オフィス移転の流れ【第4回】レイアウトプランニングのステップ

田中 陸(Riku Tanaka)

目次

  1. 雰囲気?機能性?新オフィスのレイアウトプランニングのステップ
  2. レイアウトはどう決める?
  3. 現状オフィスを見つめ直す
  4. 問題点を解決するために最適な「ゾーニング」と「導線計画」を考える
  5. ︎デスクレイアウトの検討
  6. スクール型レイアウト
  7. ︎オフィスの導線計画
  8. 専門業者とレイアウトを考える
  9. レイアウトプランニングは単なる気分転換ではない!

雰囲気?機能性?新オフィスのレイアウトプランニングのステップ

本記事シリーズでは、オフィスの移転について大まかな流れから各フェーズの具体的業務の洗い出し、コスト感やスケジュール、各種申請になどについて特に繁雑な部分については掘り下げる形で複数回にわたって解説していきます。

今までの記事は下記をご確認ください。

オフィス移転の流れ【完全版】無料マニュアルが手に入る!

今回はオフィスの移転について大まかな流れから各フェーズの具体的業務の洗い出し、コスト感やスケジュール、各種申請になどについて特に繁雑な部分については掘り下げる形で複数回にわたって解説していきます。

オフィス移転の流れ【第2回】移転先の物件の検討と決定

移転先物件の選定について、どのような選定基準を用いればよいのか、どのような物件が良物件なのかという点について、立地・周辺環境、設備・ビルスペックの2点における要チェックポイントを解説します。

オフィス移転の流れ【第3回】スケジュール・計画作成のコツ

実際にオフィスの移転を行うにあたって、どのようなスケジュール感で行うのが最適か、どのような視点で計画を策定すればスムーズにオフィス移転を行うことができるのかというコツを、規模が大きいオフィス(100坪以上)・小さいオフィス(100坪以下)のような視点から解説していきます。

今回は実際にオフィスの移転を行うにあたり 、新オフィスの雰囲気の大きな部分や、従業員の生産性・業務効率性を向上させるのに重要であるオフィスの執務環境を整えるためのレイアウトの検討について、コンセプトの作成、ゾーニング決定のコツについて解説をします。

(新オフィスの移転先のご検討は、ぜひestieをご活用ください!)

レイアウトはどう決める?

オフィスを移転し、心機一転

オフィスを移転する合理的な理由は実に様々で、業務の効率化はもちろんのこと、経営上の課題の解決や、主要取引先の変化、企業イメージの向上など、検討する企業によって多種多様です。

そんなオフィス移転の中でも新オフィスの雰囲気や社員の満足度・執務効率に大きく影響するのが執務スペースのレイアウトプランニングです。基本的に短期スパンで行うことが非常に少ないオフィスの移転及びレイアウトの変更ですが、どうせならいまどきにカッコよく、かつ効率的なものに仕上げたいですよね。

しかし、オフィスのレイアウトというものは社内の部署の業務内容や企業自体の業務内容によって、最も効率的なモデルは多岐に渡ります。端的に言えば、レイアウトのプランニングにはこれといった画一的なテンプレートはあまりなく、各企業の目指す新オフィス像に対して、オーダーメイドで検討を行わなくてはなりません。

その一方で、オフィスという物理環境は坪数という一定の制限があり、やりたいこと全てを実現することはなかなか難しく、デスク配置の仕方によっては非常に効率が悪くなってしまうものも存在します。 例えば、昨今のオフィスで流行りの共用スペースを多く設けるようなモデルを採用すれば、当然従業員の固定執務スペースは限られた大きさになります。営業が事業収益の根幹を担うような企業であれば比較的従業員の在席率は低くなると予想されるため成立することもありますが、SIerや事務系が主な企業では共用部よりもより多くの社員が座って業務を執り行えるスペースを確保する必要があるため、なかなか難しいかもしれません。

そうした限られた空間の中で、オフィス移転によって解決すべき課題を確実に解決するためにも、様々なゾーニングやデスクレイアウト、オフィス導線を検討し、最も効率的かつ理想的なレイアウトプランニングを作成する必要があります。

現状オフィスを見つめ直す

綿密なレイアウトプランニングを検討するに先立ち、まず「現状オフィスが抱える問題点は何か?」という問題点の洗い出しから行ないましょう。 前述の通り、オフィス移転やレイアウトの変更の検討を始めるきっかけは企業によって様々かと思いますが、まずは現状のオフィスの何が原因で問題が発生しているのか?ということを明確化し、その最優先課題の解決を目指せるようなレイアウトプランを念頭に置きましょう。

