池袋のオフィス事情

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  • 2020/03/24

近年、東京都内の「都心五区」と呼ばれる千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区を中心に、日本のオフィスニーズはうなぎ登り。まさに現代の日本では旺盛なオフィスニーズをもれなくすくい上げるため、爆発的なオフィス床供給が行われており、各大手デベロッパーなどを中心に強みを発揮するエリアへのテナント争奪戦が繰り広げられています。 そのオフィス大量供給の立役者となっているのが大規模な再開発計画です。

古くなった小さなビル群を取り壊し、土地をまとめて大規模なビルへ建て替えることで、同じ土地面積に対しこれまでよりもより多く効率的な空間を生み出します。渋谷をはじめとし、日本橋エリアでは再開発の計画が都心の至る所で目白押しで、直近では三菱地所は今後10年間の長期経営計画の中で今後有楽町エリアなどを中心に、同社が強みを持つ東京駅・丸の内エリア周辺の再開発などに6,000〜7,000億円を投じ開発を行うとの発表を行いました。

今回の記事で取り上げる池袋も再開発によってかつての姿を徐々に変貌させている国内主要都市の一つです。今でこそ住みたい街ランキングでは上位にランクインし、その利便性からも多くの商業施設が集積する街となっている池袋ですが、今でもネットで「池袋」と検索をかければわかるように、昔はやや治安の悪いエリアとして認識されていました。

先行するイメージとして「サンシャインシティ」や「池袋ウエストパーク」、ホテル街や池袋駅西口東口を結ぶ薄暗い路地などどちらかといえば人が常に溢れ雑多な場所も多く、ほんの最近まではイメージの良くない、治安に不安のある街としてやや不名誉なイメージがつきまとっていた過去がわかります。

今回はそんな池袋のオフィス事情について、オリンピックを契機に佳境を迎える周辺の再開発事情をからめつつ現状のマーケット感や今後の動向について解説していきます。

消滅の危機からの復活、文化の街となった池袋の歴史

池袋が現在のように都内でも有数の繁華街になったのは1900年代のはじめ、池袋駅の建設が契機でした。今でこそ1日に270万人という膨大な乗降客数を抱え、新宿に次ぐ世界第2位(!)の規模を誇る池袋駅ですが、建設された当時はターミナルとしての構想はなく、当時繁華街として栄えていた巣鴨駅や田端駅をつなぐ分岐点の駅として設置されたのが始まりでした。

しかしその後現在の東武東上線である東上鉄道や西武池袋線となった武蔵野鉄道の乗り入れなどにより徐々にその利便性を高めていき、近隣の駅であった大塚駅とともに繁華街として成長していきました。池袋といえば立教大学ですが、かの立教大学ができたのも、東京学芸大学の母体となった豊島師範学校などが設置され、この時期の池袋は文教地区として認識をされていきました。

大正の終わりから昭和のころになると、西池袋を中心に、椎名町や千早町、要町周辺には詩人や画家などといった文化人が多く住み着き始めました。上野にある東京芸術大学に通うのに近く便利なうえ、家賃も低廉だったことで池袋には芸大生などのアトリエが立ち並び、芸術家・文化の街としても広く知られるようになりました。一時は100以上のアトリエが並んだ池袋のその様相は、フランス・セーヌ川沿いの芸術家街のモンパルナスの名にたとえられ、「池袋モンパルナス」と呼ばれました。

風情と文化あふれる街として認識されていた池袋が一度失われたのは第二次世界大戦がきっかけでした。終戦直後の日本では、兵役期間が満了し帰還した復員や、外地からの引上げ等の影響で都市部の人口が急激に増加しました。輸入ができない状態が続いたにも関わらず、日本政府が管理していた統制物資は底をつき、物価統制令の影響もあり配給制度が徐々に機能しなくなっていきました。物資の統制を行い食料の配給をコントロールする食糧管理制度が敷かれていた当時の日本では、配給以外の方法で食料を手に入れる行為は制度違反=違法行為とされていました。にもかかわらず政府が管理する物資は不足に不足を重ね、飢餓問題が深刻化していきました。配給によって十分な食料を確保できないにもかかわらず、配給以外で食料を手にすることは犯罪行為、がんじがらめになった国民の生活の頼み綱となったのが闇市でした。新宿や赤羽、十条、王子などに闇市ができると間もなく、朝霞に占領軍の駐屯所があった関係で池袋にも軍の闇物資が流入するようになりました。土地の不法占拠を行って商売を行う闇市の出店者には暴力団や的屋のような勢力も多く、そうした輩の管理下に置かれた池袋はどんどんと治安が悪化していきました。反面、そうした玄人筋の町となった池袋には膨大な数の商店や飲食店が溢れ、都内でも有数な歓楽街と認識されていきました。

池袋の闇市が排除されたのは1962年、現在跡地は池袋西口公園となり近年三菱地所設計の監修によりリニューアルされました。しかし闇市の撤去後も池袋には現在跡地がサンシャインシティとなっている東京裁判のイメージが強い巣鴨拘置所や孤児院、墓地などマイナスなイメージの施設が多く、なかなか住み着きづらい街となっていきました。結果として安い賃料で住める住居を求め、出稼ぎの外国人などが多く居住するようになり、現在でも池袋には多くの外国人が暮らしています。現在池袋では東京建物によるHareza池袋の開業や、三菱地所・三菱地所レジデンスによる池袋西口駅前広場整備計画など、多くの再開発計画が予定されています。戦後の闇市のイメージを揶揄するかのように治安の悪い街としてささやかれがちな池袋ですが、今後の開発計画で大きく生まれ変わろうとしています。

