横浜のオフィス事情

  • エリア別のオフィス事情
  • 横浜
  • 2020/06/26

今後の動向を推察する本記事シリーズですが、今回は東京に次ぐ関東第二の都市である「横浜」のオフィス事情についての解説です。都内近郊から京浜東北線や京急線など利用し1時間もかからずにアクセスが可能な横浜は、地方のオフィスマーケットとは言えどもさほど生活圏としては心理的なハードルは高くなく、良くも悪くも周辺の賃料水準の上下動や空室率の変動は都内マーケットに連動しがちという特徴を持っています。

一方で東京都内にはない地方都市としての強さを併せ持っていることも特徴の一つとして数えられ、特に横浜駅中心エリア、みなとみらいエリア、関内エリア、新横浜エリアなどを擁する横浜中心街には、神奈川県内の主要なオフィス・商業機能が集積しており、一都市が生活機能のターミナル的役割を果たしています。

川崎まで出れば日本でもっとも大きい売り上げを誇るショッピングセンターであるラゾーナ川崎プラザ(三井不動産)や、コストコなども存在し、まさに都市圏生活型と地方生活型のいいとこどりをしたハイブリット型都市と言えます。

湾岸エリアのイメージも根強く、オシャレな雰囲気もあることから不動産市場では長らく住宅適地としてとらえられてきた横浜ですが、近年みなとみらいエリアや新横浜エリアがオフィス立地として注目を集めるほか、行政・公官庁系の用途の集積がみられた関内エリアでは旧市庁舎跡地再開発により大規模なオフィスが計画されるなど、街全体としてオフィス色を強めていこうという動きが見て取れます。本記事ではそんな横浜エリアがオフィス街として注目を集める要因や、今後の横浜オフィスマーケットの動向などについて分析、解説を行っていきます。

旺盛な需要の成長がみられる横浜のオフィス事情

横浜のオフィスエリアと言えば、元来は日本有数のターミナル駅であり、商業エリアも併せて形成する「横浜駅の西口」エリアや、国内の市役所が多く取り入れている「コの字型構造」のいわゆる市役所建築と呼ばれる建築様式の走りとなった旧市庁舎や区役所などを擁した官公庁街の「関内」エリアが中心となっていましたが、三菱地所による横浜ランドマークタワー・クイーンズスクエアの開業、JR東海道新幹線の開通などにより「みなとみらい」エリアや「横浜駅の東口エリア」、「新横浜」エリアも新しいオフィスエリアとして開発が進んでおり、そのマーケットの成長ぶりは目が離せません。

特に新幹線・高速道路などが近く、アクセス良好な立地である「新横浜」エリアは、半導体・IT関連の技術系企業や、外資系企業の進出が多く、みなとみらいエリアは日産自動車や富士ゼロックス、村田製作所などの名だたる大手メーカー・外資系企業の本社機能・研究開発機能の進出が多く、産業集積地として更なる発展が期待されるエリアとなっています。また横浜市は市内に進出する企業に対し移転に際する助成金制度を設けていることもあり、市外及び都内から横浜の主要エリアに本社移転をするケースも少なくありません。

横浜の主要オフィスエリアの総括としては、2019年末時点の平均空室率は凡そ2.00%程度を記録しています、 前年同時期の空室率と比べると凡そ0.50~0.60%の下落となっており、需要は堅調に成長を遂げているとみることが可能です。昨年2019年度は、横浜市外や都内、その他エリアからの事務所機能の移転や新規出店のほか、 既存物件内での賃貸床増床や拡張移転に伴う大型のオフィス床賃貸の成約も目に付く一方で、横浜市役所が新庁舎へ移転することや、大型空室の外部募集情報も時期によっては散見されるタイミングもあり、昨年1年間で横浜主要エリア全体の空室面積は約4,600坪程度の消化に止まり、需給の健全化及び空室率の緩和といった動きは見られせんでした。空室面積の減少はさらにもう前年度の2018年に記録された21,000坪の減少の4分の1程度の消化となりましたが、平均空室率の観点では横浜は長らく右肩下がりでの推移を続けており、2019年度も最も低い水準を記録するという結果になりました。

現状、横浜のオフィス平均賃料は凡そ12,000円程度となっており、都内主要オフィス街の平均値と比較すると廉価な水準ということができます。 前年同月比でも賃料水準は5.00%近い上昇となっていますが、高い交通利便性や住環境との距離感を考えても、横浜市中心街が移転ニーズを幅広くとらえることができるポテンシャルがあるという評価には合点がいく賃料水準と思われます。横浜主要エリアの平均オフィス賃料はここ4年間連続で上昇傾向にあり、これは平均空室率が2%台を中心にかなりの低水準で推移していることが大きく影響しているということも理解することができます。