オフィス移転、レイアウト変更の目的を明確にしたら、その課題解決に合ったオフィスのイメージとコンセプトを固めましょう。 従業員同士のコミュニケーションが活発なオフィスを目指すのであればカフェ風やオープンスペース風、照明は明るい方が良いかもしれません。対して、金融系や銀行、政府系機関の来客が多い企業であれば、あまりフランクすぎない、ある程度従来の誠実なオフィスイメージのエッセンスがあるようなコンセプトがマッチするかもしれません。

問題点を解決するために最適な「ゾーニング」と「導線計画」を考える

オフィス全体のゾーニング

オフィスのゾーニングとは、入居時には仕切りのないまっさらな空間を様々な用途によって振り分け、細分化することを言います。主には「社外の第三者が立入れるゾーン 」「そこからセキュリティラインで隔てられる従業員のみのゾーン」 「その間の部外者、従業員の両者が利用可能なゾーン」 に分かれます。

それぞれのゾーンが担う役割は当然ながら大きく異なり、それぞれの役割によって利用者の導線やレイアウトを検討しなくてはなりません。 例えば、部外者が基本のゾーンでは企業受付や来客者用会議室などが必要ですし、従業員のみアクセス可能なゾーンには資料室や機械室、従業員ののメイン執務スペースや打ち合わせブースなどを設けることが理想です。

特にオフィスの中でも最も大きな面積を占めるであろう従業員の執務スペースは、そのゾーン内で部署ごとなどの基準でさらに細分化したうえでそれぞれのスペースの効率的な配置も考慮しましょう。

バックオフィス系の経理部、総務部、広報部、法務部などは社内機密などを多く保管しているケースが多いため、なるべく近接した配置かつ、部外者が立ち入り可能なゾーンからはなるべく遠いエリアに配置することが望ましいと思われます。 逆に営業系や開発系など、外出の機会や社外の取引先と打ち合わせが頻繁にあったり、社外からの郵便物が多い部署については、受付や来客用会議室、エントランス等の社外関係者が立ち入り可能なゾーンに近いことが効率的かもしれません。

部署配置の他にも、従業員執務スペースのゾーニングには下記のような例が挙げられます。

情報管理ゾーンサーバールーム、資料室など
業務支援ゾーン社員食堂、休憩スペース、仮眠室、給湯室など
応接ゾーン役員専用会議室、役員室など

︎デスクレイアウトの検討

大方のオフィス内のゾーニングが固まったら、従業員執務ゾーンに設置するデスクレイアウトを決定しましょう。デスクのレイアウトにも様々なパターンが存在し、部署ごとの業務内容や、従業員の執務スタイルによって最適なものを選んでいくことが重要です。

下記の4種類が定番ですが、企業によってレイアウトを編集することも一つの手かもしれません。

島型レイアウト

島型

部署やチームなど、ある一つの区切りごとにデスクを集約し、各デスクを向かい合わせて配置するレイアウトです。 従来型の企業オフィスに多く、同じ業務内容や案件を共有しているメンバーが集まって着席するため、業務上のコミュニケーションが取りやすく、執務効率が高いと言われています。

加えて島型レイアウトは向かい合う二つのデスクの間に空間が生まれないため、スペース効率が非常によく、より多くのデスクスペースを確保することが可能です。 部署異動などによる人員変動にも対応しやすく、多くの企業が取り入れているレイアウトです。

スクール型レイアウト

スクール

並列型とも呼ばれるレイアウトで、金融機関や銀行などのように来客に対し向かい合う形をとる必要がある業種に採用されやすいレイアウトです。 また、大勢の部下に対し、管理者が向かい合って座ることができるため、トップダウン型での管理が必要な業務や部署にも向いている配置です。

島型レイアウトに対し、従業員のチームワーク効率よりも、事務処理能力の向上を目的としたレイアウトのため、伝票処理や電話オペレーターなどの円滑な業務フローが重要視される職種に採用されます。

ブース型レイアウト

ブース型

一つのデスクの周囲をパーテーションなどで区切るか、完全に独立したデスクとして配置するレイアウトです。 個別空間が発生するため、周囲の挙動や雑音、視線が気になることが少なく、プログラマーなどの個人での高い集中力が要される従業員に向いています。

また企業によっては完全にドアや遮光カーテン、曇りガラスなどで仕切ってしまい、作業ブースなどのオープンスペースとして設置をしているところも最近は多くなっています。 役員や管理職など、社内に対しても機密性の高い情報の管理者にも相性が良いとされています。

