本店移転の際の「登記すべき事項」の記載項目がある書類3選|注意点も紹介

田中 陸(Riku Tanaka)

目次

  1. オフィスの本店移転とは
  2. 本店移転の際に記載する「登記すべき事項」について
  3. 本店移転の際の「登記すべき事項」の記載項目がある書類3選
  4. 【種類別】本店移転の際の「登記すべき事項」の書き方2つ
  5. 本店移転の際に「登記すべき事項」を記載するときの注意点
  6. 【状況別】本店移転の流れ4選
  7. 本店移転の際の「登記すべき事項」の書き方を正しく理解しよう

オフィスの本店移転とは

会社の本店の所在地を変更する際は、管轄する法務局に移転登記の申請をすることが必要です。


会社の本店所在地は、「登記すべき事項」となっており、変更した場合は本店移転日から2週間以内に本店移転の登記申請をしなければならないと、会社法第911条1項によって定められています。


なお、期限内に必要な手続きを行わなかった場合、会社法第976条1号により、100万円以下の過料に処せられます。


少々難解な「登記すべき事項」について見ていきましょう。


出典:会社法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

本店移転の際に記載する「登記すべき事項」について

本店移転の際に提出する「本店移転登記申請書」には、商号・本店(旧所在地)・登記の理由登録免許税・添付書類などのほかに、「登記すべき事項」を記載する必要があります。


本店移転登記を申請する場合、「登記すべき事項」の記載内容は、「移転後の新しい本店所在地」と「移転した年月日」です。


ただし、移転先が「管轄内」か「管轄外」かによって異なり、その詳細は具体例で後述します。

そもそも「登記すべき事項」とは何を記載するところ?

上記の通り、本店移転の際の「登記すべき事項」は新しい所在地と移転年月日などです。また、会社役員変更の際の「登記すべき事項」は、役員の資格・氏名・変更年月日などです。


つまり、会社設立時に登記した事項を変更する場合、その変更した事項が「登記すべき事項」となります。

本店移転の際の「登記すべき事項」の記載項目がある書類3選

本店移転の際の登記申請に際して、作成する書類でもっとも重要なのが「本店移転登記申請書」です。前述したとおり、この書類に「登記すべき事項」を記載します。


ただし、本店移転先の管轄法務局が移転前の管轄法務局と同じである場合(管轄内)と、そうでない場合(管轄外)によって、必要な書類が異なります。


それぞれの書類について確認してみましょう。

1:本店移転登記申請書

本店を移転する際は、「本店移転登記申請書」を作成し、法務局へ提出します。


基本的に、本店移転登記申請書には、商号(会社名)、本店(旧本店所在地)、登記の事由(「本店移転」)、登記すべき事項(移転先の新本店住所・移転年月日)、登録免許税(3万円)などを記載します。


また、添付書類として株主総会議事録・株主リスト・取締役会議事録・委任状などを添付しなければなりません。


出典:株式会社(本店移転(管轄登記所内で移転する場合))|法務局
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252660.pdf

2:旧管轄法務局提出分申請書

本店移転先が管轄外の場合、旧管轄法務局提出分と新管轄法務局提出分、2種類の「本店移転登記申請書」を作成します。


旧管轄法務局提出分の本店移転登記申請書の宛名は、移転前の旧管轄法務局名を記載します。


なお、管轄する法務局が変更になる場合は、新しい法務局に会社の実印を登録するため、印鑑届書の提出が必要です。


出典:本支店一括登記 特例有限会社(本店移転(管轄登記所外に移転する場合))|法務局
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252880.pdf

3:新管轄法務局提出分申請書

新管轄法務局提出分の本店移転登記申請書の宛名は、移転後の新管轄法務局名を記載します。提出先は旧管轄法務局提出分と一括して、旧管轄法務局に一括で申請します。新管轄法務局に申請しても受理してくれないため、注意が必要です。


また、委任状は旧管轄法務局提出分と新管轄法務局提出分の2通必要です。


出典:本支店一括登記 特例有限会社(本店移転(管轄登記所外に移転する場合))|法務局
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252880.pdf

【種類別】本店移転の際の「登記すべき事項」の書き方2つ

本店を移転する場合に注意すべき点は、本店の新しい所在地が旧所在地と管轄する法務局が同じ場合とそうでない場合で、手続きが異なることです。


管轄外の法務局に申請しても受理してくれません。そのため、移転前と移転先、それぞれの管轄する法務局を事前に調べておく必要があります。


ここからは、そのケースごとの「登記すべき事項」の書き方を見ていきましょう。

本店移転が管轄内の場合の書き方

本店を移転しても管轄法務局が変わらない場合、現在の本店の管轄法務局に本店移転登記の申請を行います。


その場合の「登記すべき事項」は、「本店」の項目に新しい本店の所在地を、「原因年月日」に本店を移転した年月日を記載します。


出典:株式会社(本店移転(管轄登記所内で移転する場合))|法務局
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252660.pdf

本店移転が管轄外の場合の書き方

移転前の管轄法務局の管轄外に本店の移転先がある場合、旧所在地の管轄法務局で本店移転登記の申請をし、同時に新所在地の管轄法務局でも本店移転登記をする必要があります。そのため、前述したとおり、本店移転登記申請書を2通用意する必要があります。


