
こんにちは。estieでプロダクトマネージャー(PM)をしている三橋です。
先日の全社定例でCTOのNariから、「AIで売上をつくることが大切である」という話があり、自分の心に突き刺さったので、ブログにしたいと思います。
そもそもなぜ、Nariの言葉がこれほど突き刺さったのか。それは、その前から
- AIを業務で活用することで、インプット量も自分の業務処理量も増えている
- でも、事業で求められる成果(売上)が、AI導入前と比べて2倍になったとは言えない
という課題を、感じていたからです。
実は、Nariの話を聞く前に「AIを業務に活用してから、自分の成果は2倍になったと言える?」という質問を、よもやまでいろいろな人に投げかけていました。返ってくる答えは、人によってさまざまでした。
なので、今日は、おそらくすべてのPMが役割として期待される「開発の優先度づけ」を例に、どうすれば成果を2倍にできるのか?を考えてみたいと思います。PMとしては非常に初歩的なことだと理解しているのですが、自戒も込めて、正直に書いてみます。
なぜ、自分の成果が2倍になっていないのか?
結論から言うと、シンプルに「成果(売上)を引き上げる」意識が、まだまだ足りていなかった。これが自分への反省です。
事業の売上とは、古くから言われるように顧客数×顧客単価です。当たり前のことですが、ここに愚直につながる開発をできていたか?と問われると、少し言葉を飲み込まざるを得ませんでした。
もう少しプロダクトに引きつけて言うと、僕は売上を「プロダクトへの依存度が上がるかどうか」と捉え直すようにしています。依存度が上がる道は、大きく2つです。
- 拡張:その開発によって、その機能を使うユーザーが一人でも増えるか(結果として顧客数増につながる)
- 深化:その開発によって、一人あたりの利用頻度が増えるか(結果として顧客単価増につながる)
この2つを常に突き詰められていたか。振り返ると、これらにつながらない開発をしていたつもりは毛頭ありません。ただ、この視点を常に意識して優先度を決め、AI時代に増えた開発効率を「売上を2倍にする」レベルまで活かしきれていたかというと、正直、そこまでではなかったと思います。
もちろん、AI時代に開発できる総量が増えているのは間違いなく、僕自身の成果も「1倍のまま」というわけではありません。さらに言えば、成果を2倍にするには、開発の優先順位づけだけでなく、価格戦略をはじめとするさまざまな要素が絡み合い、そう単純な話ではありません。それでも「成果(売上)が2倍になった」と言い切れるかというと、やはり首を縦に振れませんでした。この「なぜだろう?」が、今回ブログを書くきっかけとなりました。
開発コストが小さくなったAI時代の罠
ひとつの答えが、これだと思っています。
AI時代に開発コストが小さくなったことで、意思決定の重要度まで落ちたと錯覚してしまうことです。
でも、実際はそうではありません。確かに「作るコスト」は小さくなりました。しかし、成果につながらないものをいくら速く作っても意味はありませんし、むしろ保守コストは増え続けます。機能は、作った瞬間から「直し続け・支え続ける対象」に変わるからです。
だから僕は、コストを「作るコスト(開発)」だけでなく、「持ち続けるコスト(保守)」まで含めた総保有コストで見ることが大切だと、最近は考えています。AIが下げてくれたのは、あくまで前者だけ。「AIで作れるから作る」は、知らないうちに負債を積み上げ、さらに効果の低いものを作ってしまうリスクも高めます。この2つこそ、AI時代に一番はまりやすい罠だと感じています。
思考整理の一つのパターン
そこで最近は、要望やアイデアが来たときに、いつも頭の中でこのマトリクスに置くようにしています。縦軸が効果(=依存度が上がるか)、横軸が総保有コスト(開発+保守)です。

4つの象限で、打ち手はこう変わります。
- ① 即やる(効果 高 × 軽い):依存を上げる体験が、軽く作れる。迷わず出す。
- ② 確かめてから作る(効果 高 × 重い):依存は上げるが、重い・不可逆。再現性の仮説を確かめてから投資する。
- ③ サッと作ってOK(効果 低 × 軽い):依存はほぼ動かないが、とにかく軽い。悩む時間のほうが高くつくので、サッと出す。
- ④ やらない/捨てる(効果 低 × 重い):依存に効かないのに重い。AIで作れてしまう分、一番はまりやすい。
たとえば「声の大きな1社」から要望が来たとき。声の大きさで優先度を決めるのではなく、「そのセグメントで再現性があるか(=依存度に効くか)× コスト」で置きます。再現性があって軽ければ①、再現性は薄いが軽ければ③、重いものは②か④へ、という具合です。
そして個人的に一番大事だと思っているのが、④を「やらない」と決め切ることです。AIで何でも作れてしまうからこそ、効果の薄い重い開発は、放っておくといくらでも積み上がり、保守だけが残っていきます。「やらない」と言えることこそ、限られたリソースを守る一番の意思決定だと思っています。
書いていて、我ながらめちゃくちゃ当たり前のことを言っているなぁと感じますが、この当たり前を忘れないことが、何より大事だと思っています。
AI時代だからこそ、PMの意思決定が重要
こうして整理してみると、開発コストが下がった今こそ、何を作り、何を作らないかを決めるPMの意思決定が効いてくる、と改めて感じます。それ次第で、成果は1倍のままにも、2倍にもなります。
開発できる量は、AIで絶対に増えています。だからこそPMが、その増えた量を成果に変えるドライバーにならなければいけない。イメージで言うと、
AIによる開発速度の伸び × PMの意思決定の正しさ = 成果の増加分
です。
ここで大事なのは、これが足し算ではなく掛け算だということです。意思決定の質が悪ければ、開発速度をどれだけ上げても、成果はゼロに近いまま。逆に、正しい方向に賭けられれば、増えた開発力がそのまま成果として跳ね返ってきます。
少し逆説的ですが、「誰でも速く作れる時代」になったからこそ、「何を作らないか」を決めるPMの判断の価値は、むしろ上がっていると感じています。これまで「作る量」に向きがちだった自分の意識を、「どこに賭けるか」へ振り直す。ここに、AI時代のPMの面白さと責任があると思っています。
だからこそ、AI時代のPMは、これまで以上に大切なポジションになっていく。僕はそう考えています。
最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
個人的には、こうして「依存される体験」に集中し、意思決定を積み重ねられることこそ、PMの面白さだと思っています。誰でもプロダクトを作れる時代だからこそ、何を作らないかを決め、本当にいいアプリに寄せていく。その手触りのある仕事だと感じています。
そして、estieでそれが特に面白いのは、環境そのものにあると思っています。エンジニアが本当に強く、少人数のチームで、意思決定から実装までを一気に回していく。だからこそ、PMの「どこに賭けるか」というドライバーとしての判断が、そのまま成果に直結します。この手応えこそ、estieでPMをやっていて一番楽しいと感じるところです。
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