT企業の多くがその産声をあげましたが、当時オフィス一等地といえば丸の内や日本橋であり、当時のベンチャーであるIT企業にはそこまでの賃料を負担する体力がなかったのでしょう。

そのため、千代田区に比べて賃料が安く、かつ交通利便性の高い渋谷に当時のベンチャー企業が集結しました。さらに一時はGoogleやAmazonなどの世界的IT企業が国内拠点を構えたことで、渋谷のオフィスはITのメッカとしてその地位を確立していきます。 しかしこのビットバレー構想は、2000年代前半に入ると渋谷のオフィス不足が深刻化し、著名なIT企業は「貸し床不足」のため六本木などに拠点を移すなどしました。加えて地価の上昇から賃料も高騰し、ベンチャー企業についてもかつての渋谷のオフィス事情がそうであったように、賃料の安い五反田周辺に拠点を求めるようになり、ベンチャー企業が連携し「五反田バレー」を立ち上げるに至りました。

(五反田のオフィス事情についてもコラムを執筆しておりますのでご参照ください!)

五反田のオフィス事情【特徴と課題】今後の動向も紹介

五反田バレーと呼ばれ、ITベンチャーのオフィス街の代名詞となりつつある五反田。今回は五反田エリアの特徴を紹介していきます。

再開発により拡がる渋谷のオフィスのキャパシティ

しかし近年、渋谷駅要する東急電鉄、東急不動産を中心として渋谷駅前エリアでは数多くの再開発計画が動きはじめました。これらの再開発では、これまで渋谷オフィスのメインストリームであった小規模なオフィスを老朽化のため取り壊し、一つの大きな街区として整備していきます。すると渋谷駅前はこれまでよりもさらに高層化したビルが立ち並ぶエリアとなり、2000年代前半に大企業が拠点を移動した原因となった「貸し床不足」も解消されることになり、間違いなく渋谷のオフィス事情は更なる飛躍を遂げるでしょう。昨年竣工した「渋谷ストリーム」のオフィス棟は一棟丸々をGoogleが賃貸し、本社を六本木ヒルズから移転したことで不動産業界では多くの話題を呼びました。

ビックバン2.0へ?

2020年代以降も渋谷駅前では「渋谷フクラス」「渋谷ソラスタ」「渋谷二丁目17地区計画」などオフィス面積は増床に増床を重ねる予定です。加えて新生渋谷パルコや渋谷スクランブルスクエアの商業ゾ ーンも、高級ブランドや話題の飲食テナントを数多く誘致し、渋谷はオフィス・商業共によりその価値を高めていきます。オフィスのみならず、かつての渋谷のルーツである商業も止まることなく活性化すると、個人の消費や渋谷にオフィスを構える企業への投資なども更に加速していくことは想像に難くありません。かつて渋谷のオフィス街としてのキャパシティに不満を覚えたGoogleが、六本木から渋谷へ再び舞い戻ってきた事実は、「ビットバレー2.0」発足の兆しといっても過言ではないかもしれませんね。

ノマドワーカー天国 !渋谷にはどのようなオフィスが多い?そこから見える渋谷にオフィスを構えるメリットとは?

新たなオフィスの形、コワーキングスペース

商業地としてファッションや音楽のカルチャーを発信する役割を担いつつ、近年はめまぐるしい再開発によりオフィス街としても「良い顔つき」になってきた渋谷ですが、そんな現代をときめくエリアの特徴的なオフィスとはどんなものでしょうか?