エリア別にみる横浜のオフィス事情

上記の通り、横浜のオフィス事情は元来から事務所用途の集積を進めてきたみなとみらいエリアにけん引される形で、近年新横浜エリア、関内エリアでもオフィスの需要にこたえる形でオフィス街としての色を強めている傾向にあります。もともとオフィスエリアとして認知をされているみなとみらいエリアは現在も需要は堅調であり、新規開設や館内増床で空室が消化され、空室が少ない状況が続いています。新規供給に対し需要が食って掛かっている状況のため大型面積を確保できる物件が少なくなってきており、引き合いも集中し始めていることから、今後さらなる空室率の低下が予想されることでしょう。みなとみらい以外の主要エリア、「横浜駅前エリア」、「関内エリア」、「新横浜エリア」でもそれぞれ空室率は低下しており、横浜のオフィス立地としての評価の高まりがうかがえます。では、各エリアの詳しいオフィス事情はどのような推移をたどっているでしょうか。

みなとみらいエリア

一般的にみなとみらいと称されるエリアは本来「横浜みなとみらい21地区」と称されるエリアで、横浜都心部の一体化と強化をめざしたウォーターフロント都市再開発として建設された街という歴史を持っています。

1980年代に再開発が行われる以前は、当地に三菱重工業横浜造船所、国鉄高島線(貨物支線)の東横浜駅および高島駅・高島ヤード(操車場)、高島埠頭、新港埠頭などがあり、船の交通網としての役割を果たすエリアでしたが、日本国内の主要公共交通機関が鉄道に移り変わったことから本エリアの役割の刷新、及びみなとみらいエリアを中心に分断されていた横浜駅周辺と関内エリアを一体化させる目的で埋め立てられました。本計画に寄り横浜市及び国は東京都内に一極集中していたオフィス機能の需要を分散させ都心部の負担を軽減することを目指しており、神奈川県の経済拠点として企業法人の本社移転地としての誘致促進等を目指しているため、横浜中心街の中でもひときわオフィス色の強いエリアとなっています。

みなとみらいエリアの2019年度末時点の平均空室率は1.50%(前年同月比1.65%の下落)となっており、都内の平均空室率と比較しても主要ビジネスエリアと遜色のない需要の高まりを感じることができます。2019年度は多少の大型解約のケースは見られたものの、都内や横浜市外からの移転のほか、支店・支社の開設等による大型成約が多く見られたため、竣工から二年目を迎えた「OCEANGATE MINATOMIRAI/延床面積約17,000坪」が満室稼働となるなど、空室の消化も順調に行われているようです。

エリア別での平均オフィス賃料はここ5年間では上昇または横ばいが続いている状況で、現状の平均賃料は前年同月比から1,200円程度も上げて約20,200円の高水準を記録しました。 みなとみらいエリアでは今年の新規供給は一棟が計画されています。2月には延床面積30,476坪を誇る大型ビル「横浜グランゲート」が竣工しており、満室稼働での開業となりました。本ビルはオフィス機能以外にもやホテル、ホールなどの商業施設としての機能も併せ持つ複合ビルであり、みなとみらいエリア全体の賑わいの増進に一役を買うことでしょう。一方、オフィスビル市場は既存ビルの空室が減少していることから、需給の逼迫感が一層強まり、賃料相場の上昇が続きそうです。

関内エリア

日米修好通商条約によって1859年に設置された開港場が関内エリアのルーツであり、住所表記では中区と表記されるエリアです。馬車道、中華街、山下公園など古くからの観光地が多く、また、神奈川県庁舎、横浜市役所、神奈川県警など官公庁や企業が集まる行政地区という一面も併せ持つことが特徴です。以来日本における西洋文化の窓口となったことで急速に町並みや文化のヨーロッパ化が進み、アイスクリーム、ビール、ガス燈など、横浜市の発祥とするヨーロッパ起源の文化や、昭和初期の近代洋風建築が多く残されています。そんな古き良き街並みの関内エリアのオフィス事情ですが、2019年末時点の平均空室率は3%前後、前年同月比では0.4%上昇しているものの、他エリアに比べるとやや高めの印象です。2019年は横浜市の新庁舎への移転のほか、他地区への移転に伴う大型解約があったものの、増加した空室面積は約800坪に止まっている状況です。

平均賃料は年間を通して上昇傾向で推移し、9月にはオフィスバブル期の2010年以来の10,000円台となり、12月時点では前年同月比3.56%上げて約10,600円となってはいるものの、中心街ながら空室率もやや高く賃料水準も隣接のみなとみらいエリアと比べると低廉になっています。元来歴史が古く、公官庁系の色が強いエリアであることから周辺に集まる企業法人も古参のテナントが多く、比較的新陳代謝に欠ける傾向があり、現状も建物の新規建て替えが思うように進んでいない状況であることからも、周辺のみなとみらいや横浜駅周辺エリアの取りこぼしニーズをうまく拾い切れていない印象となっていることが分かります。

横浜駅前エリア

名実ともに横浜市の中心となっているエリアで、東急電鉄/横浜高速鉄道・京浜急行電鉄(京急)・相模鉄道(相鉄)・横浜市交通局(横浜市営地下鉄)のターミナル駅である横浜駅を中心とするエリアです。鉄道会社6社が乗り入れる駅は他にはなく、乗り入れている同事業者数は日本で最多となっています。1928年以来駅の建築工事や増設工事などをひっくるめると、工事をしている部分がない完成状態となった歴史がなく、「日本のサグラダファミリア」などともいわれています。