オフィスマーケットは発展途上? 池袋のオフィス事情

そんなやや悪いイメージがついて回ってしまっている池袋ですが、上記で書いた通り、今後は大規模な再開発計画も多く存在し、確実にそのイメージを払拭しようとしています。事実、2020年現在の池袋は東京建物による大型複合施設であり、8つの劇場空間を持つ国際的な文化拠点としての「Hareza池袋」の開業や、2014年に営業を終了した「スポルト池袋」跡地の再開発である国内最大級のシネマコンプレックス施設「シネマサンシャイン」が完成開業するなど、徐々に姿を変え始めています。特にHareza池袋の開業は目の前の公園を開けた空地として整備するなど、これまでの雑多な雰囲気とは打って変わってオフィスワーカーたちの憩いの場になっています。実は池袋の再開発計画は今後の話ではなく、すでに渦中の話なのです。

池袋の大規模再開発スタートのきっかけとなったのは2014年のこと。日本のエネルギー問題や地理人口問題に対し政策提案を行う日本創生会議が発表した「消滅可能性都市(人口減少、少子高齢化その他の社会問題が原因で将来消滅の可能性がある自治体)」に、豊島区が選出されてしまったのです。不名誉ながら、唯一の23区からの選出でした。これを受け、豊島区は2020年の東京オリンピックを一つのマイルストーンとして豊島区の中心である池袋の再開発に急ピッチで乗り出しました。これにより、今現在池袋では上記で上げたような大規模な複合開発がオリンピックを待たずに次々と竣工しています。

では、オフィスとしてのポテンシャルはどうでしょう?池袋のオフィスニーズの特徴としては、立地の特性上埼玉方面に住居を構えるオフィスワーカーや、高速道路により北関東へのアクセスもいいため人材業界メーカーなどに人気の立地です。しかし、上記で開設したようにかつてのエリアとしてのマイナスイメージも根強く、企業の営業所が目立っており、本社を構える立地としては周辺の新宿・渋谷にニーズを奪われている状況です。

事実、池袋は現状として治安のイメージがあまりよくないことに加えオフィス街としてのイメージはあまり強くなく、どちらかと言えば西武百貨店、東武百貨店、池袋パルコ、アニメイトなど、商業のイメージが強いエリアではないでしょうか。そのためオフィス街としてのエリアイメージが依然として弱く、オフィスの平均賃料は15,000~18,000円程度と、渋谷(25,000円~40,000円強)や新宿(20,000円~28,000円)と比べ大きく劣後している現状です。オフィスの空室率も現状3.6~4%弱と、全8路線を擁する巨大ターミナル駅を擁するエリアとしては、都心五区の平均空室率1.2~1.8%と比較しても、現状のオフィスニーズはやや弱いという傾向にあります。直近で竣工を迎えたHareza池袋も68,600㎡ものオフィス床供給がありますが賃貸状況については外部募集を実施していたりと苦戦をしている様子です。

しかし、現在のオフィスニーズの旺盛さから、周辺の新宿区、渋谷区、港区といった主要オフィス街の空室率や賃料の高騰具合に目を向けると、その昔からそこにオフィスを構えていたテナントとしては青天井に上昇していく賃料水準に耐え兼ね移転を行う企業も少なからず存在することは事実です。そういったテナントからしてみれば、直近で大規模な床の供給があり且つ、ターミナル駅の利便性は非常に高いにもかかわらず賃料水準は周辺の主要エリアに比べ非常に廉価な池袋は、今後有用な移転先、オフィス開設先としての選択肢になりえる可能性も秘めているのではないかと感じます。

目白押しの再開発で生まれ変われるか? 池袋のオフィスの今後

では今後池袋がオフィス街としてプレゼンスを高めていけるか否かの鍵はいったい何なのかと言えば、もちろんそれは東京オリンピック以降に控えている残りの再開発計画をどのような方向性で行っていくかということに尽きるでしょう。2014年から始まった池袋の再開発はHareza池袋の劇場や、シネマサンシャインなど、東京オリンピックの開幕に伴うインバウンド需要を取り込むため、町全体を劇場化するというコンセプトのもとエンタメ性の高い施設の再開発に着手してきました。

そのため、新宿や渋谷など周辺のオフィス街に比べオフィスの供給は控えめの面積感となっていました。しかし、2020年以降の池袋の再開発計画に目をやると、三菱地所による池袋西口地区再開発(竣工年・敷地面積5.3h)の大規模オフィス供給や、東池袋二番街区整備事業(2022年竣工、延床面積30,650㎡)、南池袋二丁目再開発(2024年竣工、延べ床面積18h)など、大規模なオフィスビルの開発が目白押しです。比べて新宿・渋谷の近隣エリアでは、2020年以降の大規模な再開発は池袋に比べて少なく、一旦落ち居着く予定です。しかし、新宿区・渋谷区のオフィス空室率と、今後もオフィスニーズは伸びていくことを考えれば、新宿や渋谷のオフィスに入りたくても空きがなく入れずあぶれてしまうテナントが発生することが予測されます。狙ってか否かのタイミングはわかりませんが、ちょうどライバルとなる新宿・渋谷のオフィス供給が落ち着いた時期を見計らって、逆に大量供給を行う池袋は、今後周辺のあぶれたオフィスニーズの受け皿としてそのポテンシャルを発揮するかもしれませんね。

最後に

いかがでしたか?オフィスのイメージが少ないエリアですが、今後の大規模開発によって、どのように変化していくかが楽しみなエリアですね。

他のエリアと比較して自社にあったエリアを見極める参考になれば幸いです。

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