上で既述の通り、渋谷のオフィス事情はIT企業と共に発展を遂げてきたと言っても過言ではありません。しかし、近年渋谷エリアで同様に特徴的なのが固定のオフィスやデスクを必要としないクリエイターや個人事業主のような、いわゆる「ノマドワーカー」と言われるリモートワーカーの需要を一握りにしているという側面もあります。 "固定のオフィスやデスクを必要としない個人事業主"と聞くと、一般的に企業法人相手の賃貸オフィスを生業とする不動産業者からすると商売相手としてはメインターゲットでは無いような印象を受けますが、そう言ったリモートワーカー達の受け皿となっているのがWeWork100BANCHco-ba shibuyaといったシェアオフィス/コワーキングスペースです。 コワーキングスペースを供給する代表的な企業である米WeWorkは2018年の日本初進出を皮切りに、わずか一年足らずで現在では東京・横浜・大阪・名古屋・福岡といった国内主要都市に20カ所の拠点を構えています。渋谷エリアについて言えば第1号オフィスである神宮前のアイスバーグに続いて、渋谷スクランブルスクエア東棟への入居が決まっています。

こういったシェアオフィス/コワーキングスペースは通常の企業のオフィスや従来のレンタルオフィスとは違い、ランダムなワーカー達が共有のワーキングスペースでの作業を通じて相互に交流・協業することで、企業という垣根とも言える看板を取っ払い、これまでの執務概念の中では生まれ得なかった新たなシナジーの発生を目論んでいることが特徴です。

︎個人×大企業 渋谷にオフィス構えるメリットとは

渋谷、ひいては東京のみならず、国内の主要都市ではこう言ったシェアオフィスやコワーキングスペースの需要は近年右肩上がりに推移しており、渋谷は都内でも圧倒的にその供給がなされているエリアです。 更にこういったコワーキングスペースの利用者の中にはメインユーザーである個人事業主だけではなく、一般企業に勤める会社員も少なくないといいます。ここ数年の働き方改革によりフレキシブルなワークスタイルが認められる中で、社員に"働く場所"を自由に選べるようにする企業も最近では少なくなく、これまでの執務環境では生まれにくかった一般企業と一芸に秀でる個人事業主やクリエイターとのコネクションを生むハブとしての役割も担っていると考えられます。企業看板が無い分フットワークの軽い個人事業主や、少数精鋭で事業を執り行うベンチャー企業が多く集まる渋谷というエリアは、小規模な需要にもオンデマンドで執務スペースを供給でき、かつ様々な業種のクリエイターなどと交流の機会を持つことができるコワーキングスペースを構えるには非常に合理的な立地であるとも言えますね。

上記で述べたように、渋谷エリアは駅前再開発計画によってビルの高層化が進むことで対大企業に対する貸し床の供給不足が解消され、より多様な業種の著名企業が拠点を移す可能性を大いに秘めていると考えられます。実際に今年開業の渋谷スクランブルスクエアには国内を代表するIT企業で渋谷にルーツを持つmixiやサイバーエージェントに加え、外資系生保会社のエヌエヌ生命保険、音楽関係の出版・イベント企画などを事業とするロッキングオングループなど、多種多様な業界のフロントプレーヤー達が入居予定です。

今後の渋谷というエリアは上記のようなコワーキングスペースのさらなる充実により、音楽やファッションなどの渋谷に古くから根ざす"クリエイティブ"なカルチャーと新たな渋谷の魅力に引き寄せられる世界のトッププレーヤー的企業たちの"ビッグバン現象"が数多く発生するポテンシャルを秘めているでしょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか。渋谷のオフィス事情は絶えず変化し、これからの日本のビジネスシーンの主要なアクターとして大きな役割を果たし続けることでしょう。これからの動向にもますます目が離せませんね。是非、そんな刺激的な街「渋谷」でオフィスを探してみてはいかがでしょうか。

監修

執筆者
田中 陸(Riku Tanaka)
経歴
東京大学経済学部卒業後、住友不動産入社。オフィスビルのアセットマネジメントを担当し、海外事業部にて世界主要都市の市場調査や投資検討に従事。 estieでは、セールスマネージャーとして営業や事業開発を手がける。 ベンチャー感を出すため、ヒゲと伊達眼鏡をトレードマークにしている。
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