どちらかと言えば商業集積地としてのイメージがあった横浜駅前エリアですが、近年のオフィス需要の高まりを受け、マーケットの成長もうかがえます。2019年末時点での平均空室率は2%割って1.8%程度、年々低下している傾向にあります。平均賃料は2017年以降上昇し続けており、前年度実績から4.5%上昇の13,700円となりました。規模別の平均空室率を見ても、大型ビル1.95%、中型ビル0.95%、小型ビル3.06%となっており、特に中型ビルの平均空室率が1%台を割り込むなど同エリアでまとまった空室を確保することが極めて難しい状況となっていることが分かります。新規供給では2020年には「JR横浜タワー」が竣工する予定で、10年ぶりの新規供給となる状況です。すでに同ビルは3月に満室で竣工しており、既存ビルの空室も減少していることから、賃料相場は高止まりで推移しています。

新横浜エリア

新横浜エリアは横浜市における新横浜都心としてツインコアに数えられるエリアです。その発展の始まりは意外にも最近で、1960年代に新幹線が停車する駅となる以前は田畑が広がる水田地帯だったという背景があります。1900年代後期に入ると横浜アリーナや横浜プリンスホテル、日産スタジアムなどが開業を迎え、興行の場所として広く認知、人を集めるエリアとして成長していきました。

2010年代に入ると横浜エリア全体のオフィス需要の高まりに後押しをされる形でオフィスビルが建築されるようになり、同エリアでの空室率もみるみる低下、2015年時点で10%程度であったにもかかわらず2017年に5%、2018年に2%台に突入し、現在時点の平均空室率は1.67%まで下がっています。前年同月比でも0.4%の下げ幅があり、やや緩やかになってはいるものの、下降傾向をたどっています。同エリアの特徴として未だ大規模なオフィスビルの存在が少なく大型需要に対応できる空室が限られているため、大型成約の動きが少なく、空室面積の減少が小幅ではありますが、平均賃料はここ2年で連続的に上昇しており、12月時点では前年同月比4.58% 上げて10,500円台となりました。イメージも良く利便性も高い同エリアは横浜主要オフィスエリアの中でも引き合いが強く、オフィスビルの規模を問わず早急のオフィス供給が待たれているエリアです。一方で需給の逼迫感が強まる中、新横浜地区では2020年も新築ビルの竣工などによる目立った新規供給がないため、平均空室率はおそらく低下傾向での推移となり、平均賃料は緩やかな上昇が続きそうです。

横浜のオフィス事情の今後

上記の通り、横浜のオフィスマーケットはまさに需要が旺盛な状況となっている一方で、2020年の新規供給量(延床面柄)は60,052坪、供給棟数は2棟にとどまっており、やや心もとない状況です。2月にみなとみらい21地区で「横浜グランゲート(延床面積30,476坪)」、 3月に横浜駅地区で「JR横浜タワー (延床面積29,576坪)」が竣工を予定していますが、横浜では2017年に竣工した「オーシャンゲートみなとみらい (延床面積16,812坪)」以来、3年ぶりの新規供給となっており、供給スピードに不安が残ります。いずれのビルもすでに成約の動きが進み満室での竣工となりましたが、一方で既存ビルでは横浜市内の複数のビルに散らばっていた横浜市の機能が新庁舎集約されることに伴い、既存ビルの埋め戻しや周辺企業の解約の動きが見込まれているため、カウンターでの課題も見込まれている状況です。

しかし、現状ではオフィスの新規供給はややおとなしいものの、横浜エリア内にオフィスを増やそうという動きは顕著であることは確かであり、関内エリアに存在する旧横浜市役所の跡地再開発では開発条件としてオフィス用途の盛り込みが重視され、結果として三井不動産率いるコンソーシアムが落札し、計画が進んでいる状況です。今後しばらく空室率の低下、平均賃料の上昇が見込まれる横浜エリアですが、新規供給については目を凝らして中止をする必要がありそうですね。


横浜市中区のオフィスを探す


新横浜のオフィスを探す

名古屋のオフィス事情

前回より東京を飛び出し地方主要都市の解説に入ったオフィス事情解説シリーズ、今回は中部地方を代表する日本の都市である「名古屋」のオフィス事情についてです。2010年代に入ってから軒並み成長傾向にある日本のオフィスマーケットですが、日本第三の都市である名古屋もその例に漏れず、ここ近年では大型オフィスの供給も絶えず行われており、そのポテンシャルをグングンと伸ばしているエリアです。

大阪のオフィス事情

東京に負けず劣らずの大都会である大阪ですが、そのオフィス事情は一言に「オフィスバブル」と言って過言はないでしょう。近年大阪のオフィスマーケットはその過熱ぶりの影響で空室率がかつてない勢いで低下傾向にあり、メインのエリアではまとまった規模感のオフィス床を確保することは非常に困難な状況となっています。


おすすめ物件

もっと見る

新着記事