【UTEC坂本氏対談】創業からの歴史を知るキャピタリストが語る、estieの進化と強さ

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estie(エスティ)は2022年1月12日、約10億円のシリーズA資金調達を発表いたしました。調達した資金を活用して、商業用不動産業界のデジタルトランスフォーメーションをより加速すべく、「estie pro」を拡張するマルチプロダクト戦略を展開。これを支えるべく、組織規模を1年で2倍以上に拡張させる計画を発表いたしました。

設立間もないシード期からestieを支える、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)の坂本さんにシリーズAに至るまでの3年間についてお話を伺いました!

「経産省時代にベンチャーに触れ、こういう人たちと一緒に働きたいなと思ったんです」

——— 坂本さんのキャリアについて、簡単に教えてください。

(坂本)

UTECの坂本と申します。2003年に経産省に入って5年ほど働いたのち、実家の会社のマネジメントを行い、その後MBA留学でニューヨークに行きました。日本に帰国してからはマッキンゼーで4年半ほど働いたんですが、その後UTECに入社して以来7年以上VCをやっています。

経産省時代に、スーパークリエータで有名な未踏事業などを担当したりして、ベンチャーの領域は面白いとずっと感じていました。実はその時にツアーを企画しまして、起業家やVC総勢20名ほどで2週間ほどシリコンバレーに行ったんです。Incubate Fund設立前の赤浦さんや本間さん、若手時代のYahoo!宮澤弦さんなどがご参加になっていて、めちゃくちゃ楽しかったんですね。こういう人たちと一緒に仕事がしてみたいなあと思ったのが直接のきっかけです。

そんな折に経産省の先輩でもある郷治さんから、UTECで新しいファンドを立ち上げると連絡をいただき、ジョインすることを決めました。

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——— 2021年末は投資担当先のIPOラッシュでとてもお忙しそうでしたね。トラックレコードの秘訣ってあるんですか?

(坂本)

自分自身に秘訣があるわけでは全くなく、タイミングだと考えています。まだまだAIやDXという言葉が一般的に出てくる前、6〜7年前くらいからその領域を仕込んでいた先見の明がある起業家と周りのサポートがあって、僕は彼らとの出会いでその後の大きなDXトレンドに乗せていただいた。

もちろん6〜7年前からDXトレンドが来るはずだと狙って張っていたわけではなく、正直たまたまです。ただ、DXを分解していくと、やはり日本経済を引っ張る大企業の業務改革が中心となっています。その領域は、経産省やマッキンゼーといった僕の経験との親和性がたまたま高く、そういう起業家と出会う機会も多かったんです。そういう意味で言うと、estieも巨大な不動産業界のDXという意味では、まさにその文脈ですよね。

「初回面談が終わったとき、投資をしたいと思っていました」

——— シード期からestieに投資をしていますが、平井との出会いについて教えてください。

(坂本)

平井さんと初めて会ったのは、確かestie事業開始の半年ほど前ですよね。

(平井)

そうですね。2018年9月に初めてお会いして、12月にestie設立、翌2019年3月にシードラウンドで単独投資をしていただいて、4月から本格的に事業を開始しています。

(坂本)

なぜかは説明できないんですが、たまに出会った瞬間投資をしたいと思う起業家がいるんですよ。平井さんはまさにそれで、初回面談が終わった時には投資をしたいと思っていました。やはり先ほど言った巨大産業DXの文脈、そしてそれを支える業界での実務経験、その形式知などがポイントになったんだと思います。

不動産業界については、得意領域というわけではないんですがずっと注目していました。明らかに巨大で、ITによる改善幅が大きい産業ですよね。でも当時、出会った起業家は住宅系ばかりだったんです。商業用不動産市場を丸ごとDXしていきますという骨太な起業家と出会ったのは平井さんが初めてでしたね。

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——— 逆に平井から見て坂本さんはどんなパートナーだったんですか?

(平井)

率直に言って、UTECって厳しいっていうイメージ?噂?があるんですよ。坂本さんの投資先の起業家同士で話しても、全くそんな話題は出たことないですけど(笑)。僕は初めての起業で、多少口も出してほしかったのでちょうど良いかなって考えてました。

でも、実際に投資を受けて取締役になってもらった坂本さんの印象は180°違いました。もちろん毎週かなりの時間を使って事業の壁打ちをしてくれるんですが、こちらの意見をより良くする手助けをしてくれるというイメージです。もっと端的に言うと、聞いていた噂と違って、全くとやかく言ってこないんですよ(笑)。

(坂本)

特にはじめの半年くらいは、スピードを殺さないよう、細かいことをとやかく言わないように決めていました。取締役会もないし、インターナルの資料をわざわざ作らなくていいし、もちろん「これをやりなさい」とも基本言わない。シリーズAまでは事業の模索期間だと思っていますし、そのタイミングで横から口うるさく言われても起業家にとって良いことは少ないですよね。

あと、僕にとってもestieへの投資はチャレンジでした。平井さんのような10個下の起業家に投資するのは初めてで、他の投資先はほとんどが自分と同年代の起業家です。思い込みすぎかもしれませんが、やっぱりなんか壁があるというか、バディ感が足りないという感覚が最初はありました。それで僕から「合宿に行きましょう」と誘って、ホテル三日月に行きました。あの時の議論は何も役に立ってないかもしれないけど、楽しかったなーって思い出します(笑)。

(平井)

行きましたね、千葉。僕も大企業1社経験だったので、10個上っていうとだいぶ上の先輩なんです。今ではその感覚は無くなっていて、バディ感出てきたと勝手に思っていますけどね。