フリーアドレス型レイアウト

オフィス内でのデスクのレイアウトとしては上記のようなパターンをランダムに配置することが多いパターンですが、上記パターンとは違い固定席を廃止し、従業員が空いている席を自由に選択して着席するというスタイルのレイアウトです。

席を固定しないことで所属部署以外の従業員とコミュニケーションが取りやすくなり、思いもよらないアイデアの創出などに効果的と言われています。無線LAN配備や、書類補完スペースなどの確保が必要になるレイアウトですが、最近では従来までの従業員の離席率や、オフィスの混雑具合をもとに従業員数に対し少ないデスクのみを設置するケースも存在し、スペース効率が良いとされています。

従業員の執務スペースには最低限一人当たり2坪程度を確保することが必要と言われています。実際にデスクレイアウトを決定する際には従業員の執務スタイルや業務内容をよく加味した上で、十分なスペースを確保することを念頭に置きましょう。

︎オフィスの導線計画

現状のオフィスが抱える問題点を解決できるようなゾーニングやデスクレイアウトを考案出来たとしても、実際に配置してみたらデスクとデスクが近すぎて通りづらい!なんてことや、経理部に相談しにいくことが多いのに、経理部にアクセスしづらい!なんてことが発生しかねません。

オフィスのレイアウトプランを作成するにあたり、ゾーニングとデスク配置と同様に重要なのが、オフィス利用者の導線計画です。 メインエントランスから入ってきた従業員がストレスなく執務スペースに迎えるか、打ち合わせの多い部署同士がコミュニケーションをとりやすいか、来客者が受付に来やすいか、、、など、様々な人の流れを考慮した上で上記のゾーニングやデスク配置を行うことも重要です。

一般的に人が行き交うような通路では、幅員を120センチメール程度確保することが最低限の導線と言われています。 しかし実際には120センチメートルは人が1人よこたわれない程度の幅しかありませんので、想像以上に狭いことがわかります。実際に導線計画を作成する際には、各通路を利用する人の特性や人数などを考慮して、必要十分な幅員を設けるようにしましょう。

専門業者とレイアウトを考える

オフィス移転に伴うレイアウトプランニングには、上記のようなステップがありますが、実際にはこういった業務は不動産業者のようなプロが生業にしている仕事であり、大規模なオフィスになれば普段不動産業に携わっていない人たちからするとかなり荷が重い業務でもあります。

そこで、コンセプトや現状オフィスの抱える課題などが明確化した段階でレイアウト業者などによる発注をおこない、レイアウトプランニングの助けを仰ぐというのも一つの手段です。

世の中には様々なレイアウト業者が存在し、コンセプト立案から相談に乗ってくれるようなトータルプランニングを行う業者や、現状の課題からデスクの配置案などのみを提案してくれるような業者もあります。 ものによっては見積もりから提案まで無料で営業活動をしてくれる業者も多いので、発注するかしないかは別として、複数業者にまずは提案を依頼するというような手法でも効率が良いかもしれません。

そのほかにも、レイアウトプランニングの図面作成を行うことができる「せっけい倶楽部」「3Dオフィスデザイナー」のようなソフトを活用し、とりあえずは自力で試してみる、というのも手かもしれません。

レイアウトプランニングは単なる気分転換ではない!

上記でオフィス移転、レイアウト変更を行うには、まず目的や現状オフィスの課題を明確化させる必要があると説明しました。

本記事で解説した通り、レイアウトの変更は社内の従業員の業務効率に直結したり、勿論コストがかかるだけではなく、社内の機密を守ったり、来客者に快適にうちあわせを行ってもらうためのものでもあり、まさに会社を挙げた重要なプロジェクトになると言えます。 せっかく手間をかけて実施するのですから、単なる気分転換に終わるのではなく、上記のステップを密に検討し、新オフィスの先を見据えたレイアウトプランニングを行うことがベストですね。

estieではレイアウトプランニングを行ってくれる会社のご紹介をすることも可能です。

迷ったらぜひ一度ご相談ください!

オフィス移転の流れ【第5回】4種類の費用について

今回は実際にオフィスの移転を行うにあたって、全体でどの程度の予算を見込んでおくべきなのか?かかる予算項目にはどのようなものがあるのか?それぞれの費用の相場感はおおよそどの程度?コストを抑えるためには?といったことを解説していきます。

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監修

執筆者
田中 陸(Riku Tanaka)
経歴
東京大学経済学部卒業後、住友不動産入社。オフィスビルのアセットマネジメントを担当し、海外事業部にて世界主要都市の市場調査や投資検討に従事。 estieでは、セールスマネージャーとして営業や事業開発を手がける。 ベンチャー感を出すため、ヒゲと伊達眼鏡をトレードマークにしている。
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