札幌のオフィス事情

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  • エリア別のオフィス事情
  • 2020/06/16


前回につづき本シリーズでは現在日本の東京以外の主要都市のオフィス事情について解説をしていますが、今回は北に飛んで北海道、札幌。昨今のオフィス需要の盛り上がりの例に漏れず、札幌も近年ではそのオフィスマーケットを順調に成長させていることがわかります。賃料水準もじわじわと上がってきているものの、空室率は引き続き下降傾向、2017年には札幌フコク生命越山ビルが満室成約で竣工を迎えています。

1990年代の不況から長らく苦しい状況が続いていた札幌の経済ですが、東京の大手企業が支店を作り経済活動拠点とするいわゆる「支店経済」によってだんだんと状態を改善してきました。2000年代に入ると、札幌のランドマークとなるオフィス・ホテル複合のJRタワーが竣工するなど、オフィスマーケットとしても存在感を表すようになってきました。それでも、観光業が盛んな地としてどちらかと言えばホテル適地としてのイメージが先行しがちな札幌ですが、実はオフィスマーケットに目を向けると北海道大学近辺にはIT・情報通信系の企業が集積するエリアが存在したり、コールセンターの事業所が多く存在することも特徴の一つであり、ほかのエリアにはなかなか見られない特徴的なマーケットを形成しているのです。今回はそんな札幌のオフィス事情を紐解き、現状の解説から今後の動向までを探っていきたいと思います。

■パンク状態?札幌のオフィス事情

札幌オフィス市場は、2017年1月に札幌フコク生命越山ビルが満室で竣工するなど、好調に推移している状況です。空室率も2010年代に入ってからは低下傾向を維持しており、コールセンターなどの新規進出や拡張移転、館内増床などの需要が引き続き旺盛で、2018年には空室率は一度底打ちをしており、札幌エリア全体で2%台前半~1%台後半の過去最低水準となりました。

対して直近の成約賃料の水準を見ると2017年に頭打ちとなっており、それ以降は下降~横ばいという動きを続け、直近の賃料上昇率は全国主要都市内でも最低の伸び率となっています。賃料の伸び幅は小さいものの需要が旺盛であることが見受けられますが、この札幌のオフィス需要を支えている産業がコールセンターやIT・情報系通信業界の企業です。実は統計を見てみると、北海道は東京、大阪、神奈川の三都市に次いで県内のコールセンターが多い県となっており、札幌のオフィス事情を間接する上でも非常に重要なオフィステナントであることがわかります。実はコールセンター業界では北海道がニーズが高いことは常識なんだとか。

コールセンター業界は営業所に多く人を配置しなくてはならない業種のため事務所を借りることがマストになりますが、北海道はオフィスの賃料水準は東京の三分の一程度で廉価です。かつ電話対応業務というスタイルの特徴として応対自体は遠隔地で問題ないという条件から、札幌はコールセンターを構えるのにはもってこいの立地であるようです。加えて札幌は日本の政令指定都市では平均時給が最も低い水準(800円程度)となっており、コールセンターの平均時給およそ1000円程度であれば、労働力の確保も容易となるようです。 また札幌は市を挙げて下記のような企業誘致の補助金制度も実施しており、道外から札幌へのオフィスの移転を促進しようとする動きも見て取れます。

コールセンター・ バックオフィス立地促進 補助金

受信業務を行うコールセンターやバックオフィス(企業等の内部事務や業務支援サービスの提供を集約的に行う事業所)等に対し、新設の場合、最大1,000万円×3か年度、増設の場合、最大1,000万円の補助金を支給。

IT・コンテンツ・バ イオ立地促進 補助金

情報通信技術、デジタル技術、バイオ技術を活用して、製品の研究・開発・制作 を行う事業所に対して、新設の場合、最大で開設費800万円、人件費1,200万円×2か年度、増設の場合、人件費1,200万円の補助金を支給。2019年4月に補助制度を拡充。

本社機能移転促進 補助金

本社または本社機能の一部を、道外から札幌市内に移転する企業に対して、最大で人件費5,000万円×3か年度、開設費6,000万円の補助金を支給。2019年4月に補助制度を拡充。

■エリア別にみる札幌のオフィス事情

札幌のオフィスエリアは大きく分けて「札幌駅西口・中心街エリア」、「札幌駅北口エリア」、「創成川東・西11丁目地区エリア」の3エリアに分かれています。特にオフィス立地として存在感が強いのが札幌駅西口・中心街エリアであり、総建物面積の凡そ30%ほどがオフィス床面積に割り当てられています。近年の旺盛な需要に対応するため、各エリアでは賃貸可能面積の拡大を行っている真っ最中であり、2019年ではエリア全体として約6,000坪程度の賃貸可能面積の増加となりました。

札幌駅西口・中心街エリア

JR札幌駅の南口から大通公園を越え国道36号線に至る、名実ともに北海道随一のビジネス街と言われるエリアである札幌駅西口・中心街エリア。駅前通を中心に最もオフィスの集積度合いが高く、北海道庁や札幌市役所といった公的機関もこのエリアに所在しています。当然ながらオフィス需要も多く、数年後には大型ビルの竣工やJR札幌駅周辺と大通周辺をつなぐ地下歩道の完成も予定されています。直近の動向を見ると、2019年では複数の企業の自社ビル竣工による大型退出が相次いだことでエリアでの空室率は3%台となりましたが、道内郊外の移転ニーズをうまく囲い込み最終的には1%台で推移する結果となっています。

平均の賃料水準は上昇傾向が続いており、前年よりも5%近く上昇した12,000円弱という水準となっています。大型、中型、小型すべての規模タイプのオフィスで賃料の上昇を記録しており、今後のニーズの高まりの角度も大きいであろうと予想されています。