今でもですけど、もちろん言う時は言う。でもそのタイミングや伝える内容をすごく考えているなと感じています。僕としては、良いバランスで規律があって好きなスタイルですよ。規律がない方が信頼できないので。

(坂本)

今は、取締役会はレベルが高い議論が出来ていると思います。実質的には初めてGCPと一緒に取締役を務めさせていただくので、勉強になることが非常に多いです。GCPのエムレさんもちゃんと言うべきことは言う。ただ、それに僕が同じこと重ねてもチームにはプレッシャーになるだけじゃないかなと思う部分があります。GCPもUTECもVCなので、結構考えることは似ているんですね。だからこそ、2方向から同じことを言うと、起業家自身が考えることを阻害してしまうかもしれないと考えています。私から「エムレさんの言う通りで・・・」とか、「坂本さんの仰る通りで・・・」なんてエムレさんに言わせても余り意味は無いと思っています。そういう意味では、心の中で「エムレさん良く言った!」って思っていることはあっても、あまり口には出さないようにしています。エムレさんも同じなんじゃないですかね。

これまでは社外取締役として、結構メインで話すことが好きなタイプだったので、もちろん僕にとっても大きなチャレンジです。でも取締役会がVCの意見を拝聴する場みたいになるのが一番良くないですし、ベースに平井さんをはじめとするチームのことは信頼しているということは大きいです。

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「創業期からの一番の成長はチームです。なんでこんなに良い人が集まってるんですかね」

——— 平井が信頼できるのはどういったポイントでしょうか。創業期から変わったところもありますか?

(坂本)

平井さんって正直なんですよ。やばい時は事前にやばいって言ってくれるし。VCとして取締役会に多く参加する機会がありますが、経営者として中々いないくらいのレベルの高さだと思います。やっぱり自信があるんじゃないですかね。だからこそ良くない話もすぐに伝えてくれるし、僕のような株主だけではなく全てのステークホルダーに対しての対応が丁寧だなと感じています。株主へのコミュニケーションはむしろ丁寧すぎるくらいですよ。

創業期から一番の違いはチームの強さだと思います。最初の1年は事業も模索を続けている時期だったので、採用面での説明も難しかったと思います。今は事業が急成長しており、それがチーム全体の自信に繋がっているし、だからこそ良い人が採れているという好循環に入っているように見えます。estieは魅力があると思いますよ。我々は投資先を色んな人に紹介するんですが、明らかに引きつけられる人が多いなと感じています。具体的にいうと、社内のメンバーの中にもスタートアップの社長として活躍できるような人材がゴロゴロいますよね。

——— 逆に、estieに対する心配事はなんでしょうか。

(坂本)

もちろんまだまだたくさん課題はあると思います。今はようやく第一の矢が伸び始めたところで、二の矢三の矢は壮大な妄想があるけれど何も保証されていない状態です。これらを連続的に立ち上げていくというのは、難しくもあり大変面白い挑戦だと思います。

ただ確実にフェーズは変わってきていて、ここからVCができることは採用や組織といった側面支援で、事業はチームが自律的に伸ばしていく必要がありますし、今のメンバーならうまくやってくれると信頼しています。心配とは少し違いますが。

過去心配なタイミングは何度もありましたが、平井さんは丁寧に下準備をして乗り越えてきているのでその点の信頼もあります。もちろん人間力もあると思うんですが、平井さんはそれ以上に鈍感力が強いのかもしれないですね。

——— 平井の弱点ってなんだと思いますか?

(坂本)

あまり思い付かないですね・・・。悪いところではないんですが、スイッチの入り方が独特だと思います。意思決定が早いというか。突然権限移譲したり、マイクロマネージしたりという印象です。一つのことに集中していて、大体片付いたと思ったら突然「あとは任せた!」という感じですよね。その時には次のイシューが見えていて、気づいたらそちらに集中している。

ただ、それは決断力ともいえるし、ベンチャーの社長にとっては間違いなく必要な能力でもあるので、弱点だとは思っていないです。あとは何だろう・・・、要求水準がとても高く、褒めるのが苦手なのかなと思ったことはありますが、どうなんですかね(笑)。

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——— 良く見ていますね(笑)。

(平井)

褒めるのが苦手なのは社員からもフィードバックをもらっていて、現在修行中です。取締役CTOの岩成と取締役の束原の方が、僕よりもストーリーテリングが上手ですね。

(坂本)

あと僕、束原さんのことが最近好きなんですよ。正直に言うと、彼が入社した当初はそんなに強い印象がなかったんですけど(笑)。平井さんって妙に人間関係の機微を読み取るのが得意なんですよね。突然、「束原と2人でメシ行ってください」って言われまして、そこからはめちゃくちゃ信頼しています。クールに見えますけど、狙っている水準が誰よりも高く、平井さんより熱くてストーリーを語るのが上手い。

本当にestieはいいメンバーが集まっていると思います。20名足らずのときに、VCのキャピタリストが2名も入社する事業会社ってなかなかないですよ。

「大きなチャレンジを求める人には、間違いなく最高の環境です」

——— 最後に、estieに対してメッセージをお願いします。

スタートアップでチャレンジしたい人は、是非estieに入るべきだと真剣に考えています。対峙する巨大なマーケット、経営陣の強さ、ラーニングの機会、働く環境のどれをとっても最高クラスの会社です。逆に言うと「ちょっとスタートアップ興味あるな。ちょっと噛んでみたいな」くらいの人には向いていないかもしれないですが、大きな挑戦を心から楽しめる人には最高の環境だと断言できますね。

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