なお、この場合は2件まとめて旧所在地の管轄法務局に提出すると、新住所の管轄法務局に送付してくれるため、それぞれの法務局に申請する必要はありません。


ただし、2通の本店移転登記申請書の宛名は、それぞれ移転前の管轄法務局宛と移転先の管轄法務局宛にする必要があります。


出典:本支店一括登記 特例有限会社(本店移転(管轄登記所外に移転する場合))|法務局
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252880.pdf

旧管轄法務局提出分申請書への書き方の例

旧本店住所の管轄法務局に提出する本店移転登記申請書の書き方は、「登記すべき事項」に移転先の所在地と本店移転日を記載します。


さらに、本店移転登記申請書に記載する宛先は、旧本店所在地の管轄法務局宛になります。


出典:本支店一括登記 特例有限会社(本店移転(管轄登記所外に移転する場合))|法務局
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252880.pdf

新管轄法務局提出分申請書への書き方の例

新本店住所の管轄法務局に提出する本店移転登記申請書の書き方は、同じく「登記すべき事項」に移転先の所在地と本店移転日を記載します。


さらに、本店移転登記申請書に記載する宛先は、新本店所在地の管轄法務局宛になります。


出典:本支店一括登記 特例有限会社(本店移転(管轄登記所外に移転する場合))|法務局
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252880.pdf

本店移転の際に「登記すべき事項」を記載するときの注意点

本店移転の際に記載が必要な本店移転登記申請書ですが、「登記すべき事項」以外にも注意すべき点はあります。まず、登記上で「本店」欄の変更を要するか否かということです。


さらに必要となる添付書類は間違っていないか(取締役会議事録または取締役の決定書や株主総会議事録、株主リストなど。後述する「【状況別】本店移転の流れ」参照)、管轄外本店移転の場合に登記申請先は旧本店所在地の法務局にしているか、などです。


書類の不備が一ヶ所でもあると受理されないため、慎重に進めましょう。

【状況別】本店移転の流れ4選

前述したとおり、本店移転の旧所在地を管轄する法務局と新所在地を管轄する法務局が同じ場合と異なる場合では、手続きが異なります。さらに、管轄内における本店移転の際は、定款の変更が必要な場合と不要な場合とで、やはり手続きが変わります。


それぞれの状況に応じた本店移転の流れを見ていきましょう。

1:管轄内で定款の変更を要する場合

本店の所在地が変わると定款の変更が必要で、定款を変更するためには、株主総会で本店移転の決議をしなければいけません。さらに、取締役会の決議により、移転の時期および所在地を決議します。


登記申請は、本店移転登記申請書、株主総会議事録、株主リスト、取締役会議事録または取締役決定書、委任状を管轄法務局に行います。 なお、登録免許税は3万円です。


なお、本店を移転しても定款の変更が不要な場合があります。それは次の項で説明します。


出典:本店移転登記申請書|法務局
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252660.pdf

2:管轄内で定款の変更を要しない場合

定款には、本店所在地は市町村および東京23区、いわゆる最小行政区画までを定めればよいとされています。そのため、本店を移転しても、定款の変更が必要ない場合が存在します。


移転前と移転先の管轄法務局が同じ場合で、かつ定款変更が不要な場合は、登記の申請のみです。定款変更のための株主総会議事録などは必要ないため、本店移転登記申請書および取締役会議事録または取締役決定書を管轄法務局に登記申請します。登録免許税は同じく3万円です。


出典:本店移転登記申請書|法務局
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252660.pdf

3:他の登記所の管轄区域内である場合

本店を「他の登記所の管轄区域内に移転する場合」も、株主総会および取締役会を経なければなりません。そして、前述したとおり、移転前の本店所在地の管轄法務局宛と、移転後の本店所在地の法務局宛の本店移転登記申請書を2通用意します。


さらに、株主総会議事録、株主リスト、取締役会議事録または取締役決定書、委任状、印鑑届書を用意し、旧本店所在地の管轄法務局に申請します。なお、登録免許税は本店移転登記申請書2通分で6万円です。


出典:本店移転登記申請書|法務局
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252880.pdf

4:管轄外の本店移転の場合

「管轄外の本店移転の場合」は、「他の登記所の管轄区域内に移転する場合」と同様です。株主総会および取締役会を経て、2通の本店移転登記申請書、株主総会議事録、株主リスト、取締役会議事録または取締役決定書、委任状、印鑑届書を旧本店所在地の管轄法務局に申請します。


なお、登録免許税は同じく本店移転登記申請書2通分で6万円です。


出典:本店移転登記申請書|法務局
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252880.pdf

本店移転の際の「登記すべき事項」の書き方を正しく理解しよう

会社が本店を移転すると、多くの処理すべき手続きや引っ越し作業などが立て込み、さらに本来の業務もこなす必要があるため大変忙しいでしょう。


しかし、そんな状況でも、会社の本店を移転した場合は、2週間以内に登記申請を行わなければいけません。また、提出書類は1つ不備があるだけで受理されません。さらに、ケースごとに手続きの内容が異なり、それに応じた添付資料も必要です。


特に、注意を要する「登記すべき事項」の書き方を正しく理解し、誤りのないようしっかりと確認しましょう。

監修

執筆者
田中 陸(Riku Tanaka)
経歴
東京大学経済学部卒業後、住友不動産入社。オフィスビルのアセットマネジメントを担当し、海外事業部にて世界主要都市の市場調査や投資検討に従事。 estieでは、セールスマネージャーとして営業や事業開発を手がける。 ベンチャー感を出すため、ヒゲと伊達眼鏡をトレードマークにしている。
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