札幌駅北口エリア

JR札幌駅へのアクセスが非常に良く、同駅を起点に道内アクセスを考える企業にとっては好立地と言えるエリアです。一方でオフィスビルの集積するエリアの範囲としては札幌中心街や駅西口と比較すると広くなく、オフィス床面積の規模も当該エリアから大きく差をつけられている状況です。オフィスとしてもポテンシャル感じる札幌駅西口エリアですが、もう一つの顔として住環境の良さでも注目を集めており、ここ数年でマンション建設が盛んに行われ、かなり住宅地化が進んだ立地でもあります。また札幌駅北口の開発が進んだのは比較的最近であるため、駅前は平成竣工の高スペックなビルが多いことも特徴です。同エリアの平均空室率は昨年度(2019年)末時点で1.5%、わずかではありますが前年度からも下がっているというステータスで推移しています。直近の成約動向ではEコマースの台頭の影響も引き続き大きく、同年度内でもコールセンターによる大型の貸付や既存テナントの蔵相などが目立った。昨年末時点での平均賃料水準はその前の年度から凡そ5%上昇し11,600円台に突入。一方で直近には大型の新築ビルの竣工の予定がなく、既存ビルの空室も少なくなっている状況から賃料水準は上昇が続く見込みです。

創成川東・西11丁目地区エリア

創成川東エリアはオフィス資料や駐車料金が中心部に比較して安く、車の渋滞が少ない等の理由から、移転需要が増えてきているエリアです。北3条と南5条をつなぐアンダーバス連結が存在しアクセスも良く、近隣にはマンションも多い人口集積地です。西11丁目地区エリアは地下鉄東西線西11丁目駅を中心とした業務集積エリアであり。比較的中小規模のビルが多く、近隣には札幌高等裁判所や合同庁舎、中央区役所等の行政機関が集積しています。そういって一面からテナントの構成としては弁護士や税理士といった士業事務所が多いのが特徴的です。この二つのエリアの平均空室率は上記二つのエリアと比べると2.7%とやや高めの水準となっており、まだ空室もちらほらとみられる状況です。但し、前年度と比べてみると約1.5%もの空室率低下を記録しており、札幌中心エリアや札幌駅北口エリアからあぶれた需要の受け皿的な役割を果たしていることがわかります。新規供給としても2019年では貸付面積1,000坪クラスのビルの竣工もあり、新規開発のポテンシャルも芽生えさせようとしています。賃料水準は現状8,000円台に届くか届かないかといったところで、他のオフィスエリアに比べると廉価な水準となっていますが、前年比と比べると空室率同様賃料水準も5%近い上昇を記録しており、新たなオフィスマーケットとして注目を集めています。

■大型供給の兆しは?札幌のオフィス事情の今後

上記の通り、大方のメインオフィスエリアでマーケットの成長ぶりを垣間見ることのできる札幌のオフィス事情ですが、今後どういった成熟の仕方を見せていくのでしょうか。各エリアの空室率をみると、2019年に大型オフィスの供給のあった札幌駅北口エリアを除く2エリアでは依然として空室率の低下がみられており、賃料の上昇傾向からも若干の供給不足感は否めません。加えて、住民基本台帳人口移動報告によれば札幌市の転入超過数は2008年を底に緩やかな拡大傾向にあり、2018年は+7,930人となっており、人口も増加傾向にあります。住環境も悪くなく、有効求人数も多い札幌市内では今後もオフィスワーカー数が大幅に減少する懸念は小さいと思われます。この状況を受け、近年では札幌市内でもオフィスの供給は加速傾向にあり、2018年にはさっぽろ創世スクエアや、2019年には南大鳥ビルN1が竣工し、大規模なオフィス床の供給が行われています。

今年以降も大同生命札幌ビル、(仮称)京阪北10西3南オフィス計画など、断続的にオフィスの供給が予定されています。札幌市は、他の地方主要都市と比較して低コストでかつ効率よくオペレーターを確保することが可能な環境にあるという特徴から、コールセンターからの需要は底堅いものがあります。ただし、コールセンター業務のメインを担うアウトソーサー多くは人件費等のコストの増加に伴い、経営環境としては厳しい状況に陥っているところも存在し、業界としてはやや安定度にかけるという評価をせざるを得ません。また、AI技術等を活用した顧客対応の自動化が進めば、人手に依存する大規模なコールセンターは減少するということは火を見るより明らかであり、コールセンターがこれまでの勢いで札幌のオフィス需要を牽引することは難しいという見方もできます。今後北海道新幹線の延伸も控え再開発に拍車がかかる札幌市街ですが、ある特定の業種などにいぞにない底堅いマーケットづくりは今後の課題となると想像できます。


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大阪のオフィス事情

東京に負けず劣らずの大都会である大阪ですが、そのオフィス事情は一言に「オフィスバブル」と言って過言はないでしょう。近年大阪のオフィスマーケットはその過熱ぶりの影響で空室率がかつてない勢いで低下傾向にあり、メインのエリアではまとまった規模感のオフィス床を確保することは非常に困難な状況となっています。

名古屋のオフィス事情

前回より東京を飛び出し地方主要都市の解説に入ったオフィス事情解説シリーズ、今回は中部地方を代表する日本の都市である「名古屋」のオフィス事情についてです。2010年代に入ってから軒並み成長傾向にある日本のオフィスマーケットですが、日本第三の都市である名古屋もその例に漏れず、ここ近年では大型オフィスの供給も絶えず行われており、そのポテンシャルをグングンと伸ばしているエリアです。


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